【感想・ネタバレ】カインは言わなかったのレビュー

あらすじ

公演直前に姿を消したダンサー。
美しき画家の弟。
代役として主役「カイン」に選ばれたルームメイト。
嫉妬、野心、罠──誰も予想できない衝撃の結末。
芦沢央が放つ、脳天を直撃する傑作長編ミステリー!

男の名はカイン。
旧約聖書において、弟のアベルを殺害し、「人類最初の殺人者」として描かれる男──。

「世界の誉田(ホンダ)」と崇められるカリスマ芸術監督が率いるダンスカンパニー。
その新作公演「カイン」の初日直前に、主役の藤谷誠が突然失踪した。
すべてを舞台に捧げ、壮絶な指導に耐えてきた男にいったい何が起こったのか?
誠には、美しい容姿を持つ画家の弟・豪がいた。
そして、誠のルームメイト、和馬は代役として主役カインに抜擢されるが……。

芸術の神に魅入られた人間と、
なぶられ続けた魂の叫び。
答えのない世界でもがく孤独な魂は、いつしか狂気を呼び込み、破裂する。
“沈黙”が守ってきたものの正体に切り込む、罪と罰の慟哭ミステリー。

『汚れた手をそこで拭かない』が直木賞候補、
『火のないところに煙は』が本屋大賞と山本周五郎賞候補。
『許されようとは思いません』続々重版中、
芦沢央が渾身の力を込めて書き上げた超傑作がついに文庫化!


「この小説そのものが、底の知れない沼のようだ。
読み始めたら、逃げられずに沈んでいく恐怖を快楽にかえて、
読み耽るしかない」──角田光代(解説より)

※この電子書籍は2019年8月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

自分にとって初めて読む芦沢央さんの作品。

 大勢の他人の前で批評される緊張感。
批評者の一言にカッと頬が熱くなる瞬間。
HHカンパニーでの場面はリアルすぎて心臓がキュッと掴まれたように痛く、自分がその場に立たされている様で、呼吸が浅くなりました。

 その反面、他の場面では各登場人物の心情や言動を俯瞰的に捉えて読み進めたように思います。
 
 抱えきれない現実にぶつかった時、心を整理するために人は、それらしい原因を求めたがるものです。
原因と結果が結びつけば、感情にケリをつけて埋葬することができる。
実際には、ただ埋葬しても勝手に成仏するわけじゃないのに。

 登場人物たちは、みんな気持ちが一方通行です。通い合う描写がないから読んでいて煮え切らず消化不良に感じる。結局どうなったの?と。

でも現実って本当にそうだと思う。
それがリアルだと思う。
小説なら登場人物の気持ちは書いてある限り情報として得られるけど、現実では目の前にいる人の本心なんて分かりようがないから、推し量ることしかできない。

だから、登場人物の気持ちは全部理解できなくていいし、まして主観で描かれなかった望月の殺人の動機も、誉田の舞台にかける想いも読み手は完璧に理解しようとしなくて良い、読み手の数だけ解釈があると思う。

 最後の檜山のレビューでは、尾上がカイン役として人の心を動かす演技をしている様子が描かれていました。
誠はどうなったのだろう?松浦は、あゆ子は…

 人の心を探ってもがくより、最後に自分と向き合った尾上だけがその後を具体的に描かれたのだと、個人的には解釈しました。
 それ以外の人物のその後は、現実世界で我々がすれ違っていく知らない人のその先を知ることが出来ないのと同じように、想像を巡らすことしか出来なくて良いんだと。

 耐えがたい現実の原因を他人に求めて表面的に納得するより、自分を見つめ昇華することで前に進める。そんな気付きを得た小説だったように思います。

0
2022年10月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

単行本を読んだが、文庫本による解説や後書きが読みたい。。脳の情報量のキャパをこえる。。

凪良ゆう氏との対談本で『ぼくの神様』を怖い、と言っていたが本作もなかなか。。

複数目線からなる作風にて
冒頭の刺すシーンは誰が誰を、と思いながら読み進める。
結果、一番順位の低かった登場人物にて驚いた。動機や行動について理解が及ばないというか。。

「見て覚えろ」というのは時代遅れ、パワハラ禁止、という現代でこういった限界ギリギリまで突き詰めないと得ることができないジャンルの関係者達はどう対応しているのだろう。
全肯定するわけではないけれど、ネット検索や最初から答えを教えて貰った問題というのは回答を忘れるものも早かったりするわけで。。

