ジャニーズの問題を考えるうえでよりどころとなる知識がほしいなと思い調べたところ、ちょうどよさそうな本だったので購入した。そもそもいま日本や世界ではどのような人権問題が起きているのかというところから、それらがビジネスのリスクとどのように繋がるのか、リスクの発見の仕方、さらに「人権ビジネス」(という単語
...続きを読むには違和感を感じる人も多いと思うけど、営利目的で課題解決を行うことの重要性についてもちゃんと書いてあった)にまで発展させた内容で、知りたかったことはだいたい知れたと思う。
冒頭にビジネスと人権に関するさまざまな資料が入っているんだけど、世界と比べて日本は人権に対する問題意識が低い、という事実に悲しくなった。でもそうだよなあ、たしかにSDGsっていっても環境問題ばかりが取り上げられていて、人権に関する話題はあまり出てこない気がする。
ジャニーズの問題を考えるにあたって一番なるほどと思ったのは、「人権リスクはオフセットできない」ということ。環境問題ではカーボン・オフセットができるけど、人権問題に関しては「マイナスの影響をプラスの活動で埋め合わせる」ことができないという話。ジャニーズは確かにさまざまな寄付や慈善活動を行っていて、それはそれですばらしい話だけど、だからといって他のリスクを帳消しにはできないんだよな。
あとやっぱり、もうさんざん言われているけど、リスクを放置しすぎたんだと思う。人権問題を軽視したり、放置したり、知らんぷりをすることがビジネスにとってどれだけ大きなリスクをもたらすか、今回のことでよく実感できたけど、改めてこの本でも学べてよかった。
そして「リスクを放置」してきたのはスポンサーも同じ。人権問題に関しては、自社がよければそれでよし、とは絶対にいえない。今回のことでスポンサーは何らかのアクションを起こすべきだと思う。
著者は「サプライヤー企業で人権侵害が発覚したらすぐに取引をやめるべきか」という質問に対して「ノー」と答えている(特殊なケースを除いて、ともある)。理由はこうだ。
なぜなら、取引の打ち切りはその会社のリスク回避になったとしても、人権侵害の根本的な改善につながらないからだ。取引停止後に、サプライヤーの売り上げが大きく減少したら、それが原因で人権侵害が深刻化するおそれもある。
(中略)
つまり、人権侵害が発覚したサプライヤーと継続的に対話し、ともに改善方法を検討し、サポートを惜しまないのが理想的な対応だ。(本文から引用)
私たちファンにはできないけどスポンサーにならできる、ということは絶対にあるはずだ。スポンサーという立場ならではの影響力を行使する方法が、人権問題全般にとってプラスの影響をもたらすアクションであってほしいと思う。
あと人権デュー・ディリジェンスについてはもうちょっと勉強したいかも!
【読んだ目的・理由】企業と人権について学びたかったから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.5
【一番好きな表現】人権を無視・軽視したビジネスは10年後、20年後には確実に「なくなる」。(本文から引用)