【感想・ネタバレ】ななつのこのレビュー

あらすじ

ファンレターとラブレターは、勢いで出すに限るのだ。――短大に通う十九歳の入江駒子は『ななつのこ』という本を衝動買いし、読了後すぐに作者へファンレターを書こうと思い立つ。先ごろ身辺を騒がせた〈スイカジュース事件〉をまじえて長い手紙を綴ったところ、思いがけなく「お手紙、楽しく拝読致しました」との返事が。さらには、件(くだん)の事件に対する、想像という名の“解決編”が添えられていた! 駒子が語る折節の出来事に打てば響くような絵解きを披露する作家佐伯綾乃、二人の文通めいたやりとりは次第に回を重ねて……。伸びやかな筆致で描かれた、第三回鮎川哲也賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

再読になる。もうずいぶん前に読んだ本だったので、記憶を新たにするために読んだ。
入江駒子という短大生が児童書(と思われる)連作短編「ななつのこ」の熱狂的?ファンになり、著者の佐伯綾乃にファンレターを出す。そのファンレターの内容が「ななつのこ」の短編の感想だけでなく、その短編から連想した日常の話で、そこにある日常の謎、駒子にとっては謎とも気づいてないような謎がファンレターの返信によって解き明かされるという話。

「スイカジュースの涙」
道に点々と続く血痕と短大同期のお嬢様 愛ちゃんの家の愛犬行方不明の話。

「モヤイの鼠」
尾崎炎という著名な画家の絵がすり替えられたのか?という話。

「一枚の写真」
駒子の元に届いた一枚の写真。長らくアルバムの中で空白になっていた所にあった写真だった。それが引っ越して高校を中退し、今は子どももいるというかつての同級生から送られてきたものだった、という話。

「バス・ストップで」
瀬尾登場。米軍基地のそばで妙な行動をとるおばあさんの話。

「一万二千年後のヴェガ」
ブロントサウルスのアドバルーンが飛んでいく話。

「白いタンポポ」
小学生のキャンプに手伝いとして参加した駒子と集団になじめない真雪ちゃんとの交流の話。

「ななつのこ」
「ななつのこ」のイラストレーター麻生さんとの再会、真雪ちゃんとの再会、そして瀬尾の正体判明の話。


今はもうLINEやメールなどで、本当に手紙を書く、ことはめっきり少なくなってしまった。しかし手紙の良さを実感することもある。手紙形式の小説は本当にするすると読める。姫野カオルコ「ラブレター」(今は改題されて「終業式」というらしい)
も凄くするすると読めた覚えがある。人との問答というのは理解を深める上でもいいんじゃないか、というのはソクラテスの産婆法でも言われていること、と言ってもいいのだろうか。自信はない。

印象に残ったエピソード
「モヤイの鼠」で書かれていた駒子の高校時代の友人、たまちゃんと一緒に入っていた美術部の話。駒子は絵が上手ではなく、顧問の先生に手を入れられる。その絵は良くなるのだが、まるで自分の絵ではなくなってしまうように感じる。たまちゃんは絵が好きで上手。そして顧問の先生が手を入れることをたまちゃんははっきりと拒むのだ。
私も小学生の自画像で先生に手を入れられた。まるでそれが当たり前かのように。良くなるのに、何が悪い、というように。あのときに感じたモヤモヤと同じものを、ここで感じた。

「白いタンポポ」で書かれていた進藤先生の言い分。駒子が真雪ちゃんのそばにいることで進藤先生は自信をなくすように見える。「気持ちがわかる」と言われて、心にしみ入ることもあれば、「ふざけんな、お前に何がわかる!」と思うときと両方あることを思い出す。そして西の生まれながら、いつか見たいと図鑑で焦がれていた「シロバナタンポポ」を東京で見たときの感動。

再読して、よかった。

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2024年04月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人が死なないミステリーもあっていいじゃないか。

この作品のような小説に出会う度、思う。

しかもこの小説は二段構え。

この小説の中にはさらに『ななつのこ』という別ストーリーがパラレルに展開していて、これがまた懐かしさを誘う。

以下、駒子の日常の方の「ななつのこ」各短編の概要で、特に僕が気に入っているのは⑥。そして、③、④も好み。②は衝動的に目の前の女の子の三つ編みを引っ張ってしまった40年以上前の苦い記憶を思い出させてくれるなぁ。ああ、胸が痛い。

小説として、全体の構成が素晴らしい。

①スイカジュースの涙
ベビーカーとすれ違ったあとに気づいた、道路に点々と続く乾き切らない血痕。
②モヤイの鼠
個展会場で絵画『悠久の時間』の出っ張りに触れたとたん、ポロリ。・・ああ、痛い。
③一枚の写真
6年の時のクラスメイト一美が8年近く経って、私のアルバムから取った一枚の写真を返してきた。
④バス・ストップで
ささやかなロマンスの香りを孕みつつ、おばあさんとお孫さんの心温まるレジスタンス。
⑤一万二千年後のヴェガ
デパート屋上の巨大なブロントサウルス、一夜明けたら30km離れた保育園にいて・・・。
⑥白いタンポポ
低学年のサマーキャンプで真雪の担当となった駒子。人見知りの真雪が不愉快でなかったのは。
⑦ななつのこ
再会した真雪がプラネタリウムが終わると消えていて・・・。
○追伸
駒子のファンレターの相手、〈佐伯綾乃〉の秘密が分かってからの後日談。

