【感想・ネタバレ】失われた町のレビュー

あらすじ

ある日、突然にひとつの町から住人が消失した――三十年ごとに起きるといわれる、町の「消失」。不可解なこの現象は、悲しみを察知してさらにその範囲を広げていく。そのため、人々は悲しむことを禁じられ、失われた町の痕跡は国家によって抹消されていった……。残された者たちは何を想って「今」を生きるのか。消滅という理不尽な悲劇の中でも、決して失われることのない希望を描く傑作長編。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

失われた町

30年に一度、ある町の住民が突然失われるという現象に巻き込まれた人々の物語です。
「となり町戦争」と同様に、無機質で冷たい官僚機構の中に情緒ある物語が展開されるので、物語が引き立っています。
この物語には何人もの主人公がおり、それぞれの体験から町が失われるという現象に否応なく巻き込まれたり、進んで対峙したりしていきます。冒頭で次の消失を防ごうとする様子が大きなインパクトを持って語られますが、続く各章で、大円団に向かって収束していく主人公達の軌跡が丁寧に語られていきます。語られるにつれて登場人物同士の関わり合いがだんだんとわかってくるという構成はとてもわくわくしながら読むことができました。
主題は「思いの継承」でしょうか?町の消失という現象に立ち向かっていく間に多くの人が亡くなっていきます。それでも、そういった人々の思いを受け継ぎ、それを「生きる力」に変えていく。そういった繋がりによる明日への希望。とても、感銘をうけた竹蔵でした。

竹蔵

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2024年06月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「こんなに美しく、哀しい作品を書ける人がいるのか。」
これが読んでいる途中で何度も思った感想。実際電車の中で読んでいて何度も目を潤ませることになった。

人々に忌み嫌われながらも町の消滅を解明し、止めようとする人たちは、みな心に傷を負っていて、それでも自分の身を犠牲にしてでも消滅を止めようと奮闘する
登場する名前のある人物にはすべてに役割があって、ちょい役のようでも伏線のように後で効いてきたりする。そういう上手さもある。
悲壮な努力の結果は報われたのか、新たな問題を生み出したのかはわからないし、今回使えた手は次回使えない(消失した双子はいないし、属体のひびきはおそらく戻ってこられない。消滅耐性をもったのぞみも次回は高齢になってくるし、そもそも今回無事帰還できるのかも不明)。次につながるのかわからない方法だが、それまで無力だった人類からすれば大きな一歩でもある。”新しい方法”ではなく、理不尽な現象を克服しようとする人間の”努力”にスポットが当てられた作品だと思う。だから美しい。
作者は(名前から)女性だと思って買ったのだが、扉の部分で男性だと分かった。内容を読むと、確かに男性っぽい。

続編(?)があるらしいので、そのうち買って読んでみようと思う。

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2024年03月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

再読。連作短編集のような長編。各章に素敵なタイトルがついていて主人公となる人がそれぞれの章で入れ替わる。登場する女性が幼い女の子から年を重ねた女性までみんな魅力的。三崎さん女性を描くのがうまいんだよなあ。人の力ではどうしようもない喪失に立ち向かっていく勇気と人のつながりに、時に涙し癒された。『となり町戦争』でワードしか出てこなかった世界が緻密にに構築されていて、この世界が『コロヨシ』にもしっかりとつながっている。

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2018年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

30年に一度、どこかの町が丸ごと人ごと消滅するという世の中。
そして町に関することは忌み嫌われて差別されるという・・
そんな町に関わる人たち同士の出会い、交錯する想い。
いろんな人たちが最終的につながっていき、この人とこの人が・・!という仕掛けがとてもよかった。

0
2017年07月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

独特の世界観だけれど、細かく設定されていて説得力がある。
初めは理解できなくても後から繋がってくるので引き込まれる。
消滅に直接立ち向かう人も、それを支える人も、意思がとても強い。
その一方で、自分が失われると分かっているのに何もできない、月ヶ瀬など「失われる町」の住人や管理局職員のやるせなさはいかばかりかと思う。
いつ自分の元にかえってきてくれるのか分からない人を、傷つきながらも待ち続ける茜や勇治の姿は切なかったが、それだけ人を信じて待てるのは素敵なことだと感じた。
統監と中西さんが本体と別体の関係だったとは、最後まで驚かされた。

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2018年12月16日

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