あらすじ
待望されてきた第三歌集がいよいよ
短歌界で最も輝かしい存在である大森静佳の歌はあらゆる人を魅了してやまない。「カミーユ」に続く第三歌集がいよいよ届く。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
大森静佳の三冊目の歌集。歌集としては珍しく大手の文藝春秋から出版されていることに驚いた。それだけ期待されているのだろう。それに応えて第四回塚本邦雄賞を受賞した。言葉同士がぶつかり、重なり、裏切る。その狭間からイメージがこぼれる。「鳥影はするどく空を斬りわたり結末が見えているからって何だ」「青空の深いところでほのひかる見たことのないあなたの乳歯」「さびしさの単位はいまもヘクタール葱あおあおと風に吹かれて」「生まれると生きるの間に咲きそよぐねこじゃらしたち根こそぎ毟る」「約束はひとりっきりでもできること 虹よ おまえをずたずたにする」「人魚なのに溺れてしまうこんなにもつめたい水にそしてあなたに」「あなたより先に死にたしそののちのあなたの死後にふたたびを死ぬ」
Posted by ブクログ
これは「Do not think,Feel」やなと思って読みすすめ、気になった歌をもういちど読み返したら、そういうことでもなくて、混乱した脳みそが落ち着きました。このような感性を身につけてみたい。
▼切り株があればかならず触れておく心のなかの運河のために
▼さびしさの単位はいまもヘクタール葱あおあおと風に吹かれて
▼引き寄せてやがて静かに斬り落とす眠りの奥にあなたの腕を
▼声帯が帯であるならきらきらと真昼あなたの帯をほどきぬ
▼水晶のたてがみ青くなびかせてきみはわたしの生に喰いこむ
▼傘の骨、と言うときのわがくちびるに傘の肉赤黒くふくらむ
Posted by ブクログ
以下が特に好きな3首でした。
ジェルソミーナを理想の女と言ったひとが明日は山羊になりますように
会えた気がするのです、少し 手鏡をおなかに伏せて眠る夜更けは
産めば歌も変わるよと言いしひとびとをわれはゆるさず陶器のごとく
Posted by ブクログ
読んでて度々涙がでた
感動の涙でも、悲しくて泣いてるのでもなくて
ただただ涙がでた
ひとことで表すなら、赤黒い血の塊
言葉としては敬遠されたり忌み嫌われるものだけれど、だれもが身体のなかに宿していて、でもふだん見ることもないしそんなものありませんていう顔をしてみんな生きている
それらを静かに意識させてくるというか、ぐ…と深いところに沈み込ませる力がある
Posted by ブクログ
・さびしさの単位はいつもヘクタール葱あおあおと風に吹かれて
・飛行機に生まれたかったと言うひとの額はしろいまま夕焼ける
・わが髪を撫でつつ力のない髪と言ったのは母 五月の庭で
・白髪のあなたを思い描くとき黒目の黒さばかりが浮かぶ
Posted by ブクログ
世代が違う、なんせ息子と同世代なので親子ほどの違い、それに短歌には門外漢でもあり、理解できない歌も多くありました。
しかし、分からないながらも、静かだが美しく、時に意志の強さも感じられ、現代の短歌会を代表する歌人なのだと感じ入りました。
先日、90歳すぎていまなお矍鑠たるおば、ふだんからうち息子の歌や現代短歌がわからない、と言っているおばが、「現代短歌は歌と言うより詩のようなものね」といっていました。
この大森静佳さんの歌集もそう思って読めば、より楽しめるのかも、と思いました。
また、繰り返し読みたい歌集です。
Posted by ブクログ
芯が強いというか、厳しい歌が多かったように思う。
切羽詰まった対峙という印象。
その言葉選びにドキリとしたり、ヒリヒリしたり、少し恐ろしかったり。
読んでいて息苦しくなるくらいのものもあった。
それ故に、私には感じ取りきれない歌も多かった。
私が幼すぎるのかもしれない。
「あとがき」で大森さんご自身が「自分の歌によって自分自身が傷つくことが増えてきた…」と仰られていたのが印象深い。
「青林檎ふたつにひらくさびしさの本気はものを見えづらくして」
「わたしには言葉がある、と思わねば踏めない橋が秋にはあった」
「さびしさの単位はいまもヘクタール葱あおあおと風にふかれて」
「妬むことは花束のようなくるしさだ そうだとしてもさらに束ねて」
「瑪瑙という文字に酔いつつ読みすすむ頁に夜の翳りふかまる」
「金木犀うすくフェンスにふれながらいつかはいつかのままに遠くて」
「水晶のたてがみ青くなびかせてきみはわたしの生に喰いこむ」
「この胸に枝垂れるミモザ ごめんって言われたらもう咲かすしかない」
「おもいつめ深く張り裂けたる柘榴あなたの怯えがずしりとわかる」
「何年も泣いていないというきみが撮った桜のどれも逆行」
「赦されぬことが葉となり花となりわたしはいっぽんの木のままでいる」