あらすじ
「だって、私たちって、家畜じゃない」(「変半身」)「僕たちの身体には奇跡が眠っているんだ」(「満潮」)――若者が贄となる孤島の秘祭「モドリ」の驚愕の真相から恐るべき世界の秘密が明かされる「変半身」、「潮を吹きたい」という夫に寄り添う妻がふたりで性の変容を探求する「満潮」、ニンゲンの宿命と可能性を追究して未知の世界を拓く村田ワールドの最新の到達点を見よ!
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Posted by ブクログ
変な島の信仰から逃れたと思ったら、その信仰は全て作り物だった。でも、作り物の信仰と分かっててもそれに縋り付く村人に耐えられず主人公は脱走。と思ったら、また島と主人公は新たな文化を信仰するようになる…
人って、集団で信じることのできる当たり前の世界がないと自我を保てないのかもと思った。村田沙耶香ワールドでよくあるテーマだけど、やっぱり面白い
Posted by ブクログ
「ポーポー」で半ページ埋まった部分見た時は、恐れと驚きで一瞬ゾッとしたけど、その後は可笑しくて笑ってしまった。
読んで、人や歴史は創られるんだなーって思った。「想像の共同体」を思い出した。
これまで信仰してた人間教を脱し、言語を創造し、歴史と人の認識を刷新し、新しいポーポー物語を島の人々に強制することで、人々は自らをポーポーという同じ世界を共有する同族だと信じるようになった。
村田さんは現実世界における、人々の無意識や、社会の当たり前を、小説を通して言葉を与える事で描くことが本当に上手いなと思う。小説の内容は気味が悪いと思われがちだけど、リアルと地続きなフィクションを描く、村田ワールドは結構好き。
Posted by ブクログ
すごく嫌。気持ち悪い。なにが本当に嫌って、現実にもあるところ。
「若くて何も知らない女とセックスしたい男」「それとグルになってる大多数の男」「それらを許すのがいい女だという風潮(それらに加担する女)」全部(本ではなく現実が)キモい。
ファンタジーかな、いや他の作品からしてイマジナリーなものなんだろうな、からの現実を突きつけてくるのが嫌すぎる。
儀式のネタバレする所、現実の女性がフェミニズムを知る所みたい。今までちょっと違和感を抱きつつも「そういうもの」だと信じて疑わなかったけど、大人(ある時)になっておかしい事だったんだって知ってしまう、みたいな。あの「現実」が塗り変わって何も信じられなくなる感じ。
全部が金、金て言ってるのも、今の資本主義に走りすぎてる社会みたい。広告代理店て凄いね。
詐欺みたいな島を嫌に思ったのに、詐欺やってる夫と結婚しちゃうのも現実にありがち。DV受けてた子がモラハラ夫と結婚しちゃうみたいな。
現実の厭なところ全部詰め!て感じですごく嫌。
最後はわけわからなかった。
この作者て、ひたすら嫌〜なのが続いてやっと最後に救いがあるてパターンが多いから、短編のほうが好き。長いとそれだけ嫌な部分が多いだけだから。
『満潮』は、「性」がそうだったら良かったのにね、て感じ。人同士で搾取し合いながらするものじゃなく、個人で理想を追い求めたり自分の体を知ったり。そういうものだったら、性暴力とかが無い世界だったのかな。
Posted by ブクログ
いやぁ、今回も村田沙耶香さんすごかったなぁ…。
「変半身」は、ミッドサマー的な感じ?と思っていたけど、卵ぽいものを産んだり、ポーポー言い出したり、「ニンゲン」が終わったりともうファンタスティックでした…。
「満潮」はもうね、意味がわからない。旦那が急に潮吹きたいとか正気の沙汰じゃないでしょ。それをなんだかんだ受け止めて、なんなら私も潮吹くことにした。とか言う佳代もすごい。でも、潮吹きたいって言ってからの方がお互いなんとなく分かり合えてる?仲良くなってる?そんな感じになってるからすごいのよ。ほんと、村田沙耶香さんの作品って、唯一無二だよなぁ。
Posted by ブクログ
変半身、島で行われる変な伝統儀式の話かと思っていたら、そこで終わらせないのが村田沙耶香だった。人の信仰なんてこんな簡単に変わっちゃうでしょ、歴史なんてこんな簡単に改編できてしまうんだよ、というような嫌味をビシビシ感じた。現代の「普通」「常識」によくもこんな疑問を投げかけられるな……と毎度驚かされる。そんなところが大好き。そして最後は村田沙耶香らしい気持ち悪さで終わる。
満潮は潮を噴くために切磋琢磨する夫婦の話。膣の描写が丹念で、めちゃくちゃわかる〜それそれ!と思うようなリアリティだった。村田沙耶香の書く“性”、絶妙に生々しく気持ち悪いのが大好き。2篇とも面白かった。
Posted by ブクログ
千久世島では、ポピ原人と人間が仲良く暮らしていることをポーポー様に知らせるために、秘祭モドリが行われる。それを信じきっていた陸だが、その秘祭は数年前に島の若者たちがエロ目的で考え出したものだと知る。
後に陸が結婚した夫は詐欺師。里帰りした千久世島は今度は別の神話をかたって変な観光地にプロデュースされている。この世のものは何かにプロデュースされて、意味づけられているに過ぎない。最後に秘祭ニンゲンの終幕が宣言されると、戸惑う人もいつつも人々は皆ニンゲンをやめてポーポーになっていく…
『信仰』とテーマが重なる。ニンゲンとして振る舞うのは皆仮面。
Posted by ブクログ
狂気そのもの。読んでいて圧倒されたしおいて行かれた。
訳が分からなかったが、それであってこその村田さんの作品なので、今回も楽しく読めた。前半の「ポーポー」という単語だけが書かれたページはさすがに気持ち悪くて笑いながら読んだ。結末が全く予想できなかったが、逆に予想できた人はいるのだろうか。モドリやポーポー様が偽りだったのではなく、「世界」事態が偽物だった。今こうやって話している言語も立っている場所もすべて偽り。書いていてよくわからなくなってきた。モドリで高木君が卵を産んでいるシーンは最高に気持ちが悪くて想像するだけで嫌になった。
「満潮」はモドリの話よりさらに訳が分からなかった。旦那はなぜ潮を吹くことにこだわっているのか、主人公の友人はなぜそこまで旦那を拒絶し、非難するのか。そしてなぜ主人公は一緒になって潮を吹こうをしたのか。すべてが謎で一つも理解できぬまま終わってしまった。もう一度挑戦したい。