あらすじ
病死、餓死、自殺……入管での過酷な実態。ネット上にあふれる差別・偏見・陰謀。日本は、外国人を社会の一員として認識したことがあったのか──。「合法」として追い詰め、「犯罪者扱い」してきた外国人政策の歴史。無知と無理解がもたらすヘイトの現状に迫る。
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Posted by ブクログ
ウィシュマさんの事件で少し表に出てきた人権侵害ともいうべき入管の実態、ヘイトスピーチなどの差別と暴力、技能実習生制度といった外国人差別をめぐる状況が紹介され、著者二人の対談で解説や示唆が得られる。
例えば、人を逮捕するには現行犯でない限り司法手続きを経た令状がいるのに、入管はそうした司法の手続きを介在させずに人を拘束することができるなんてことは初めて知った。また、今日の入管につながる制度・仕組みができた戦後間もないころに、特高経験者が多く入管に関係したなんてことも知ると、そのアウトローっぷりとつながる気がしてくる。
ことほどさように、制度ですらこれでは大衆が外国人差別をするのも無理ない気さえする。しかも日本人ってこの方面に関する感度が本当に低い。自覚なしに差別的なことをしている場合も多くあるはずで、こうしたことはどうやって解決していけばいいのだろう。
そういう自分だって、日本人だから外国人の扱いに関してはどこか自分に関係のないことと思っていた部分がある。ところがこういう腐った体制はいろんなところに影響しかねない。でもそうではいけないんだよね。差別が許容されている社会では、いつ巡り巡って自分に矛先が向いてくるかわかったもんじゃないんだから。
Posted by ブクログ
スリランカ女性を衰弱死させた入管の問題や、ベトナム人技能実習生のリンチ事件、孤立出産の問題など、文字通り人を人とも思わないような事件の数々。
そこにあるのは外国人への差別意識と、人権感覚の欠如である。
日本の農業や製造、漁業、インフラにサービス業と、多くの外国人労働者の姿が散見される。日本はもう外国人の労働力なしには社会を回し続けることが出来ないところにまで来ている。にも関わらず、その問題に向き合おうともせず目を瞑り、外国人労働者を奴隷のように扱っている。
外国人の労働力の世話で維持されている社会で生活しながら、「日本から出て行け」と声高に叫ぶ人たちはまったく現実を見ようとしていない。
昨今では出稼ぎする外国人労働者も日本を選ばないと聞く。
日本の経済力の衰えは勿論のこと、特権意識に胡座をかいて、差別や働き方の是正も進まない国に魅力など感じるはずがないからだ。
いずれ経済問題同様に蔑ろにしていたツケを支払わされるときが来るだろう。
だが、そんな諦念を抱えていても、諦めて何もやらないというわけにもいかない。少なからずまだ声を上げたりやるべきことはあるよな、と。