あらすじ
応仁の乱から30年。世はまさに乱世。中国地方もまた、山口に大内義興が前将軍足利義尹を擁して上洛をねらい、出雲には老虎尼子経久が牙を光らせていた。その二大勢力の間に揺れる小国安芸の毛利家に生まれた元就。かりそめの平和は父弘元の死で終止符を打たれた。10歳のみなし児城主の運命は……。
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Posted by ブクログ
幼少期に父を亡くし、命を狙う家臣から見を守るため分家、兄が亡くなった折にはその嫡子、幸若丸を後見する立場となるが、その子も幼くして夭逝してしまう。
百万一心を掲げて家臣団の結束を強め、戦国の非道の中、理想を心に秘め日頃から思慮を尽くして生き抜いていく姿。
戦国の初期にこうした人物が出たことが、驚き。早くに両親と離れている上に、戦経験も無く初陣で華麗な勝利をおさめ、且つ理想やあるべき姿勢を見失わない。
大内義興や尼子経久といった強者には、こうした跡継ぎは生まれなかった。時代の流れ、また子孫の出来不出来とお家の繁栄が、この時代を形作っている。毛利家もまた、今後三本の矢がそれぞれどのような道を辿るのか、見ていきたい。
ひいてはそれが、輝元不出馬の関ヶ原に、大きな影響を及ぼすことになる。
Posted by ブクログ
山岡荘八は初読だが、なかなかおもしろい。
十歳にして父を失い、城主となった元就こと松寿丸。だが家臣の裏切りで領地を奪われる。兄も謀殺され、その嫡男も早世。聡明な元就は家臣団をまとめ「百万一心」を合い言葉に、宿敵武田元繁を滅ぼし、大内と尼子が二分する中国で着々と勢力をひろげる。
一巻は本家の家督を二十七歳にして正式に継ぐ。そして大内側に与して、尼子と対立するまでの四十代に。かなり駆け足気味で話がすすむ。
彼も井伊直弼とおなじく埋もれ木の人材だったのだろう。彼は決して最初から野心を抱いていたわけではなかったし、ただ戦国の世に安寧をもたらしたかった。
愚弟を失った悲劇が、あの三本の矢の伝説を生んだのだろう。