【感想・ネタバレ】神、この人間的なもののレビュー

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神を否定する本、ではない

2013年12月04日

タイトルから勘違いしがちですが、神の実在を否定することがこの本の目的だというわけではありません。「神がいるのかいないのか」を問う内容ではなく、むしろ「神」なるものをめぐる人間の営みに目を向けています。

現代日本ではともすれば「うさんくさい」「古い」などといった偏見の目で見られがちな宗教というも...続きを読むのを、人間くさく、いじらしく、またいかなる宗教の枠組みも超えて誰にでもある営みとしてとらえ直すことができます。

形式については、著者のなだいなださんの得意技ですが、対話形式をとっているので、話に沿って自分も考えながら読み進めていくことができます。同一著者による「権威と権力」「民族という名の宗教」も併読すると、人間という存在について更に考えが深まるでしょう。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年09月10日

長らく日本人が抱く、宗教に対する答えが載る本書は、宗教を純粋に分析したい人におすすめの1冊。

なぜ人は宗教に惹かれるのか?

宗教の起源とは?

今の宗教は教祖たちからはどう見えるのか?

そもそも宗教とは?

宗教に関するありとあらゆる疑問を2人の人物が対談形式で語っていく。

めっちゃ面白いで...続きを読むす。

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Posted by ブクログ 2015年12月17日

おそらく、彼の遺したあらゆる著書の中で、これが、一番やっかいで、また彼の人生と言ってもいいかもしれない。
宗教の歴史的経緯とか位置づけとかはそんなもの学者に任せておけばいい。そんなことよりも、宗教はなぜ必要とされてきたのか。宗教を望むひとの精神、これは一体なんだ。神がいるいないとかの不毛なことを考え...続きを読むているのではない。神を望むのも、神を維持するのも、ひとえに同じ人間の心性だ。これ以上でもこれ以下でもない。ならば、ひとの精神に向かって生きてきた自分がこの心性を考えなければ誰が考える。
このことを考えるのはかなり骨を折ったに違いない。正常・異常など、ただのことばにすぎない。ということは、自分が正常だとも異常だとも言えてしまう。自分の生がオセロのように簡単にひっくり返されてしまう。そんな可能性をはらみながら、宗教を考えていくと、どうもその始祖たちも同じところに行き着いたように思える。始祖たちの成し遂げた革命は、対立を超えた統一、ヘーゲルなら弁証法と呼んだそれだった。
そこから2000年あまりが経った。始祖たちの思惑を外れ、世界は再び対立の中に後退していった。ひとの精神がこれを起こしてしまったのなら、再び統一に向かうのもひとの精神だ。精神医療は、そこに向かっていってほしい。人生の終わりにあたって彼が託した希望と言っていいだろうか。
ひとは何かを信ぜずにはいられない。信仰のない、というのを考えることはどうも無理なようにできている。そんなことに気付くとき、何を信じるかで争うのはなんと不毛なことか。始祖たちの出発点が見えてくる。原理ではなく、この原点へ。それはすべてのひとに開かれている。慣習を捨てた先に待っていたのは、なんとずっと変わることのないこの慣習だった。

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Posted by ブクログ 2015年08月13日

結局のところ、人間は、宗教をはじめとして、信じる対象がほしいだけなのかもしれませんね。
そして、教団をはじめとする組織は、大きくなることが目的になるような気がします。

「キリストはキリスト教を知らない」という視点は、考えてみれば当たり前なんですが、この本で初めて気づかされました。
また、3大...続きを読む宗教の教祖の弟子は、弟子から抜け出せなかったこと、さらには、宗教の経典化による、本来の宗教の意味(教祖の意図)の曲解など、宗教について「なるほど」と思えることがてんこ盛りでした。
一神教における神や悪魔の設定も、すごく納得できました。

