あらすじ
青春は、気まずさでできた密室だ。今、最注目の若手ミステリー作家が贈る珠玉の短編集。始発の電車で遭遇したのは普段あまり話さない女子。二人は互いに早起きの理由を探り始め……(表題作)。部活の引退日、男同士で観覧車に乗り込んだ先輩と後輩。後輩には何か目的があるようだが(「夢の国には観覧車がない」)。不器用な高校生たちの関係が小さな謎と会話を通じて少しずつ変わってゆく。ワンシチュエーション(場面転換なし)&リアルタイムで進行する五つの青春密室劇。登場人物総出演、読んでのお楽しみのエピローグ付き。
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Posted by ブクログ
青春ミステリ。密室。早朝始発。殺風景。アリバイ作り。友人のため。メロンソーダ。緑色。クラT。
観覧車。夢の国。眺め。猫。3月4日、午後2時半。卒業式の後。学校。逃げ場のない密室。
エピローグがほっこりする。
Posted by ブクログ
青崎友吾を読むのも3冊目。現状この本が一番好み。
5つの短編に直接の関係性はないけど、同じ時間軸、近隣で起こっている日常(でいいんかな?冒頭作)ミステリー。ミステリーとして謎解きはしっかり構築されているのはさすがだが、その謎が解けた結果、開けて見える光景が素晴らしい。ええなぁ、青春!
筋が通っていくスッキリ感だけではなく、そっから読者の気持ちをどう揺さぶっていくか、まで含めて伏線回収という贅沢を味わってしまったら、そこらのミステリー短編が楽しめなくなるぞ、困った。
Posted by ブクログ
ワンシチュエーションの日常の謎を描いた短編集。表題作「早朝始発の殺風景」はたまたま始発に乗り合わせた同じクラスメイトの男女がその目的を互いに探っていく話で、今回の中で個人的には一番お気に入りの短編だった。駅の乗り口や会話の端々のわずかな違和感。そしてLINEのやり取りなど、手掛かりはあくまで電車の車中で手に入るものに限定されており、その真相はどちらも予想外で面白かった。男の方の「部活メンバーの不法侵入という暴走から身を守るためのアリバイ作り」という真相に反して、女の側の「襲われた友人への復讐」という真相の重さがとてもよく、この釣り合いの取れなさと早朝という爽やかな朝に相応しくないビターかつ苦いオチなのが素晴らしい。スマホを覗いた時の料理メモが復讐のメモというオチのブラックさもよく、話の落とし方も含めて傑作だと思う。
「メロンソーダ・ファクトリー」はクラスTシャツのデザインへの賛同を前提としたやり取りが裏切られたことによる女子3人のギクシャクをミステリに落とし込む手腕が面白く、色覚異常という真相自体は読めたものの、日常に上手く謎が紛れ込むと同時に、本来賛同してくれるはずの友人が拒絶するという、思春期にありがちな喧嘩を土台としてるのが青春ミステリっぽくてよかった。
「夢の国には観覧車はない」は観覧車の中という動く密室での先輩後輩という男二人の談義から、先輩の失恋へとシームレスに繋げる手腕が面白く「失恋を気づかせるため」という動機がいい。
「捨て猫と兄妹喧嘩」は青春ミステリに欠かせない離婚家庭という家庭環境の変化と捨てられた猫がダイレクトに結びつき、オチは読みやすいものの捨てられた猫をきっかけに別れた兄妹が再び一緒になるという落とし所はよかった。
「三月四日、午後二時半の密室」は青春そのものが気まずさでできた密室だという名言を残しただけでも価値のある一本であり、クラスに馴染まない、一見超然としてて孤高の女子でも、一皮剥けば他の普通の女子と変わりがないというオチが素晴らしかった。若干百合めいた関係性の短編でもありながら、真相が姉と部屋を交換してカッコつけたかっただけというカワイイ真相なのもとてもいい。
総じてどの短編も読みやすく、日常の謎の入門短編集として優れた一冊であると思う。
高校生たちのありそうでなさそうな空気感が懐かしく、ミステリー要素もあり、おもしろかった!
エピローグで各々のその後が見れたのもよかった!