【感想・ネタバレ】世界史の構造的理解 現代の「見えない皇帝」と日本の武器のレビュー

あらすじ

教養として、あるいは確かなビジョンを持つための武器として「世界史」を知っていることは大変重要だが、いざ世界史を学ぼうとすると大量の歴史知識が登場する。どうすればよいのかと悩む読者のための一冊を、在野の物理学研究者で『現代経済学の直感的方法』などの著者である長沼伸一郎が上梓した。著者は歴史家E・H・カーに倣って「過去を知るためにはまず『みるべき未来』を定めることが肝要」と述べ、過去の古典でなされた予言を物理の視点で抽象化して、さらに未来に延長し、「みるべき未来」を叙述する。そして歴史上の覇権の構造を見抜き、世界史をその構造で捉えることを提案。そうすることによって、世界史を俯瞰的に把握することができるようになるのだ。さらに「イスラム文明が西欧に敗れて立場を逆転される契機になったのは、微積分学を受け入れなかったこと」と述べ、科学上の発見が当時の思想や社会科学の新たな概念の創出に影響を及ぼした可能性を指摘するなど、「文明の理数系史観」(仲野徹氏)とも呼ぶべき清新な歴史観を提唱する。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

長沼節が心地よい、日本に対する警句と進言といったところでしょうか。

「現代経済学の直観的方法」では、経済の根本的な理解を明瞭かつある意味突飛な思考的発展によって助長してくれる名著であったので、世界史に対する同じテイストかなと思ったけれど、こちらはどちらかというと著者の意見を世界史からくみ取って提示するといった様相。

理数系武士団や安楽カプセル(本書の正確な表現じゃないかも)といった急進的な表現を使用しながらも、短期的願望と長期的願望の論理はさすがといった納得感。コラプラー化という短期的欲望がはびこっている社会での閉塞感というか、これじゃないんだなー感は各個人うすうす感じてるんだろうけど、宗教に頼るでもなく格差階級を復興するでもない第三の道を模索していく必要があるんだなー。ど文系の私ですが、理数系のお力と協力ができる度量の広い人間になりたい、そう思う。

途中のなぜ欧米が知的制海権をもっているかの論理は非常に納得のいくしある程度回答が出ているかと思うが、さて日本が今後具体的にどのようにしていけばいいのか、理数系武士団の登場を待ち望むしかないのかといったところが曖昧かなと感じる。これは著者ほどの論者でも間違いないといった回答がひねり出せないほどの難題なのだなと理解する。主張は、理数系の人たち表舞台に出てこいというメッセージはくみ取れたけども。

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2022年09月09日

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