あらすじ
マイクを握れ、わが子と戦え!
山間の町で穏やかに暮らす深見明子。
女手一つで育て上げた一人息子の雄大は、二度の離婚に借金まみれ。
そんな時、偶然にも雄大がラップバトルの大会に出場することを知った明子。
「きっとこれが、人生最後のチャンスだ」
明子はマイクを握り立ち上がる――!
『晴れ、時々くらげを呼ぶ』『檸檬先生』などで最注目の新人賞から、今年も文芸界のニュースターが誕生!
第16回小説現代長編新人賞受賞作。
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選考委員も激賞!
こんなにスカッと面白い作品が新人賞なら、いっそ清々しいじゃないか!(中略)おかんのラップが響く今宵、この余韻!
――朝井まかて
「親との戦い」ではなく、親の側から「子との戦い」を力強く描いた、大人の小説であると感じさせられた。
――宮内悠介
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Posted by ブクログ
とにかくラップシーンが全部熱い!短い言葉で放たれるパンチラインが全部いい!
明子が鬼道楽に放つ「私は人間と話がしたいんだ 相手を人間だと理解できる奴とな」ってかっこいい〜わたしも言いたい!
VSジーニー戦の「骨が砕けて肉が裂けて気絶したくてもできない 激痛乗り越え死を越える バトルマンガじゃない出産の話だよ あんたらのおかんが一番ハードコアやろ」も本当にそうだよなおかんをなめるなと思った。
そしてやっぱりVS雄大ね!研いだ言葉で行われる「本当のこと」のぶつかり合い、ちょっと泣きそうになるくらい感動があった。
雄大の「感謝はしてる ていうかしたいんだよ」「くれたのは感謝できねえ罪悪感」「見くびってるくせに高望みするのはやめてくれよ」、そしてたどり着く「一緒に晩メシ食ってほしかったんだよ 小さい頃」「子供より仕事と他人が大事かよ」「俺は俺をすげえ奴だって思いたいんだよ わかるか あんたが思わせてくれなかったからだよ」、全部パンチライン。こりゃ優勝するわと思わせる説得力。
明子が雄大とのつながりを感じて、逆に「おかんをやめる」ことができたのも良かった。安易に認めたり許したり責任を取るのではなく、自分で自信と人生を作れ、と送り出すのは最大の信頼だ。わたしも子供ができたら、最終的にこんな親子関係を作れたらいいなと思った。
これは映画化、ドラマ化ありそうだし、そうなったら見たい。ヒップホップも開拓したくなったな。
Posted by ブクログ
こじらせにこじらせた親子が、ラップバトルの場で想いの丈をぶつけ合う、という目の付け所がすごい!と思いました。
第三者目線で考えると、雄大が幼少期からの明子の対応は、言葉の選択肢を間違ってるよ、と思えます。子どもが欲しい言葉はそれじゃ無いんだよ、と。
でも、親として考えると、ついそんな態度を取ってしまうのはあるあるです。
私もいっぱいあります。
「親ってすごく鈍感な生き物だよ。自分の言動が子供にどんなに消えないインパクトを与えるか、分かろうとしない」
複雑な家庭環境で育った沙羅の言葉は、私にも刺さりました。
親って、親子って難しいなあ、と思いました。
Posted by ブクログ
もちろん面白くていい作品だったことは前提で。
シンプルな痛快ラップバトル活劇として見てみたかった……!
話の主眼は母と息子の結構ヘビーなすれ違いであり、過去の記憶や内省などで深く掘り下げられているため、真摯な重みがある。
ゆえに放蕩息子とラップでバトル!みたいな軽快さは薄れてしまっている。
でも、こうでなければ「母ちゃんをやめる」というパンチラインはキマらなかっただろうなと思うし、母の思いの変遷は胸に迫るものがあった。
読み応えのある素敵な作品でした。
Posted by ブクログ
すべてのおかんに捧ぐ。
明子は夫を亡くしてからずっと梅を育てて経営をしてきた。息子の雄大はいつもふらふらと大事件を起こす。息子の嫁・沙羅は梅農家を手伝ってくれるが、音楽の趣味は合わない。ヒップホップなんてどこがいいのか。ところがラップバトルに出場することになり——。
泣いた。なんでおかんは言われたくないことを言ってくるのか。それが愛情だと思っているからです、知ってた。夫を亡くしすべてに全力で挑むゆえに幼い頃の雄大の声を聞かなかったことに気付く明子。雄大が話してくれないのは、目を合わせてくれないのは、自分がそのチャンスを取り上げていたからだ。雄大だってその捻くれ方は幼すぎると思うこともあるけど、ちょっと悪いくらいがカッコいい世界に憧れるなら、それもそうか。
ヒップホップは反抗の音楽。黒人たちも声を聞いてもらえずに勝手に押し込められていた。そんなところから声を上げた。バトルの場では相手の声を聞いて、真っ向から対峙しなくてはいけない。ディスるとしても相手をよく理解して組み合う言葉でディスらないといけない。レペゼン母、母を代表して明子が投げた言葉は、すべての息子に対する疑問。お前はわたしから生まれたのに、なぜわたしを拒むのか。それに返した雄大のアンサーは今まで聞いてもらえなかった自身の気持ちだ。母と子は違う存在なのだと。雄大がずっとラップをやりたかったのもわかる。ずっとおかんと言葉を投げかけ合うのを待っていたのではないか。
葬儀中に電話をかけてきた雄大と、穏やかに対応する明子の会話に、明らかに変わったものを感じる。繋がっていたはずの息子はもういない。もう自分はがむしゃらなおかんでなくていい。経営も沙羅に譲って、少しずつ場を譲っていこうとする明子。もう母でなくてもいいのなら、何になろうか。でもきっと明子は何か自分のやることを見つけ出す。軽やかに歩き出すラストシーンに夜明けの明るさを感じた。