またも、フォロワーさんの本棚・感想にあった一冊にこの一週間、堪能させられた感じ。

次は何とか、自力で一冊、面白い作品を嗅ぎ当てたいもの。

兎にも角にも、ありがとうございました。

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2021年12月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

加納さん2冊目。相当凄い本だと思うが、完全には理解できておらず、少しモヤモヤ感が残りました。この物語は2つが並行している。それがいつの間にかミックスされる。①で今の「私」と手紙の相手「佐伯綾乃」とのやり取りで解決していく話しと、②では「ななつのこ」の童話の「はやて」と「あやめ」。②のノスタルジックな雰囲気がなんとも古風で純朴な2人だった。最後に①との共通の登場人物となるが、そこにも仕掛け。この高級感は凄まじいい!①で起きるミステリーの解決が鮮やかで、ステレオタイプだけでは語れない優雅さと気品を感じた。⑤↑

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2021年04月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

再読。

日常の謎と「ななつのこ」の謎、最終的に帰着する結末と見事で気持ちの良い作品、と思っていたが読み返すとそうそう爽やかなだけのものではなかった。それを差し引いても面白い一冊です。6話目の心理描写の細やかさが好き


再読して気になったところ

1話目の犬の扱いが酷くて引いた。作中内の登場人物は誰も犬の事故死を悼まないうえに生ゴミの日に捨てられる。そしてひき逃げ犯は口を拭って飼い主の伝手で就職するのであろう…黒いなー。

3話目の秘密の花園は絵的にとてもきれいだけど、孫を巻き込むな…と思ったり。いやさ、この優しい世界にはそんな人は存在しないんだろうけど、もし金網の向こうの誰かに見咎められて孫子まとめて叱られたりしたらトラウマになるんじゃないかと要らん心配を。

5話目のアドバルーンを切り離す動機がいまいち謎。結果オーライではあるんだけど。監視カメラが今ほど発達している時代じゃないから成り立ったんだろうな。アドバルーンそれ自体それなりに値段もするものだし、万一電線やなにか高所作業中のものにぶち当たったら…と思うと飛ばしたいから飛ばした、となんかあまりに無計画で、メルヘンで素敵だなーとそのままには受け止めがたい。

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2025年01月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『ななつのこ』という本と、駒子に起こった出来事がうまくリンクしていて、なおかつ『ななつのこ』の作者が手紙でその謎を解いてみせるという構成が面白い。
数十年ぶりに読んで、これがデビュー作だということに唸らされたが、北村薫の『空飛ぶ馬』へのリスペクトが溢れすぎていると感じてそこは気になる。

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2024年08月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

スイカジュースの涙
愛ちゃん
私の友達。『キャンパスのお嬢』として、仲間内で知られている。好奇心旺盛。

はやて

あやめさん

佐伯綾乃

吉田動物病院の院長先生

足立硝子店の社長

由香
吉田の娘。


モヤイの鼠
イリゴマ
入江駒子。

たまちゃん
紀美子。

はやて

直人

あやめさん

尾崎炎
画家。

麻生美也子


一枚の写真
駒ちゃん

ふみさん

はやて

あやめさん

直人

一郎

秋彦

橋本一美

佐伯綾乃


バス・ストップで
駒ちゃん

愛ちゃん

たまちゃん

老婦人

ちいちゃん

はやて

あやめさん


一万二千年後のヴェガ
瀬尾

入江

はやて

あやめさん


白いタンポポ
あやめさん

まゆちゃん
真雪。

ふみさん

駒ちゃん

小西先生

進藤先生


ななつのこ
和尚さん

はやて

シロ
和尚さんが飼っている猫。七匹の子猫を産んだ。

あやめさん

駒ちゃん

瀬尾

麻生美也子

真雪
美也子の娘。

ふみさん


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2025年08月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ふとしたことで出会った本が、ずっと忘れられない一冊になることがある。 駒子は、あんまり好きじゃないけど、主人公にはぴったりな、良くも悪くもフツーの大学生。 児童文学と青少年文学の間みたいな 『ななつのこ』と日常で遭遇する謎は、羨ましいほど駒子の世界を広げていく。 作家さんと文通ができるなんて、なんてラッキーなことだろう。謎に無理はないけど、物語にはちょっと唐突さがあるなって思っていたら、青年が答えを加えていたことがわかって、それは姉への想いなのかなと思う。ならよし、と思ってしまった。

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2022年10月08日

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