あらすじ
「わたしという女は、子しか産むことのできぬ女なのか」「ひとふりの刀の重さほども値しない男よ」……。男尊女卑の因習、家の規範、愛なき結婚、第二次世界大戦、70代での夫との訣別……薩摩士族の娘であるキヲは、明治から昭和にかけて世のならいに抗い、「独立」の心を捨てずに生きた。自らの母をモデルに、真の対話を求め続ける一人の女性を鮮烈に描いた名著。
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Posted by ブクログ
解説でも書かれている通り、決してうまい小説ではなく読みにくいけど、主人公の行動原理は生涯一貫しているので、ある意味でとても分かりやすい。
いわゆる家父長制にとことんまで抗う主人公だけど、その刀の切っ先は男だけでなく女にも向けられている、そんな小説。フェミニズムとか超越している。
Posted by ブクログ
タイトルはむしろ、血と家と私、ではないのか。
天人唐草が薩摩藩にくるとこうなる、という話。キエー。
ずっと刀を突きつけられながら読むような小説だった。
重苦しい空気をまとい、常に真剣勝負で、キリキリと迫力をもって迫ってくる主人公・キヲ。
明治の西南戦争を見た父親の負け戦から始まり、太平洋戦争の負けを経ての男女同権とされる世界への転換。
キヲは父親がダブスタ男だとわかった瞬間に、本来なら父を斬るべきだったんじゃないか。
特に、あんな形で母親を誘拐婚してきた父がよそに女を囲った時点でやるべきだったよね。
作中ずっと表に立つテーマである、男女の違い以上に、血筋の違いが激しくて、読んでいる間ずっとクラクラしてしまった。
なんてったって生まれが全て。血の違い、家格の差、これがもうキヲのなかに100パーセント根付いてしまっている。
キヲ、怖いよ、と思って読んでいたが、最終盤で、末の娘の成もキヲ同様に絶対に他人の意見をきかないタイプで苦しむキヲを見て、正直言って因果応報だと思ってしまった。
私とは時代も土地も違うために、作品のコアをきちんと味わえたとは思えないが、キヲが只者じゃないこと、周りの人とのあいだに軋轢を生みやすいこと、家庭の上座を守る以外何もできない男たちが口では偉そうにするなんとも惨めな存在であることを、は理解できた。
しかしまあ、こんなに心から分かり合えない夫婦なのに子供がたくさんいて、最後には妻43歳まで妊娠がなぜ起こるのか、それが私にはまったく分かりませんデシタ…。
キヲ自身ぞれを恥ずかしいことだと言ってるし。
家の存続のために、子供をある程度成す必要があるのはわかるけど。この夫に表面上合わせてやった結果だということかな。子供らにしてみれば冗談じゃないよなって話。
Posted by ブクログ
強い女、剛い女、それが読後の第一印象。
薩摩士族、それも城下士族ではなく外城士族の娘として生まれたキヲ。西南戦争に西郷方として従軍した父により、厳しくキヲは躾けられた。
強い自意識を持って育ったキヲであったが、父の言いつけにより自らの意思を全く聞かれることなく結婚を決められてしまう。しかし、婚家との折り合いが悪く最初の結婚は短いうちに終わる。次の結婚は相手に望まれてのものではあったが、夫に甲斐性を見出せず、キヲは自ら田畑を耕し、行商をし、生計を立てていく。愛情のない夫婦生活ではあったが、次々の出産と子育てに彼女は追われる。キヲは、男尊女卑の因習、家の拘束、姑と嫁との諍いなど、多くの困難の中にあったが、安易に妥協することなく、自らの意思を押し通していく。己にも厳しいが、他人に対しても容赦しない。
そして自分がこれまで汗水たらして作り上げてきた家産を、何の相談もなく夫が子供夫婦に与えたことを知って、とうとう夫との離婚を決断する、ーひとふりの刀の重さほども値しない男よ。ーとの言葉を残して。それは70の齢のことであった。
ザイ(平民)に対する差別意識など現代の眼で見れば承服し難いところはあるが、明治から敗戦に至るあの時代に、これだけ強烈に自己の独立をかけて生き抜いた人がいたことに驚嘆。