あらすじ
律令体制の限界、財政破綻の危機……。この国を救う――。たとえ我が名が残らなくとも。“学問の神様”ではなく“政治家”としての菅原道真に光を当てた、第12回日経小説大賞受賞作家による感動の歴史長編。文人として名を成し、順調に出世していた菅原道真は、讃岐守という意に反した除目を受け、仁和2年(886)、自暴自棄となりながら海を渡って任国へ向かう。しかし、都にいては見えてこなかった律令体制の崩壊を悟った道真は、この地を“浄土”にしようと治水を行なった空海の想いを知ると共に、郡司の家の出でありながらその立場を捨てた男と出会うことで、真の政治家への道を歩み出す。「東風吹かば匂いおこせよ梅の花 あるじなしとて春を忘るな」に込められた道真の熱き想いとは。菅原道真の知られざる姿を描いた傑作歴史小説。
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Posted by ブクログ
「本当に願うならば、現実に顕さねばならない。その願いがどんなに途方もないことでも、命懸けで為そうとすれば、ほんのわずかでも実現できるかもしれない」
空海阿闍梨の為した事を目にして得た想いを、その後も悩みながら苦しみながら、一生をかけて自らのすべきことを見定め、成し遂げた。ただただ優れた人物というだけでない描写に人間らしさを感じられる、そんな菅原道真公が国を活かすために奔走する姿に感銘を受ける。
恥ずかしながら、もともと歴史、古典に明るくなく、読み始める前は、帯にある"東風吹かば〜"の歌に対して思えることがなかったのですが、参章の終わり、何かがスッと胸に落ちてきました。
Posted by ブクログ
「学者で、漢詩の才能にも恵まれた人」「無実の罪で大宰府に左遷された悲劇の人」というイメージとは違った、政治家としての魅力溢れる菅原道真が描かれていました。特に前半の讃岐赴任時代は、左遷に泣いたり、図星をさされて怒ったりと、とても親近感が湧く菅原道真です。
そんな菅原道真が左遷を経て都に戻り、細心に、大胆に税制改革を進めていくところは本当にカッコいいです。
自らの地位も名誉も捨てる覚悟で、国を救うための税制改革を進めていく姿に、胸が熱くなります。
Posted by ブクログ
菅原道真の左遷されて行った讃岐国での出来事,彼に目を開かせたこの民を思う無私の男の死の場面は胸に迫ってきた.その後の道真のなりふり構わぬ改革への熱意,公家との駆け引きなど面白く,太宰府へ流された顛末もよくわかった.
それにしても,藤原一族の血は恐ろしい.