【感想・ネタバレ】第二次世界大戦とは何だったのか 戦争指導者たちの謀略と工作のレビュー

あらすじ

本書は、新発見の、あるいはこれまで省みられなかった資料を利用し、おざなりの(リベラル歴史家に都合の良い)解釈で終わっている重要事件の深掘を試みるものである。たとえば、第二次世界大戦の前哨戦ともいわれるスペイン内戦だが、その実質は共産主義政府(スペイン共和国人民戦線政府)に対する反共産主義勢力(フランコ反乱軍)の戦いであった。しかし、一般書ではスペイン政府を「共和国」と記述するばかりで、当時の共和国が実質「スペイン社会主義共和国」であったことを書かない。また、第二次世界大戦期およびそれに続く冷戦期において、米民主党政権(ルーズベルト政権およびトルーマン政権)内に多くのソビエトスパイが潜入していたことを示すヴェノナ文書が発表されており、ソビエト崩壊後の1990年代から多くのソビエト側資料も出ている。これにより、一般歴史書の記述の修正が必要だが、リベラル歴史家による積極的な解釈の見直しの動きはない。本書によって、読者の歴史観は少なからず立体化し、合理的歴史解釈醸成の一助となるだろう。

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Posted by ブクログ

学校で習う歴史解釈とは違った断面から世界史を眺められる好著。

印象に残った点などをいくつか。

①ピカソやロバート・キャパは共産党シンパであり、『ゲルニカ』などの作品は共産主義勢力のプロパガンダ作品。

②FDRや妻エレノアは共産主義シンパ。晩年の二人は仮面夫婦。

③英国首相チャーチルに対する過大評価の風潮。二つの世界大戦に英国が参戦するのに重大な役割を果たしている。日本の歴史家は、チャーチル大戦末期に選挙で負けたことを無視しがち。日本への無警告での原爆投下をトルーマンに勧めていた。

④スターリンの死に様。スターリンを畏怖するあまり、発作に陥った彼に誰も近寄らずに処置が遅れてしまうことの皮肉。

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2023年12月31日

Posted by ブクログ

表層的というか、取り繕ってお化粧しまくって、こう説明しようという‟共通見解としたよそ行きの「歴史認識」″ではなく、真実を見抜こうとした‟綺麗ごと抜きのスッピンの「歴史認識」“。それすらも偏向ではないかと思う部分もあるのだが、明らかに今までの第二次世界大戦と視点が異なるので、読みながら、脳みそが切り替えられる感覚で面白い。一応は色んな本を読んできたので、教科書で習うメインストリームが全てではないという意識はあるつもりだったが。

戦時中から冷戦期まで、米民主党政権(ルーズベルト政権およびトルーマン政権)内に多くのソビエトスパイが潜入していたことを示すヴェノナ文書が発表された。また、ソビエト崩壊後には、それに関して多くのソビエト側資料も出ている。つまり、アメリカが都合よくソ連に操られていた側面がある、という事実を指摘する。これ自体は新しい見方ではないが、重要な視点だ。

また、著者の渡辺氏は、「スペイン内戦」を正しく解釈することで、第二次世界大戦もその「局地戦」であった日米戦争の本質が見えると述べる。スペインは、カソリック教会が政治に介入していたために、西ヨーロッパ諸国の中でも近代化が遅れていた。米西戦争の勝利により、アメリカはフィリピンをスペインから得た後、米国の強引な手法で、植民地フィリピンはそれなりに政教分離に成功したが、本国スペインでは、教会は地主層と一体となりスペイン近代化の障害となったまま。そのスペインに‟共産主義思想“が流入することで、多くの国民がそれになびいた。

1931年4月の選挙で、スペインに共和制を求める勢力が勝利すると、国王はオーストリアに逃げ、外国資本も逃げた。1936年の選挙では左翼勢力が人民戦線を結成し、彼らは、カソリック教会を敵視。教会に放火し、カソリック系の学校を閉鎖。左傾化を嫌う軍人グループは共和国打倒を宣言した。スペイン内戦の始まりである。スペイン内戦自体は、「カトリック対共産主義」という構図に単純化はできない。そこには、階級闘争・地域独立・反ファシズムなど多層的な要因が絡み合ったイデオロギー戦争であった。

