あらすじ
全企業にとって「ビジネスと人権」は喫緊の重大アジェンダだ
■皆さんは「人権」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか?
実のところ、2020年頃まで「ビジネスと人権」のテーマで日本企業の経営者と対話すると、会話がかみ合わないことがほとんどだった。著者は経営コンサルティング会社の代表として日々、企業からサステナビリティ(持続可能性)についての相談を受けている。その際、気候変動対策としての脱炭素の取り組みだけがサステナビリティの論点なのではなく、人権についてもしっかり経営会議で議論しましょう、と伝えている。
そのとき、「人権って同和問題の話だよね。なんでウチに言ってくるんだ」という狭い解釈をしている経営者も少なくない。このタイプの経営者は単に「認識不足」なので、今日の「ビジネスと人権」の全体像を学ぶことで意識や行動が変わる期待もある。
だが、次のような反応を示す経営者の場合は要注意だ。原因はより根深く、建設的な対話になるまでに苦心する。
「俺が若いころは、ハラスメントなんて全然問題にならなかった。長時間労働は当たり前。だから会社は成長したんだ」
「日本だって戦後の復興期には子どもが働いていた。経済が大きく成長するときというのは、どこの国でもそう。途上国は今その時期だから、子どもが働くのは当たり前でしょう」
本書は、企業が「ビジネスと人権」に取り組むための基礎知識と、具体的な実践方法、さらには「人権リスク対策」を通じてビジネスを拡大するためのヒントをまとめた。
(本書『まえがき』より)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
会社の研修で、著者の方にセミナーをしていただいて頭ガツーンときた、新しいビジネスの視点。
ハラスメントや児童虐待など、ちょうど中居くんの件、フジテレビの対応も含めてこれに関係する企業と個人の姿勢なんだなって思いました。わかりやすく、日本の状況(遅れていること)と海外の状況の比較など、事例も似ている、同じメタファーを使いながら描かれていて入門書として最適です。
環境がビジネスになったのだ、人権に関わるもビジネスもあり得るのだ。
Posted by ブクログ
ジャニーズの問題を考えるうえでよりどころとなる知識がほしいなと思い調べたところ、ちょうどよさそうな本だったので購入した。そもそもいま日本や世界ではどのような人権問題が起きているのかというところから、それらがビジネスのリスクとどのように繋がるのか、リスクの発見の仕方、さらに「人権ビジネス」(という単語には違和感を感じる人も多いと思うけど、営利目的で課題解決を行うことの重要性についてもちゃんと書いてあった)にまで発展させた内容で、知りたかったことはだいたい知れたと思う。
冒頭にビジネスと人権に関するさまざまな資料が入っているんだけど、世界と比べて日本は人権に対する問題意識が低い、という事実に悲しくなった。でもそうだよなあ、たしかにSDGsっていっても環境問題ばかりが取り上げられていて、人権に関する話題はあまり出てこない気がする。
ジャニーズの問題を考えるにあたって一番なるほどと思ったのは、「人権リスクはオフセットできない」ということ。環境問題ではカーボン・オフセットができるけど、人権問題に関しては「マイナスの影響をプラスの活動で埋め合わせる」ことができないという話。ジャニーズは確かにさまざまな寄付や慈善活動を行っていて、それはそれですばらしい話だけど、だからといって他のリスクを帳消しにはできないんだよな。
あとやっぱり、もうさんざん言われているけど、リスクを放置しすぎたんだと思う。人権問題を軽視したり、放置したり、知らんぷりをすることがビジネスにとってどれだけ大きなリスクをもたらすか、今回のことでよく実感できたけど、改めてこの本でも学べてよかった。
そして「リスクを放置」してきたのはスポンサーも同じ。人権問題に関しては、自社がよければそれでよし、とは絶対にいえない。今回のことでスポンサーは何らかのアクションを起こすべきだと思う。
著者は「サプライヤー企業で人権侵害が発覚したらすぐに取引をやめるべきか」という質問に対して「ノー」と答えている(特殊なケースを除いて、ともある)。理由はこうだ。
なぜなら、取引の打ち切りはその会社のリスク回避になったとしても、人権侵害の根本的な改善につながらないからだ。取引停止後に、サプライヤーの売り上げが大きく減少したら、それが原因で人権侵害が深刻化するおそれもある。
(中略)
つまり、人権侵害が発覚したサプライヤーと継続的に対話し、ともに改善方法を検討し、サポートを惜しまないのが理想的な対応だ。(本文から引用)
私たちファンにはできないけどスポンサーにならできる、ということは絶対にあるはずだ。スポンサーという立場ならではの影響力を行使する方法が、人権問題全般にとってプラスの影響をもたらすアクションであってほしいと思う。
あと人権デュー・ディリジェンスについてはもうちょっと勉強したいかも!
【読んだ目的・理由】企業と人権について学びたかったから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.5
【一番好きな表現】人権を無視・軽視したビジネスは10年後、20年後には確実に「なくなる」。(本文から引用)
Posted by ブクログ
教育の現場でもSDGsが謳われており、最近の流行りに思われる。ただ、言葉が変わっただけで、重きを置くのは人権なんだと最近自分の中で答えが出ていた。私は企業人では無いけれど、いずれ企業人になる子どもたちにこの人権をしっかりと叩き込ませたい。それが随分後の日本人権健全度に比例すると信じている。
Posted by ブクログ
ビジネスの論理で、人権対応の必要性を語る、
本書を書く際に著者が心掛けたことの一つとのことです。
現実的に人権にかかわる企業活動が企業の価値にどのように影響するのか、
人権リスクはどのようにビジネスリスクとして浮かび上がってくるのか、
実用的でわかりやすくまとめられていました。
Posted by ブクログ
今やどの企業にとっても重要なテーマの一つとなっている人権リスクについて、比較的わかりやすく書かれていました。かつては同和問題だけが人権でしたが、今やこんなものまで人権かと思われるくらいになっている事実に愕然とします。記載もされていましたが、将来は環境ビジネスに並んで人権ビジネスが広がるのでしょう。
Posted by ブクログ
日本は環境問題に偏重 人権の関心が薄い
相対的貧困 7人に1人の子供が貧困 シングルマザー収入は半分
世界経済フォーラム ジェンダーギャップ指数 119位/156国
売上低下:不買運動 取引停止 業務停滞 事業撤退 輸入禁止と入札停止
株価下落 ブランド毀損
沈黙や きれいに見せることはリスク
今の現実と取り組みを公開
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」2011年
全ての企業にどこでも人権責任
人権デュー・ディリジェンス
罰則や訴訟 各国法の影響を受ける(2次サプライヤまで)
教育研修
社内環境と制度の整備
サプライチェーンの管理
直接原因ではなくても助長や関係により対応が求められる
害をなさない を超え 問題解決へ
ソーシャルビジネス(社会問題解決事業)としての 人権ビジネス
顧客の顧客に働きかける
コレクティブインパクト
NPO・NGOとの連携 :専門性、接続性、正当性
発想法10
マイノリティの生きづらさ解消
人権シルク原料不使用
貧困障害災害支援
困窮者包摂
ファアトレード
人権アジェンダに貢献
濃く役の顧客と共創
公共性の高い商材の高付加価値化
ルール形成による経済合理性
経済問題ではないとされている課題への貢献