【感想・ネタバレ】シャネル―最強ブランドの秘密のレビュー

あらすじ

動きやすくて機能的な働く女性のための服を次々つくりだして貴族趣味を時代遅れにしたシャネルは、女性の社会進出と大衆消費社会を先取りした近代初の女性起業家だった。ひた隠しにした出自とセレブとの交流、大国アメリカへの親愛感と侮蔑。ファッションブランド研究の第一人者が、永遠にオーラを放って女性たちを魅了する「最強ブランド」の秘密を、伝説に彩られたその生涯と辛辣で知性に満ちた「シャネル語録」から探る。まるごと一冊シャネル論!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
リップスティック、ショルダーバッグ。
創ったのは一人の天才起業家だった。
その名はシャネル―。
貴族趣味を時代遅れにし、大衆消費社会の寵児に。
ひた隠しにした出自とセレブとの交流、大国アメリカへの親愛感と悔蔑。
辛辣な「シャネル語録」から伝説の生涯に迫る、ファッションブランド研究の第一人者、待望のまるごと一冊シャネル論。

[ 目次 ]
第1章 贅沢革命1―アンチ・ゴージャス
第2章 贅沢革命2―偽物のチカラ
第3章 著作権無用論―マスの思想
第4章 起業家シャネル―ブランド・ビジネス
第5章 スタイルはライフスタイル
第6章 はたらく女

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

0
2011年06月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

20世紀のフランスに生まれた、世界をまたにかけた一流の女性向けブランド・シャネル。
その創始者であるココ・シャネルの仕事、恋、考え方、などを軸にして一生を追った本です。

彼女がその絶頂期と言われるくらいの活躍をした1920年代のパリの描写があるのですが、
ストラヴィンスキーやサティやピカソにコクトーなど、そうそうたる顔触れがみられます。
あの時代の、世界の文化の中心地だったんでしょうね。その空気を僕も嗅いでみたいくらいです。

それはさておき、
シャネルという人は、この一冊を読みとおした印象だと、
自己肯定によって成功した人のようですね。
肯定された自己が、時代の空気、その変化の時期にジャストに合っていた。
それまでの大仰なドレスを着ていた女性たちは、
男性のファッションからフィードバックされた新しい、実用的なファッションを選ぶようになり、
それはまさに革命だったようです。

ただ、シャネルは、最初こそ、長く着られる服こそぜいたく品として、それまでの使い捨ての
ぜいたくを批判したのですが、それから自らが大きな会社を持つようになると、
その否定したはずの、使い捨てのファッションを肯定することになります。
それが、ビジネスにとっては都合が良いからです。
そのあたり、たくましさを感じますし、そういうところだけ頑固じゃないのが、
商売のうまさであり、商売人そのものの姿を感じさせられました。
巨額のお金のためならば、そういう自分の小さなこだわりは捨てる。
「シャネルおばさん、そういうところだけ便宜的だね」と軽く言葉のジャブを見舞ってやりたい
気持ちもしました。

また、彼女は、自分のシャネルというブランドの服のコピーが大量になされて、
安く売られている様を肯定し、逆に喜んだそうです。
それは、本物の質の良さに対する自信があって、偽物が出回るほど、本物の価値が高まるという論理を
最初からわかっていたためのようです。
また、イミテーションジュエリーというものを作って、
本物の宝石類のもついやらしさ(権威や財力の象徴としての宝石のいやらしさ)
を抹殺してしまおうともしました。
彼女の人生には、このように、いろいろなコピーが出てきます。

彼女が他のクチュリエたちとは違って、コピーを認めたからといって、
それを現代に適応して類推してしまうのはちょっと違うんですよね。
音楽のデジタルコピーなどは、話は変わってきます。
しかし、それに類する、ポストモダン期になると出てくるという
コピーの氾濫のさまというものの走りは、きっとこの20年代のファッション業界に
あったんじゃなにかと思ってしまいますね。
ポストモダンのコピーというものは、オリジナルがまずあって、それをデータベースとして、
そこからコピーがどんどん生まれていくというもので、コピーであっても、すべてが
本物と同等かそれに近いものだったはずです。
ポストモダンについての詳しくは、東浩紀さんの『動物化するポストモダン』を読んでください。
このシャネルの本を読んで、きっと、初めてポストモダンというものを考えた人は、
この20年代のファッション業界から、それはきっとあまり悩まずに未来を見たんだなという気がします。

それほどに、ファッションというものは、
人間の感覚においての先鋭的なものをくみ上げられるんじゃないかと思うのです。
言葉も論理も追いつかない感覚の早さ、その最上級の早さでもって動く世界が、
当時のファッション業界だったかもしれないです。

普段、まるで足を突っ込まない分野だっただけに新鮮な本でした。
女性の方は、もっと面白くそして身近なこととして読めるのでしょうかねぇ。

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2013年01月12日

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