あらすじ
恋人同士が一緒に暮らしたことから出会った2匹の雌猫。彼女たちの喧嘩だらけの日々、そして別れを綴る表題作。子供が嫌いな私が恋人の娘を一日預かることになった。作り笑顔で7歳の子供に機嫌をとろうとしてもそう簡単にはうまくいかない……。二人のやり取りを、可笑しく、そして切なさを込めて描く「木蓮」。直木賞作家が贈る、「女ふたり」をめぐる6つの極上の物語。
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Posted by ブクログ
「女二人の物語」 根底にずっと優しさがある。
ランドセル
ピンクのランドセル同士仲良くなったくみちゃんとみっちゃんは、久々再会してロスへ旅行へ行き変なパーティに呼ばれ、子供の時くみちゃんが引っ張って小学校まで行ってくれたように、パーティを抜け出す。くみちゃん 離婚するねん。
灰皿
亡くなった夫と一緒に住んだ家を小説家の女性に貸した。小説家は「あなたのうんこを食べるまで」で賞を取ったが、俺に恥をかかせて、と振られた。もう書けない。夫は昔から小説家になるのが夢で、好きな小説家が自殺したのに妻の知らぬ所でショックを受け、一日家を空けた。灰皿が書斎にあった。夫は帰ってきた。妻は小説を読むのが怖かったが、愛する気持ちを共有した小説家に夫の話をして今日夫の小説を読もうと思った。
木蓮
恋人の前妻との子供を預かることになった私は、子供が嫌いだ。子供のマリは素行が悪い。動物園でセックスについて知りたがるマリに全部ぶちまけると、そのことも木蓮についても極楽に行ったばあさんが教えてくれたとマリは喜んだ。私は自分が子供の頃両親が不仲で、二人が何かと子供に隠し事するのが嫌だったと思い出した。マリが普段禁止されているケンタッキーを二人は食べにいく。
影
私は婚約者のいる同じ会社の男と関係を持ち、それがばれ退社した。私の影は薄かった。「田畑さんがそんな人だと思わなかった。」いつも私は私を演じてきた。一人で島に旅行する。島の影は濃い。みさきという島で嘘つき呼ばわりされる女の子に出会った。彼女は最後にいつも「その宿には長男の霊が出るよ」と言う。その男とみさきは付き合っていて、本当に男は死んだ。それだけは本当だった。そのみさきを見て、私はどんな自分も自分だ、男を愛していたと思った。
しずく
サチとフクはシゲルとエミコの飼い猫で、二人の同棲きっかけに一緒に住む。二匹は喧嘩ばかりで蛇口からポタポタと落ちる雫を舐めるのが好き。二人は脚本家とイラストレーターで、貧乏だったが徐々に二人とも売れ始め忙しくなり仕事に追われ仲違いしていく。二人は引越し、サチとフクも別れる。なんでも忘れる二匹だが、シゲルとエミコが泣いた涙で、互いのことを思い出す。
シャワーキャップ
私のんちゃんは三十で彼氏と同棲するため引越し作業中。母が手伝いに来ている。ある日彼氏が別の女と歩いてるのを見てしまった。神経質な私と違い、母は呆れるほど呑気で明るい。それに苛立つようなこともあったけど、母は十九で私を産んで、父が帰らず泣いたこともあった。それをのんちゃんは慰めてくれた。私は母の子で良かった、何も解決してなくても大丈夫と思える。
Posted by ブクログ
西さんの作品は、なんというか、「癖のある」感じの印象。
いつも関西弁の女性主人公が出てきて、ちょっと繊細だったり、あるいは男勝りのユーモラスなキャラだったり。
その一方で擬態語や擬音語のチョイスが読者をはっとさせ、唸らせるところも多い作家さんです。
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そしてこの短編集。
いい意味で、何だかマイルドに感じました。曰く言い難いのですが。
いつも通り、関西弁と突き抜けた女性キャラは出てきますが、他の西作品対比、マイルドかな。
あとがきを読むと、何でもプライベートで辛い状況にあり、それを支えてくれた友人たちに捧げる本という位置づけの作品だそう。そうしたことも関連しているのかな。
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一応、簡単に短編の内容をご紹介
「ランドセル」・・・小学生の時の幼馴染に久方ぶりに会い、ノリで旅行を計画。さっそく気まずい旅行のなかのどさくさを描く。
「灰皿」・・・思い出の戸建てを貸し出す老オーナーと、これを借りることになった新進作家とのご近所づきあい。遠慮のない若者と気をもむ老人のやり取り。
「木蓮」・・・結婚相手にと見定める彼氏。その彼氏の連れ後を預かることになった「私」。この「私」、大の子供嫌い。爆発しかけるのを必死で抑えるも最後は・・・。
「影」・・・ワケありの「私」が逃げるように訪れた島。その「私」にちょっかいを出すみさき。みさきの過去を徐々に理解してゆく私の心象を描く。
「しずく」・・・作家の彼氏とイラストレーターの彼女。それぞれの連れ子(猫)それぞれ一匹。猫の視点で一家屋根の下の様子を描く、楽しくも悲しい短編。
「シャワーキャップ」・・・女の影がちらつく彼氏。その彼氏と同棲を目前にする女性(めっちゃナーバス)と引っ越しを手伝う母親(めっちゃポジティブ)。明るい母親に次第にイラつく女性の心の変化をビビッドに捉える。
こんな感じです。
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ということで西さんの作品はこれで13作目でした。でも本作は実は結構初期の作品。
相変わらず軽妙な関西弁と擬態語・擬音語が光ります。彼女の作品を全部読み切ったら、次はどの方面にターゲットを絞りますかねえ。。。