あらすじ
昔はなかった日本独自の“てんまる”。なくてもすんでいたのになぜ? 紆余曲折を経て採用することになった理由と歴史的背景を探る。「ここではきものをぬいでください」。こう書かれた文章があったら、「履物」か「着物」か、どちらの意味か迷うだろう。短い文でも読点がないと、このように意味をとりづらい。句読点の目的は、コミュニケーションの大基本「正しく伝えるため」だったのである。日本では奈良時代から、一部でさまざまな句読点らしきものはあったが、いまの形になったのは明治時代。江戸時代後半、当時の学者たちによって、ヨーロッパのパンクチュエーション(記号)と「てんまる」が比較されたことが基盤を作ったといえる。この時こそ、日本語が近代化する革命的ターニングポイントだったのだ!
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Posted by ブクログ
過去の小説や憲法の条文、果ては漫画の吹き出しにまで目を向けて「てん」と「まる」の使われ方やその背景に目を向けた一冊。小説の例はその作家の文体と関わるのでなかなか深入りが難しい。面白かったのは、漫画の世界では小学館の少年向け漫画以外、吹き出しにてんもまるもつけないのが業界の常識だという事。これは知らなかった。
Posted by ブクログ
<目次>
はじめに
第1章 本の読み方と「てんまる」の関係
第2章 「てんまる」は、いつから始まったか
第3章 明治時代以降の「てんまる」
第4章 現代文学の「てんまる」
第5章 マンガの「てんまる」
<内容>
山口先生の着目点が好きである。「ん」について追及したり…。今回は「てんまる」=「、。」である。まず結論的に言うと、「てんまる」を付ける際のルールはない。文科省も「読点は、意味と音調の両面から判断して打つ」と書かれているそうで(「おわりに」参照)、江戸時代までは、ルールすらなかった。幕末から明治の国学者、権田直助が研究の嚆矢で、その後も人によって定義も使い方もまちまちだし、作家本人の直筆にはない「てんまる」が、活字になるとつけられる、というように、誰が決めているのか、使っているのかもあいまいなのだ。
最終章の「マンガ」についても面白かった。小学館の少年・青年マンガのみが、「てんまる」をつけているらしい。でもその根拠はあいまい(かつて学年雑誌を出していたから?)。