あらすじ
記憶の片隅に残る、しかし、覚えていない「夢」。自分は何かと戦っている?――製菓会社の広報部署で働く岸は、商品への異物混入問い合わせを先輩から引き継いだことを皮切りに様々なトラブルに見舞われる。悪意、非難、罵倒。感情をぶつけられ、疲れ果てる岸だったが、とある議員の登場で状況が変わる。そして、そこには思いもよらぬ「繋がり」があり……。伊坂マジック、鮮やかなる新境地。(解説・川原礫)
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Posted by ブクログ
夢の中で戦ったことが、現実の問題や危機とリンクする。
そんな設定が面白い。内容も良かった。
夢で勝てば現実問題が解決する、そんな体験をした主人公たち。現実の問題がリアルで、ちょっとタイムリー。
夢の中がファンタジーなのも親しみやすい。
タイトルと、ハシビロコウの関連も面白かった。
シンプルに楽しんで読めたし、どんどん読み進めてしまった。登場人物がやっぱり魅力的。
Posted by ブクログ
最初は製菓会社に勤める平凡な男が巻き込まれた異物混入事件だったのが、色んな人との出会いをきっかけに予想もつかない方向へと話が転がっていく。
本作の設定の一つに昔のロールプレイングゲームのファンタジーのような夢の世界があるわけだが、二つの世界を行き来するというほど大袈裟なものではなく、ファンタジー世界の描写も主人公の認識も曖昧なのは評価の分かれる部分だろう。ヒロイックな活躍があるわけではなく、主人公は終始その世界での行動が時折フラッシュバックするか、仲間の活躍を伝聞で聞くばかりで、直接的に介入できないことによる焦ったさが残る。その反面、そのままならなさや輪郭のないぼやけた感じの認識はまさに夢そのものであり、夢と言いつつ単なる異世界のような感じでないあたりにリアリティがあるなとも思った。
伊坂幸太郎の真骨頂は小市民的な生活雑感と未来に対する予見力であり、本作も大衆の手前勝手な非難や悪意に対して一個人の素朴な嫌悪感と抵抗感という視点で、同じ一市民の雑感でも大衆と個人、善と悪でバランスを取っているのが上手い。『魔王』で外国人の排外主義や小泉進次郎や神谷宗幣のような若きアジテーターの台頭を予見していたのも凄いが、本作も最終的には新型インフルエンザによるパンデミックとなり、2019年刊行の時点で後のコロナウイルス騒動を予見しているのも慧眼だなと思った。