あらすじ
よみがえる〈ミヒャエル・エンデ〉の世界!
暗黒の中世のとある真夜中。嵐の中を進むあやつり人形劇団の馬車から少年クニルプスが姿を消す。彼が向かった先は、誰もがおそれる大悪党、盗賊騎士ロドリゴ・ラウバインの城だった――。晩年のミヒャエル・エンデがのこしたふたりの物語が、美しい加筆とともにふたたび動き出す。「悪」と「おそれ」、その真の意味を探しもとめる、めくるめくメルヘンの世界。小学高学年から。
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Posted by ブクログ
おっミヒャエルエンデだーー
しかも表紙が JUNAIDAさんーかわいいーーっと思って手にとる
クニルプスがロドリゴ・ラウバインが自分が思っていたような盗賊騎士でなかったことに気付かされた時
そもそもがこっちの思い込みだったわけだけど
普通なら騙された!と腹を立てるんじゃないかと思うんだが、すぐに自分がしたことでロドリゴに迷惑がかかるんじゃないか、と心配するところにびっくりした
えっ、なんかめっちゃいい子やないかーーー
ロドリゴが天職を得られてよかったなーー
最後まで読んだところでこれ、実は未完の作品で
エンデジャない人が完成させたとあってびっくり
そーなんだー
どの辺までがオリジナルなんだろう??
エンデにしてはわかりやすいなーっとか思ったんだけど、
やっぱ違う人が書いたからかな
最初の勢いでクニルプスが色々突進しまくる話になるのかと
思ったけど、王女様にしっかり手綱握られてたな
ラストの人形劇が面白かった
幽霊が怖い竜って聞いたことない笑
王様のメランコリーって結局何が原因だったのか?
Posted by ブクログ
人形劇団の息子クニルプスと偽の騎士ロドリゴ・ラウバイン(優しくて闘うような人ではない)の物語。自分の世界に閉じこもっていたロドリゴが思いがけず外に出ることになり、最後は人形劇団をすることになります。鳥のソクラテス(オウム)がよかったです。
Posted by ブクログ
自分が世界の中心であれば、何事も思うままに振舞える。けれども、周りに存在する数多の人々はそれぞれ独立した個であること。そして、自分の言動が他者に影響を及ぼすことを知ることが、「おそれ」の正体かと思う。それは、悪影響だけではなく、良いことももたらす。だからこそ、「とんでもない力がわいてくることもある」のだ。
また一方、ラウバインのように傷付けられることを極端に怖がり、自分の殻に閉じこもってしまうのは、ここでいう「おそれ」とはならない。それは自分の脳内で作られた世界を怖がっているのであって、現実の社会と向き合っているわけではない。
善悪を判断するには、他者の存在を尊重しなければならない。本作は、少年が社会性を身につけてゆく過程が描かれている。児童書ではありながら、きちんと社会と向き合っているだろうか、正しく「おそれ」ているだろうかと、大人もまた身につまされる作品だった。
絵が素晴らしい!作品の雰囲気を高めていると思う。なんといっても、本を開け、見返しと出会った時点で、これから特別な物語を読むんだという高揚感に包まれる。物語の扉を開けたのを実感したのだった。
Posted by ブクログ
【真実を語るおとぎ話】
主人公の男の子クニルプスは、人形劇団の両親と一話のオウムと一緒に馬車で異動暮らしをしていたのだけれど、ある嵐の日にこっそり抜け出して、向かった先は、盗賊騎士としてもいちばんの悪党と恐れられるロドリゴ・ラウバインのお城。恐れを知らぬクニルプスは、従者になりたい、と、ゾクゾク森のトゲトゲ岳のオソロシ城に辿り着く。
そこから、いろいろなみんなの思い違いが物語を作って行く。だって、本当は、ロドリゴは悪党なんかではなく、見た目は「牙をむいた闘犬」のようにとりつくろわれていても、心根は「ひな菊のようにやさしい」、怖がりで孤独な海賊騎士の末裔だったから。
あった時からクニプルスがロディおじさん、と呼んでいるところがおもしろい。
お姫さまのフリップもかっこいいキャラでよかった。
人形劇団の両親は、クニプルスと対照的で、なんでも習慣どおりにすることを好み、想像力に欠けている、リスク回避型のキャラとして描かれていたけれど、最終的に、それぞれの性格や傾向に適した暮らし方を見出すところもいい。
恐れ知らずだったクニプルスも、人を苦しめてしまうかもしれない、という恐れの気持ちを学んでいく。
人は他者について思い込みをしたり、時に勝手に気遣ったり、期待を裏切られたりしながら学んでいくんだろうと思う。
そんな教訓がおとぎ話になったりして、その時代にあった娯楽メディアの中で消費されたり、鑑賞されたりしているんだなーと。
想像力。
ミヒャエル・エンデさんすごい。この本は、生前に3章まで書かれていたものを、ヴィーラント・フロイトさんが完成させたとのこと。見事なお仕事です。
Posted by ブクログ
ミヒャエルエンデの未刊の作品をフロイントさんが引き継いで完成した作品。恐れを知らないクニルプスが悪に憧れてロドリゴラウバインに従者として志願するが、盗賊騎士として恐れられている彼は実は。という話し。エンデのお話はモモとはてしない物語しか読んでないが、面白いけど何か難しい話だなあと思っていた。今回は恐れがテーマで、このままいくとただただ難しい話になりそうなところをフロイントさんがエンデの意志を損なわず物語としてうまくまとめてると思う。個人的にはロドリゴとオウムが気にいった。面白かった。
Posted by ブクログ
ミヒャエル・エンデの第3章までの遺稿に、ドイツの児童文学作家ヴィーラント・フロイントが続きを書き足して完成させた1冊。
junaidaの挿絵も、表紙の金文字もカバー下の装丁も美しく、豪華な本ではある。エンデの遺した物語の先が読めるというのも誠に贅沢、なのだけれど、やはり読後感としては物足りなさがある。
4章以降にも、エンデらしいフレーズやモチーフが散りばめられ、それらへのリスペクトも感じられる。物語の展開としても無理がないと納得することができる。
けれど、エンデの児童文学作品を(それが『魔法のカクテル』のようなスケールの小さなものでさえ)、読んだ後は必ずと言っていいほど訪れる感覚──いま、本当のファンタジーを読んだ、とでもいうような感覚、そして、ではファンタジーとは現実とは一体何なのだろうという思索に導くような感覚──が、本書では感じられなかった。
エンデの不在により、エンデの力や奥深さを改めて感じさせられる1冊だった。