あらすじ
道東・釧路で『ホテルローヤル』を営む幸田喜一郎が交通事故で意識不明の重体となった。年の離れた夫を看病する妻・節子の平穏な日常にも亀裂が入り、闇が溢れ出す――。彼女が愛人関係にある澤木とともに、家出した夫の一人娘を探し始めると、次々と謎に直面する。短歌仲間の家庭に潜む秘密、その娘の誘拐事件、長らく夫の愛人だった母の失踪……。驚愕の結末を迎える傑作ミステリー。(解説・池上冬樹)
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Posted by ブクログ
一気に読めた。最後までミステリーやった。北海道の風景と人の感情が合っとった。頭の中は色々な思いがあっても言葉に出さん主人公が好き。"なにひとつ繋がり合えないことを確信する"って表現もなんとも言えない感じ。
Posted by ブクログ
最初の1頁から桜木さんの世界に引き込まれる。ヒンヤリした体感。どこか乾いた淡々とした文体が肌に合う。
道東のさびれた飲み屋街の火災から始まるミステリーは途中はミステリーであることを忘れる展開。
それは、諦めと閉塞感の漂う叙情の世界。主人公節子は桜木作品に多く登場する女性にもれず、どんなことが起ころうとも、生きることに潔い。
読み進めて冒頭の事故へと時系列が追い付いたとき、思いもしなかった形でこの作品がミステリーだということを突き付けられる。
そして、ラストは節子の強さに感動すら覚え、澤木と共に「このまま、このまま」と静かに祈った。