あらすじ
あなたにとっての“しあわせ”は何ですか?
人気エッセイスト&クリエーティブディレクターの著者が
過去から未来へ続く回想の旅を通して
よりよき生き方を自問する――
大好評「100のきほん」シリーズの松浦弥太郎が
人生をよりよく生きるための極私的考察をめぐらせて
50歳からの生き方を問いかける。
父や祖母との心温まるエピソードから、心地良い暮らしのヒントまで。
人生の途中で出合ったさまざまな出来事に思わず共感をおぼえる
大人のための味わい深いエッセイ集。
「今日のごきげん」をつくる41の実践&マイベーシックも
ビジュアルで大公開!
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
松浦弥太郎氏の、手紙のようなエッセイ。
一つ一つ、正面から向かい合うこと。相手に敬意を払い、常に感謝すること。素敵な家族感を絶えず出していた以前の著書と比べて今回は、妻との喧嘩も記載するなど、リアリティを感じる内容だ。恐らく、読者からすると、こんな聖人のような感性の人はいる分けないだろうな、やっぱりそうだったという感想だろう。ただ、ある事象をシンプルに、自分の生き方に向かって収斂させていく技法は興味深い。自分のことなのに、みんなのことのように感じるからだ。自己中心的な人間でも、いいことをする。ストイックにランニングして、怪我をして、きっと家族はうんざりしたことだろう。でも、それが自分の生き方だから、かっこいい、というふうに肯定していく強さを感じる。または、本としては肯定感を出しているのかもしれない。
一方で、この本を自分のこととして見ていくと、非常に気づきが多い。NYでの居候生活は、自分に必要だった休憩、何もしない時間だったというけれど、実際はひどい目で見られていたかもしれない。ただ、自身を空っぽにする方法は居候生活でなくてもよくて、ビーチでも、リゾートでも、温泉でもいい。頭を空っぽにする、雑念を振り払う時間を過ごす。これが何よりもリフレッシュし、次へのやる気を引き起こしてくれる。オムレツを作ってくれるお母さん、すごく素敵な、ストイックな母。感謝している息子としての著者。自分自身はどうだろうか。親からもらったものは、何だろうか。
白いシャツをとにかく推していた過去の著作からの変化は、テック企業への転身だろう。Tシャツ、ジーパンで仕事へ向き合うと、浮いているおじさんとしていたたまれなかったに違いない。それも、スタイルであって、スーツを着ていないといけないと過去から言ってきた自分を、もう一度見直す機会になっている。自分自身も、きっとたくさんの当たり前に囲まれている。人にそれを強要している。だからこそ、自分の当たり前を、すっからかんにする努力が何よりも大事だ。水のような気持ちで、一つ一つの事象に向き合う。これこそが本書によってもたらせる最大の効用ではないかなと思う。