以前テレビでロシアかフランスの名門バレエでは太りやすい体質というので退学となっていたり、歌舞伎も幼少期から稽古だったりとある意味炎上案件なわけだけれども、効率よりも時間から得るものもあるわけで。。

と認めたくなるだけの見事な舞台が本作では描かれている。

ラストの一文のみが嬉しい展開。
あとはもう。。しんどい。。 あまりに重く、それも複数人の事なので一度読んだだけでは消化不良。

0
2025年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

群像劇ミステリー。文体も心情も読みやすい上に魅力的だからすらすら読める。
ストーリーラインとしては数人の登場人物の視点で、バレエ劇団(?)HHカンパニーの「カイン」初演の前後2,3日を追う形。同時に、導入部で犯人のモノローグが入るので、導入で死んだ男は誰なのか、犯人は誰なのかを追う形でもある。登場人物達は大体みんな誰かへの憎悪や殺意を持っていて、包丁を握りしめるシーンが用意されている。
ただのミステリーじゃなくて、藤谷豪しかり、誉田規一しかり、天才の心情は語られず、凡才達が苦しみもがく構図になっていた。それぞれの視点で話を追うと話の空気ががらっと変わる。恋人に振り回される女性の恋愛小説っぽかったり、自分の夢をひたすら追う青春(?)小説っぽかったり、恋人の行方を追うミステリーっぽかったり。
天才達の内面は語られないからこそ良いんだけど、でも個人的には藤谷豪の心境が知りたかったな。ずいぶん捻じ曲がった人だったので、ラストとかでもっと捻じ曲がった心境を語ってくれたら嬉しい。笑
犯人の殺害動機(推測で語られるだけだけど)も良かった。なるほどね。

もしここを読んだ人がいたら教えてほしいんですけど、「カインは言わなかった」てタイトル、何を言わなかったのかな。カイン=誠で「(豪が死んでることを)言わなかった」ってこと?


⚫︎あらすじ
公演直前に姿を消したダンサー。
美しき画家の弟。
代役として主役「カイン」に選ばれたルームメイト。
嫉妬、野心、罠──誰も予想できない衝撃の結末。
芦沢央が放つ、脳天を直撃する傑作長編ミステリー!

男の名はカイン。
旧約聖書において、弟のアベルを殺害し、「人類最初の殺人者」として描かれる男──。
「世界の誉田(ホンダ)」と崇められるカリスマ芸術監督が率いるダンスカンパニー。
その新作公演「カイン」の初日直前に、主役の藤谷誠が突然失踪した。
すべてを舞台に捧げ、壮絶な指導に耐えてきた男にいったい何が起こったのか?
誠には、美しい容姿を持つ画家の弟・豪がいた。
そして、誠のルームメイト、和馬は代役として主役カインに抜擢されるが……。
芸術の神に魅入られた人間と、
なぶられ続けた魂の叫び。
答えのない世界でもがく孤独な魂は、いつしか狂気を呼び込み、破裂する。
“沈黙”が守ってきたものの正体に切り込む、罪と罰の慟哭ミステリー。
『汚れた手をそこで拭かない』が直木賞候補、
『火のないところに煙は』が本屋大賞と山本周五郎賞候補。
『許されようとは思いません』続々重版中、
芦沢央が渾身の力を込めて書き上げた超傑作がついに文庫化!

「この小説そのものが、底の知れない沼のようだ。
読み始めたら、逃げられずに沈んでいく恐怖を快楽にかえて、
読み耽るしかない」──角田光代(解説より)
(文藝春秋公式HPより引用)

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2024年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新作公演「カイン」の初日直前に失踪してしまったバレエダンサー藤谷誠。
彼の弟で画家の豪。
それぞれの恋人と、誠の後輩尾上くんと、
カリスマ芸術監督の誉田と、彼との関係で傷ついたダンサー達と、自殺しちゃった女の子とその両親と、
誠と豪の家族の話と、、、なんだか色々盛沢山な小説でした。
舞台と絵画の表現力が素晴らしいし、殺人事件なんかもうまいこと絡んできて面白かった。

んだけど、、、ちょっと盛沢山すぎて、個人的には処理しきれず消化不良。
読み終わった直後の感想が「尾上くん、良かったね!」だった。
最後、報われてホットしたわ。
芸術、良くわからないけど、修羅な世界だなぁ、と。
その表現力に圧倒されつつも、終始モヤモヤと不穏な空気感の漂う一冊でした。
メンタル弱っている時にはお勧めできないな。

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2023年12月01日

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