あらすじ
彼女と出会った。僕の日常は変わった。
純度100%! 小説現代長編新人賞受賞作。
売れない作家だった父が病死してから、越前亨は日々をぼんやり生きてきた。亨は、最後まで家族に迷惑をかけながら死んだ父親のある言葉に、ずっと囚われている。
図書委員になった彼は、後輩の小崎優子と出会う。彼女は毎日、屋上でくらげ乞いをしている。雨乞いのように両手を広げて空を仰いで、「くらげよ、降ってこい!」と叫んでいるのだ。いわゆる、不思議ちゃんである。
くらげを呼ぶために奮闘する彼女を冷めた目で見ていた亨だったが、いつしか自分が彼女に興味を抱いていることに気づく。
自分の力ではどうにもできないことで溢れている世界への反抗。本への愛。父への本当の想いと、仲間たちへの友情。青春のきらきらがすべて詰まった一作。
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Posted by ブクログ
「ひとりは、最も近くにいる、気軽にやってくる地獄」
「無関心であることは、人に優しくできないということだ。自分勝手であることは、感情の矛先を間違えるということだ。優しさの本質は他者への興味だ」
タイトルに惹かれて買った本だが、読後何とも言えないふわふわした感覚に陥り自分の心の中にもクラゲが降っているように感じた。登場人物がみんな優しい。主人公の亨は最初こそ他人にも自分にも無関心なタイプだったが、過去の父とのやりとりから人を傷つけたくないから無関心になっただけで、ずっと優しい。小崎ちゃんはクラゲを呼んでる不思議ちゃんかと思いきや、理由が余命わずかな親友との約束で世界に反抗するためだったのが切なかった。遠藤も関岡さんも真逆に見えて、実はとっても似てる2人だなと思った。そして、矢延先輩…こんな人が身近にいたらもっと本を読むのが楽しいしぜひ友達になりたい。
クラゲを降らせるのなんて突拍子もないと思ったけどそういった現象はちゃんとあって(ファフロツキーズ現象)、ファンタジー要素もありつつ実際にクラゲを降らすこと(しかも2回も!)あったのは結構グッと来た。こういうのは小説の中でも"起こらない"が多いと思うけど、小説はフィクションなんだから、起こり絵なさそうなすごいことが起きてもいいじゃないか!世界への反抗がクラゲを一日中降らせるなら、みんなが綺麗だと、少しでも空を見上げて今日はもう休もうか、と思えるような反抗なら、いくらでもあっていい。最高だ。
そして、この小説の中で知ってる本がたくさん出てきて、自分も語りたくなったし、知らなかった本は読んでみたいなと興味が湧いた!読書家の方ほど読むのが楽しい小説!