あらすじ
書物が駆逐される世界。旅を続ける英国人少年・クリスは、検閲官に追われるユユと名乗る少女と出会う。彼女と共に追い詰められたクリスの前に、彼を救うべく少年検閲官・エノが現れる。三人は、少女が追われる原因である宝石の形をした『ミステリ』の結晶『小道具(ガジェット)』をいち早く回収すべく、オルゴール職人たちが住む海墟の洋館に向かったが……。そこで三人を待ち受けていたのは、職人たちを襲う連続不可能殺人だった! 先に到着していたもう一人の少年検閲官・カルテの支配下に置かれた場所で、三人は犯人を突き止めるべく、トリックの解明に挑む。著者渾身の力作!/解説=福井健太
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Posted by ブクログ
世界観とそこに出てくるキャラクターとミステリのトリックと、要素の全てが最高のバランスで配置されていて、やはり傑作ですね。(単行本が出た当時既に大感動してその時にも感想をまとめましたが、ようやくの文庫化で再読して再確認した次第)
Posted by ブクログ
焚書によるディストピア風のファンタジーで旅をする少年クリスが謎の少女ユユと出会い、さらには前作の事件で知り合った少年検閲官・エノとも再開を果たし、海上に建つオルゴール職人達が住む『カリヨン邸』に隠されているというガジェットの捜索と、洋館の住人を襲う連続不可能殺人に巻き込まれ、その謎を解明していく、特殊設定×館×クローズドサークル×不可能犯罪というミステリー好きには堪らない魅力のオンパレードかつ滅び行く世界で少年少女が自分の進むべき道を模索していく姿も引き込まれるものだった。ラストの畳み掛けは心底驚かされるものだった。間違いなく著者の最高傑作の一つ。
Posted by ブクログ
プロローグにあたる「序奏 月光の渚で君を」読んだだけで、一つの短編を読み終えたかのように、ちょっと間を置いて余韻に浸ってしまいました。
同じ著者の「ギロチン城」のプロローグ「首狩り人形」を読んだ時のような衝撃でした。
そして本編、「うんうん、これぞ北山作品やんな」と期待を裏切らない世界観とストーリー、そして蠱惑的な謎の数々とそれを可能にする物理トリック(偉そうに言ってるけど、全く謎は解けませんでしたが…)。
読み終わって思ったのは「ちょっとマイクル・コーニイ入ってるかも」でした。
決して多作ではないけど、新作が出るたび、もとい文庫化されるたびに買ってしまう北山猛邦さん、もっともっと作品を読みたいですね。
Posted by ブクログ
読む順番は恐らく違ったのだろうが、北山ミステリは初読みだ。叙述トリックのものは読んでいたが、ここまでの物理トリック。説明的なのに説明だけでは終わらない、雰囲気や温度感、空気感も大事に描かれていた。
何より少しずつ小さな不明点を明らかにすることで、1番大きな伏線を回収することへ繋がる。残った人たちの推理が、その人の都合で解釈されていく中、もっとも冷静で冷酷な答えに導かれる。歯車が噛み合ってしまった無念さも、オルゴールの世界観と同期されている気がした。
順番は違ったのだろうが、1作目に選んで正解だったと思う。解説にもとても作者への愛を感じることができた。少年検閲官や、他の作品も読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
傑作です。
ミステリの面白さが詰まった作品であり、なぜこのトリックを使用したかの答え、序奏の幻想的で儚げな物語、散りばめられたガジェットなどなどめちゃくちゃミステリ的な面白さ。よかった。
Posted by ブクログ
厚さが嬉しくなるほど夢中で読んでしまった。
二転、三転。
そして途中で気づいて
嫌だ、嫌だと思うも
1番苦しく切ない真実を突きつけられた。
それなのに物語の美しさに
まるでハッピーエンドかのような錯覚を覚える。
クリスの冒険の続きを読みたい。
けれどこれ以上のものが生まれるのだろうか。
ちなみにカルテの『足枷』はなんだろう。
高さが怖い、とかかな??
それなら先輩のために頑張ってビルに登ったのはとてもかわいい。
Posted by ブクログ
作中の検閲官は中世の異端審問官とゲシュタポを混ぜたような連中で、存在そのものが「悪」と切って捨てたくもなるのだが、それでも彼らの、人殺しの話を何故読んだり書いたりするのか、という問いは、ミステリ読者として見過ごしにはできないだろう。この問いに少なくとも「人殺しの話が好きだからではない」と作品そのもので返答しているように思えることを、まずは讃えたい。ミステリとしてはこれでもかの物理トリックが、別の途方もない仕掛けの伏線であることに感嘆。素晴らしい。