繋がりを整理すると、米西戦争(1898)により、米国に敗れ植民地を喪失したスペイン帝国は、国内の社会不安・軍部の権威低下を招き、内戦の土壌を作った。それにより、スペイン内戦(1936–1939)共和派 vs フランコ派の内戦では、外国勢力が介入し、第二次世界大戦の「前哨戦」的、ファシズムと反ファシズムの代理戦争となった。ナチス・ドイツとファシスト・イタリアがフランコ側を支援し、ソ連が共和国側を支援。ドイツ空軍の「コンドル軍団」がゲルニカ空爆を行い戦術の実験場にされたり、ソ連はコミンテルンを通じて国際義勇軍(インターナショナル・ブリゲード)を支援したが、イギリスやフランスなど西側諸国は「不介入」を掲げて共和国政府を見殺しにした。これにより、ヒトラーやムッソリーニに「西側は弱腰だ」という印象を与え、第二次世界大戦開戦に向けた自信を深めさせたという側面もある。

他方、日本とアメリカの関係でいえば、1922年に米最高裁は日本人を帰化不能外国人とすることを決定。だが、第一次世界大戦の軍事費削減に動き、ワシントン軍縮条約に対し、クーリッジ米大統領は、この和平努力を台無しにする危険性があることを危惧した。クーリッジが危惧したとおり、日米関係はこの日を境に後戻りできないほどに悪化を続ける。

書き過ぎると楽しみがなくなるので、日米の関係については、これ以上は本書を読んで欲しいと思う。レビューの中では、先ずは「スペインの歴史」を理解する事までで留めたい。

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2025年07月07日

Posted by ブクログ

 戦争は戦場だけでなく陰で張り巡らされた謀略の中でも繰り広げられる。戦争指導者たちの策略と駆け引きを描き歴史の裏側を浮かび上がらせる。
 勝者の歴史として語られる戦争の記録。その影で誰が糸を引きどのように世界の命運が決まったのか。本書は外交、経済、情報戦の視点から戦争を動かした人物たちの意図に迫る。
 国益のための欺瞞、秘密裏に交わされた取引。戦争は単なる衝突ではなく周到に仕組まれた結果でもあった。
 歴史を知ることは未来を見通す力となる。過去の策略を学ぶことで私たちは同じ轍を踏まぬ知恵を得られるのかもしれない。日本は引き込まれ未だに敗者として真に独立できず不平等のなかにいる。

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2025年01月29日

Posted by ブクログ

なぜ日本ではチャーチルが評価されてるのか。それが不思議に思えるほど、最悪な人物として描かれる。FDR(ルーズベルト)も。結局本作では描かれないけど、第二次世界大戦(特に大東亜戦争)は、西欧のアジア蔑視が根底にあったように感じる。

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2023年01月18日

Posted by ブクログ

良書だと思う。右の人にも左の人にも広く読まれるべき。
そうではないかと思っていたが、チャーチルは、糞ったれだった。
NEVER SURRENDER演説と一億玉砕・本土決戦は何が違うのか?
一方は勝ったので素晴らしく、一方は負けたから狂気とされた。
実の娘と義理の娘をハニートラップに使うなど、中共より酷いかも!
FDRは、共産主義かぶれの人種差別主義!
スターリンは、最早悪魔!
日本が悪という単純な図式ではなく、この手の輩が蠢く世の中で戦ったのである。

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2022年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者の渡辺さんによると、本書は第二次世界大戦の流れが頭に入っている人向けとのこと。チャーチルやフランクリン・ルーズベルト、スターリンなど歴史の表舞台の政治家らとその家族、関係者らの心情を人間ドラマとして開戦直前から終戦まで浮き上がらせている。

確かに教科書にない情報満載なので新しい視点を与えてはくれるが、どうも頭に入ってこなかった。史実を解説するとも異なるし、かと言って歴史小説というにも程遠く(渡辺さんは小説家じゃないし、本書にその趣旨もないわけだが)歴史の裏方で活躍してた政治家家族やスパイなどの初耳人物らに感情移入ができなかったのがその理由だろう。昼間のワイドショー賑わす愛憎劇の類が頭に入ってこないのに似てる(芸能人に興味がない)。

それにしても日本だけでなく全参戦国に問題はあったが、中でもチャーチルは戦禍に油を注いで全世界まで拡大させてしまったという意味で罪が重い。敗戦国だけが裁判にかけられるのも納得がいかない。

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2022年07月10日

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