平易な文章でありながら、深みのある考察を堪能できるいい本だと思います。

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Posted by ブクログ 2014年07月11日

宗教色の強い国に住んでいて、すごく宗教に関して悩んでいた時期がありました。友人にすすめられ、読んだのですが「しっくりきた」1冊です。
予言者が心を穏やかにしてくれる存在だったかもしれない、という答えがすごくユーモアがありました。
対談形式なので、凄く読みやすかったです。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

三大宗教の教祖は元々精神の病気を治す呪術家で、現代の精神科医と類似してるんだって。教祖たちは2000年早すぎたって言うのは面白い意見だなぁ。。って。

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Posted by ブクログ 2022年08月23日

孤独をおそれるのは群れるため。
群れるのは生命をつなぐため。
だから人間は、集団に所属することで、安心するようつくられているのだと思う。
その欲求を満たしてくれるのが宗教であって、形を変えながら、ずっと人間ととともにあるのかな、なんてことを考えた。

不幸なことは、属するグループが小さいほど所属意識...続きを読むが強まることだ、といった一文があった。とても共感した。
もし逆に大きければ大きいほど強まるのなら、もしかすると戦争はなかったのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2017年01月14日

著者はこの本を恥知らずな老人の狂気と言っているが、普遍的でわかりやすく、多くの人々に伝わるべき宗教に対する考察である。

科学によって神は殺されたが(自分は同意しないが)、宗教はこれからも生き続ける。人々に必要とされ続ける。
その新たな担い手が心理学になりつつある。
、と。

これがボケ老人の狂気か...続きを読む

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Posted by ブクログ 2014年07月26日

宗教とは何か?という問いはさまざまな人が考えたことがある内容であろう.著者は宗教の根源は何か,ということから論を進める.特に,キリスト等の教祖が現れる前,教祖がいた時代,そして教祖の死後,について,人間集団(教団)がどのように動いたかを予想している.

キリストはキリスト教の教義を知っているか?とか...続きを読む,意外な問いかけがちょこちょこ書いてありこれも面白い.

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Posted by ブクログ 2012年05月14日

宗教の役割についてわかりやすくまとめられていた気がする。
宗教ってだけで拒絶反応を示す人が多い昨今、もっと読まれればいいなぁと。

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Posted by ブクログ 2011年07月18日

かつての精神科の同僚だったカトリック信者と無神論者が、齢70を過ぎて、宗教とは何か、神とは何かを語り合う。

精神科医同士の会話という設定だけあって、切り口がかなり精神医療的。キリストやブッダ、マホメットなど、世界宗教の始祖と呼ばれる人々は優れた精神療法医だった、という大胆な(なださんの他にも、こう...続きを読むいう説を展開している人がいるのかどうかは知らないが・・・)仮説から展開される二人の会話は、読んでいると「なるほど」と思えて、確かに理屈に適っているように思った。

読んでいていちいち納得することが多く、今ではきちんと確立されていることや、すっかり凝り固まった認識も、最初は手探りから始まって、だんだんと現在のような形になっていったんだな、と考え直すきっかけにもなる良書。
しかし、ある程度宗教に対する知識というか視野がないと、話の筋をつかみにくいところがある。とてもわかりやすい本なのだが、宗教を理解している人ほど面白く読める本だと思う。

私が特になるほどと思ったのは、「大事なのは宗教の教えに沿って考えることではなく、宗教の始祖ならどうするかというつもりで考えること」というくだり。
今現在に残っている「教え」は、始祖たちが実際に書き残したものではない。弟子たちや後世の人々が編集したものである。よって、始祖たちが実際に言ったこと、行ったことは矛盾が生じるのは当たり前である。
宗教の始祖たちが一般の民衆に伝えようとしたのは、それら残された言葉などではなく、その言葉が伝えようとした「意味」なのだから、それらの言葉に囚われすぎている今の宗教が、窮屈で貧相なものになってしまうのも当然といえば当然だという気になってくる。
大事なのは、何か「絶対」だと思うものを勝手に作り上げて、それにすがり切ってきまわないこと。自分の頭できちんと考え、自分の行動に責任を持つこと。
でも、これが難しい。だからこそ、宗教もこれほど広まったし、必要とされたんだろうな。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2011年05月10日

