あらすじ
地方からリオのスラム街にやってきた、コーラとホットドッグが好きなタイピストは、自分が不幸であることを知らなかった――。「ブラジルのヴァージニア・ウルフ」による、ある女への大いなる祈りの物語。
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Posted by ブクログ
著者の前書きから始まったと思ったら、ふつうに思いっきり本編だった模様
面白かった!日本語は読みやすい!
こういうどうしようもない結末を迎える作品が好きで、本を読んでる自分がいるなと思った
Posted by ブクログ
とらえどころのない小説で、こんな話ですよ、と紹介しずらかった。ただ、マカベーアの物語を単純に不幸でした、で片付けずに、どういう解釈ができるのか考えることが大事だと思った。ロドリーゴ、マカベーア、クラリッセ、いろいろな角度から想像できると思う。
不思議な小説ではあるが、これが作家クラリッセの祈りであり、叫びであると思う。これに触れてみるのも一つの経験としておもしろいと思う。
とらえどころのない小説で、こんな話ですよ、と紹介しずらかった。ただ、マカベーアの物語を単純に不幸でした、で片付けずに、どういう解釈ができるのか考えることが大事だと思った。ロドリーゴ、マカベーア、クラリッセ、いろいろな角度から想像できると思う。 不思議な小説ではあるが、これが作家クラリッセの祈りであり、叫びであると思う。これに触れてみるのも一つの経験としておもしろいと思う
Posted by ブクログ
歯痛を抱えた語り手がためらいがちに話しだすのは、コーラが好きなタイピストの女の子・マカベーアの物語。両親を亡くし叔母に育てられ、この世のすべては"他人のもの"だと思いながらも自分は当然のように"幸せ"なのだと信じて生きてきたマカベーアは、「わたしは誰」と問うことも「わたしはわたし」と言うこともない。マカベーアの人生と語り手の歯痛の行く末は。1977年に発表された、ブラジルの女性作家の遺作。
不思議な読みごこち。不幸な女の子がおり、不幸な恋があり、不幸な結末を迎える話と言ってしまうこともできるのだけど、語り口はアンチクライマックスでとても現代的。
この小説は〈作者〉のごく私的なお喋りからはじまる。彼はロドリーゴと名乗り、マカベーアの物語自体には登場しないが、彼女がどんな目に遭うのかは知っている特権的な立場だ。マカベーアが"不幸"に向かっていくと知りながら、「自分は書かなければならない」と嘯く。「物語を書くことより、犬の命が大事」などという一文を唐突に差し込んでおいて、物語のなかでは女の子が死に向かって突き進んでいく。
語り手はマカベーアに同情を寄せながら最後まで特権的な視線を手放さない。この語り口はマルケスの『エレンディラ』やブルトンの『ナジャ』を彷彿とさせる。語り手にロドリーゴという男性を召喚したのは、シュルレアリストたちが〈ミューズ〉を物語のなかに封じこめる手つきのパロディであるように思えてならない。
マカベーアという子が村田沙耶香の小説にでてきそうなキャラクターなのも魅力なのだが、その裏に貧困と無知の暴力性が隠れている。どんなに具合を悪くしても食べ物は吐かないと医者に言い張ったり、恋敵に「不細工なのって辛い?」と聞かれて悪気なく「あなたは?」と問い返したり、痛ましくもユーモラスなマカベーア。モラハラ彼氏とのデートDV描写もエゲツないのにコントみたいで笑えてしまう。〈星の時〉というのは「フィクションってのは究極、物語のなかで殺すために人格を生みだすことだよ」って意味な気もする。なんか『ティモレオン』も思いだしちゃったな。