感情タグBEST3
Posted by ブクログ
父親の苦悩と悲しみが波のように襲ってくるように感じた。
ひとことで言うと辛い、だろうか。
妻を病気で亡くした後、二人の息子を育てる私、というように父親のひとり語りで始まる。
父親の気持ちが切々と綴られていて、父親の視点でしか知り得ない物語だったが、ラストの父さんへというフスの手紙で胸を締めつけられた。
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父親の気持ちが痛いほど伝わり苦しくなる。息子とどう接したら良いのか分からない父親の葛藤、逡巡が手に取るように分かる。
子どもと一心同体の蜜月時期を過ごした経験のある者ならば、子どもが見知らぬ他人のように理解できない存在になってしまう哀しみ、寂しさに共感してしまう。
子どもが親の求める姿の許容範囲を越えた時、失望し言葉を失う、会話は途絶え、沈黙…けれど見捨てることなどできない。親だから、子どもだから。
その関係は哀しい、けれど愛しい。
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些細な出来事の連続の先は夜だった。
ささやかに生きてきた真面目で朴訥な男性が、病気で妻を失い優しい長男との関係が少しずつ狂っていく。
毎日が「あのときこうしていたら」「ああしたほうがよかった」の連続で生きている。どこに生まれ生きていてもそれは不変なのかも。
フランスは政治が日常生活に密着していますね。読み始めは面くらいました。
帯文は重松清さん、重松作品が好きな人に読んでもらって感想を聞いてみたいなぁ。
Posted by ブクログ
父親も長男も不器用でなんだか切なかった。ちょっとずつ道を逸れていった結果あんな大事になるなんて。みんながジルーやジェレミーのように生きられるわけじゃないから…
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読みごたえのある本。
幸せに暮らしていた四人家族が、母親が癌で亡くなってから、長男に変化が起こる。
3年の間、休みは母親の見舞いで過ごし、成績も下降し、苦労している父親に迷惑をかけないように、地域の短期大学に進学する。極右の仲間と付き合い、父親とも距離を置く。
ある日事件が起こる。彼が殺人を犯してしまう。
裁判、判決と、父親の心は揺れ動く。どうすれば良かったのか、どう子どもと向き合えばいいのか、父親の心理を詳細に描写している。
Posted by ブクログ
舞台はフランス北東部メス。
とある一家の父親の語りで進んでいく物語。
朴訥で不器用な父親の語りのせいか、小説ながら切実なノンフィクションの手記を読んでいるような感覚になる。
優しくて弟思いの長男フス(フスは愛称。本名はフレデリック)は、スポーツが好きな明るい子で、母親が病に倒れたときも、思春期の時期を犠牲にして家族をフォローし、家事を積極的にする、とてもいい子だった。
病に倒れた妻を見舞い、看取り、妻の死後どう子どもたちを食べさせていくかに必死で、家族のフォローにたち回ってきたフスに「ありがとう」の一つもいえなかったことに、父親は後悔の念を綴る。
そしてフスは高校に入ったころ、家族よりも友達とつるむようになってから、父親が支持する政党とは真逆のファシズム…極右の仲間たちとつるむようになった。
寡黙だった父親は、フスがつけているバンダナに、ケルト十字が描かれているのを見て、初めて声を荒げる。
そういった経緯を機に、父親はフスのことが許せなくなり、親子は話をしなくなっていく…
そして凄惨な事件が起こる…。フスが人を殺してしまったのだ。
読みながらどんどんつらくなっていった。
文章を読むだけでも、父親が憔悴していくところが痛々しい。
また父親と本当は仲良くいたいのだろうフスとの不器用な関係を見ていると、ますます見ていて胸が痛い。
完全な父親のみの視点から書かれているせいか、ところどころ展開が急なところがあって理解がしばし追いつかなくなることもあったが、そういった描写の仕方が生々しさに拍車をかけていた。
もっと話し合えていたら…あの時あんなことがなければ…数々の避けられていたらと思わざるをえない分岐点たち。
本書で父親が述べていたように、「すべてのひとの人生は一見、敷かれたレールの上をひたすら走っているように見えるが、実はアクシデントと偶然、そして反故にされた約束の積み重ね」なのだ。
フスとのコミュニケーションを避け続けた結果、父親視点で語られるこの物語は、どんどんフスがどういう考えになっていったのか、どんな人間になっていったのかがぼんやりとしていく。
…けれど、その分、最後の2ページは抱きしめたくなる。
フスもまた、優しすぎたのだろうか、不器用だったのだと思った。
なぜフスが極右とつるむことになったのかなど諸々は最後まではっきり分からないが、人生周りのどんな人が(自分自身でさえも)何に傾倒しどんな考えを持つに至り、どんな行動を起こすかはわからないので、そんなものだよなぁと思うところもある。
家族間でさえ、考え方が違うからこそ、距離を置きたい、置かねばならない時もある。
でも、逆に考え方が違うからこそ、時には分かりあう努力をする必要があるのだ、それにより事態が好転したり救われたりすることがあるのだと、本書を読んで思った。
本書は「夜の少年」というタイトルだが、原題は「どれほどの夜が必要か」であるらしい。
原題の由来を聞くと尚更この物語の重みが増してくる。
この物語のような出来事は、悲しいかな、少なからずよくあることだろう。
そう思うと、全ての"夜"に留まらざるをえない人たちに響く物語ではないかと思う。
Posted by ブクログ
大切に思っている人と会話する重要性について考えさせられる。私もこの父親と同じように、会話しないで済むならそうしないようにするからだ。
きつい結末でだった。
Posted by ブクログ
なかなか重い。
日本では政治信条で親子関係がこじれるとかあまりないことかとは思うけど、自分の子がファシズムとか曰く的な新興宗教に執心してたら、この父親と同じようにどう関わったらいいのか分からなくなるかもしれない。
じゃあ何が正解なのか。正解なんてないんだろうな。
子が大人になった時点で、それは子ども自身の問題だと割り切って考えられればいいのかな。無理だろうな。親ができるのはどこまでいっても子どもを守ることだけだろうな。
子どもが道を誤っていると感じたとき、暴行されたとき、何があっても味方だから、人を殺めることだけはやめようと言い切れるか。
ちゃんとできなくても、そこだけは子どもに言い続けられる人間でありたい。
Posted by ブクログ
フランス北東部の町に住む主人公は、国鉄に技術者として働いている。男の子2人の父親であるが、妻を癌で亡くした。左派の団体を支持し、息子のサッカーを見に行く平凡な日々だったが、高校生になった長男は右翼系の少年たちとつきあうようになり、家での口数も減った。兄弟の仲は良く、弟は兄を慕っている。弟は兄より勉強ができ、パリの進学校へと進む。父親と兄とのぎくしゃくした関係の続く中、兄が血まみれで帰宅する。仲間を殺してしまったのだ。
終始父親の目線で語られる。思春期を迎え、自分と違う価値観で進み始める息子。息子やその仲間の行動をSNSで追う姿が危うい。最後のページの獄中から父へ宛てた手紙で、読者は初めて息子の心中を知る。
重い話だった。一気に読ませる話なのだが、読後はしばらくモヤモヤが心に渦巻いていた。