あらすじ
テレビ視聴率の低下、新聞部数の激減、出版の不調……、未曽有の危機の原因はどこにあるのか? 「贈与と返礼」の人類学的地平からメディアの社会的存在意義を探り、危機の本質を見極める。内田樹が贈る、マニュアルのない未来を生き抜くすべての人に必要な「知」のレッスン。神戸女学院大学の人気講義を書籍化。【光文社新書】
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Posted by ブクログ
テレビ、出版、新聞、音楽…。
そういったマスメディアが衰退していっている昨今、
その意味をときあかしていくのが本書です。
大学のメディア論の講義をまとめたものなので、
語りかける感じで進んでいきます。
第一回の「キャリア教育」では、
これこそ、メディアの世界で生きていこうとしている大学生を対象に、
まず、その前段階である、仕事というもの、適性というもの、の説明から入ります。
仕事が適性に合っていない、自分の能力がここでは発揮できないというようなことで
仕事を変えていくのは間違っている、仕事とはそういうものではないと著者は述べます。
そしてびしっと彼なりの答えと理路を教えてくれます。
そんな感じで、著者はメディアについて深く考えて、
かつ時間をかけて頭の中で熟成したものをある程度咀嚼して
述べてくれているのが本書です。
医療問題や教育問題の原因もメディアにあるだとか、
そういった、「え、どうして?」と思うところでその理由を正々堂々とストライクゾーンに放ってくれる。
メディアと聴いて連想するものは、僕を含む凡人にはすごく狭い範囲のものでしょうから、
本書の内容をタイトルだけから推測するのは難しいものだと思いましたので、
キーワードをいくつか書いて、そこからこの本の中身を想像してもらうことにします。
メディア、キャリア教育、医療問題、教育問題、クレーマー、正義、著作権などなど。
最後の方で、書架の話になるのですけれど、
そこでの内田さんの書架に対する自分自身の心理や、
書架を見せた相手の心理の説明を読むと、
けっこう人間全般というものを業が深いものだととらえているフシがありました。
内田さんの周囲にそういう人が多いだけの気がしないでもないのです。
大体、本を読まずして人ではないなんて、きっと酔っ払ったらいいそうにも感じましたから。
僕の周囲なんて、本を読まない人だらけです。
そういう人の方が断然多い。
世界の違いがいろいろあるだろうに、
僕の住んでいるような世界は切り捨てられているなぁと少しく残念に思いました。
Posted by ブクログ
【気になった場所】
メディアの不調=視聴者の知性の不調
仕事と適性の順番
◯仕事を通して自分の適性を見つける
×自分の適性に合った仕事を探す
→能力は開発するもの
人間の才能を開花させるのは、他人のために働くとき
情報を評価する最優先の基準
→その情報を得ることで世界の成り立ちについて理解が深まるかどうか
各メディアの不調の原因
・テレビ→ジャーナリストの知的な劣化
・新聞→テレビの不調を指摘できない点
ジャーナリストの知的な劣化の背景
→なぜ弱者の味方をするかを自問してない
→その思考停止が知的な劣化を招く
テレビのシステムにも欠陥がある
→ミスをしないことを優先し、何を放送するかは二の次になる結果、番組のクオリティが下がる
ラジオは番組の制作コストが低い
→挑戦的な番組を作っていける
新聞は今のテレビメディアを批判すべき?
・言論の自由と営業妨害の観点でしていない
・強い影響力を持つテレビに対し、その構造の利点と欠点について言及すべき
出版業界も思考停止している
→出版業界の伸び悩みを、本を読みたい人が減っている、という外的要因だと思っている
例)
入学試験の現代文に採用されやすい要素
→切り貼りしても著作権者から文句が出ないこと
著作物は商品ではない
→書き手から読み手への贈り物
→贈与に対する感謝の気持ちが印税であり、貨幣を用いているだけ