あらすじ
昭和38年、高度成長に沸く日本国中が震撼した連続殺人事件。言葉巧みに人を騙し、殺し、日本列島を縦断しながら犯罪を重ねる男に対し、警察は史上初の全国一斉捜査を開始した。関係した女、目撃情報は多数あり、立ち回り先の遺留品や人をおちょくったハガキ……証拠の山を残しつつ、空前の捜査網をかいくぐり続けられたわけは? 78日間に及ぶ逃亡、10歳の少女が正体を見破るという予想外の逮捕劇、そして死刑執行まで、実話を元に克明に描く傑作長篇。直木賞受賞作。
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Posted by ブクログ
ずーっと昔に観た映画も凄かったが、原作も期待に違わず圧倒されました。まったく無駄のない文体が、迫真性を際立たせています。一気に死に追いやる残忍さと、いともたやすく人を欺く知能犯ぶりが一人の人間のうちに同居する、化け物のような犯罪人榎津の恐ろしさが伝わってきました。実際に起こった事件をもとに作られたのですが、本当に「事実は小説より奇なり」ですね。
Posted by ブクログ
昭和38年の連続強盗殺人事件を描いた直木賞受賞作。
福岡市で男性二人が惨殺された強盗殺人から、玉名市で少女に見破られるまで78日間の逃亡劇が、親類縁者・友人知人・同僚や目撃者と捜査関係者の証言・資料をつないで綿密に描き出された大作。全国津々浦々で多くの人を欺き続けた大胆な逃亡生活は驚愕に値する。犯行の性質上、また綿密な足跡調査のために事件関係者としての登場人物が多く、誰の話なのか、誰の主観なのか追いづらく、読みやすくはなかった。でも著者の主観や不要な感傷に邪魔されることもなく、過不足なく描かれた事件の全容と、証言・資料をもとにした各関係者の心境描写はバランスが小説として秀逸。