[ 内容 ]
大学時代の友人で精神科医となった二人が「人生を生きてきた末」に、かつて交わした議論を再開する。
神は本当にいるのか?
現代を新しい形の宗教に呪縛された時代と見ながら、教義や信仰のあり方からではなく、「信じる」ことを求めてしまう人間の方から、宗教とは何かを考えていく。
精神医療から社会、...続きを読む歴史まで問いを重ねる対話篇。

[ 目次 ]
序章 Tの訪問
第1章 信者にもいろいろある
第2章 教義より重要なのは
第3章 宗教は集団精神療法だったか
第4章 二千年の後退り?
第5章 後退りの結果
第6章 狂いによって狂いを治す
第7章 精神医療という宗教
第8章 宗教は死なず拡散した
第9章 葦の髄から永遠をのぞく-狂気と習慣

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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Posted by ブクログ 2009年10月07日

何十年ぶりかに再会した著者と友人の精神科医二人が、
若い頃にしていた「神は存在するか」という議論の続きを70才を超えた今再開したらどういう答えになるのかという、その対話。

って書くとすごく堅いのだけど、実際は文体も軽くてとても読みやすいし、
キリストやブッダを人間として精神科医の視点で分析している...続きを読むのもとても新鮮だし、

他の人のレビューを見ると結論が弱いという指摘もあり、うなづけなくもないですが
それ以上に
自分の考えがひっくりかえるようなびっくりすることが沢山つまっていました。

何をもって狂っているといい、何をもって正常だというのか、とか


宗教とか何か気になるっていう人も、別に全然そうじゃないひとにも、すごくおすすめです。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

かつての精神科医の同僚T(カトリック)と宗教について、対話方式で語っている。著者は、無神論という立場で読者と同じレベルの意識に立っている。Tとの話を通じて、宗教への思いこみが解き放たれていく。?宗教を信じていると同種類のレベルの信仰を持っているとおもいがちだが、入信理由や信仰の度合いは違っている。?...続きを読む3大始祖であるイエス、ブッダ、モハマドは、それぞれ優れた人間のリーダであり、それを神聖化したのは、後の弟子たちであった。?集団の狂気の存在への気づき。日本の戦争時の国民の精神状態は、狂気といえる。オウムとかなり似た状態であった。集団となりあるイデオロギーをもった状態=宗教と同様の効用を持っている。

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Posted by ブクログ 2013年01月11日

自分を天皇だと信じている、ある精神病患者の話が特に心に残った。
否、本当に彼がそうなのかもしれない。
それにしても、宗教と人間というのは切っても切り離せないものらしい。

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Posted by ブクログ 2017年12月23日

対話形式で、宗教とは何かという問いを考察している本です。

著者を思わせる無神論者のB氏が、学生時代の友人でカトリックに入信したT氏の訪問を受けて、神や宗教について語りあうという形式で議論が進められています。

T氏は、結核にかかり死の恐怖に直面したとき、溺れる者が藁をつかむように、カトリックに入信...続きを読むしたのだといいます。そのときT氏が頼ろうとしたのは、神についての宗教理論ではなく「人」でした。「人」が彼を信仰の道へと導いたのです。

そして二人は、仏教、キリスト教、イスラム教をとりあげて、それぞれの教祖たちが「人」として信者の支えとなっていったこと、しかしその後、弟子たちが教祖をまつりあげることで当初の信仰のかたちに変化が生じたことなどが語られ、さらに無神論が蔓延する現代では、精神科医が人びとの病気を判断することが、かつて宗教が果たしていた役割を引き継いでいるという考えが示されます。

信仰をもたない立場から、人間にとって宗教とは何かを考察した本だといえるように思います。興味深く読めましたが、信仰をもつ人びとにとっては、本書の問いそのものが倒錯しているように受け取られるのではないかという気もします。

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