【感想・ネタバレ】愛という名の支配(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

どうして私はこんなに生きづらいんだろう。母から、男から、世間から受けてきた抑圧。苦しみから解放されたくて、闘いつづけているうちに、人生の半分が終わっていた。自分がラクになるために、腹の底からしぼりだしたもの――それが“私のフェミニズム”。自らの体験を語り、この社会を覆い尽くしている“構造としての女性差別”を解き明かす。すべての女性に勇気と希望を与える先駆的名著。(解説・山内マリコ)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「男らしさ」にあって、「女らしさ」にないもの、それは「自分」です。学生が言っていました。男の学生は、「男らしさ」と「自分らしさ」が重なると。女の学生は、「女らしさ」を生きることと「自分らしさ」を生きることが重ならないと。

なぜ、思春期の女の子に、わざわざそんな無防備な服装をさせるのか。しかも、未来にそなえて活発に活動しなければならないそんな時期に、それだけ危険なことも多い時期に、なぜ、「動きやすいように、また、からだを守るためにも、ズボンをはきなさい」ということにならないのでしょうか。

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2020年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文庫の初版が平成元年みたい(多分)だから、だいぶ古い本です。この頃現代作家のフェミニズム文学や、男性が書いた新しいフェミニズム系エッセイをだいぶ読んだので、これを読むことでフェミニズムの原点みたいなものを理解できました。
田嶋陽子さんが訴えたのは、私の母親くらいの、団塊世代の主婦たちが、夫や社会の男たちにそうとは自覚せぬままに支配され、女だからという理由で手足をもぎとられ、家内ドレイになっていることに気づくべきだ、ということ。私はその子どもの世代なので、団塊世代の女性たちがいかに家事育児といった家庭内の無償労働を強制されてきたかよくわかる。時代が変わっていく中で、彼女たちは「本当は私も社会で活躍したい。自由になりたい。女に生まれなかったら、こんな思いをせずに済んだのに。」と思いながら、良妻賢母であることを求められ、なにせ自分たちが団塊世代で競争が激しかったから、子どもたちは競争に勝ち抜かせたいと、教育に熱心にならざるを得なかった。
私はそんな母の影響を大いに受けて育った。私の母は主婦として家事をこなしながら、常に正社員として働いていた。それでも給料は安く、どんなに頑張っても男性の補助的な仕事しかできなかったので、私と姉には、男性と対等に働ける仕事に就きなさい、とずっと言い続けた。母は、どんなに給料が安く、パートの方が時給が良いように見えても、長期的に見て正社員の方が良いと判断し、正社員として就職することにこだわっていた。夫婦仲は悪くなかったが、経済的に夫に依存せざるを得ないことをよく嘆いていた。

田嶋陽子さんは、「女に生まれて損した」と思ったことがない女性は、社会に根強くはびこっている構造的な差別に気づいていない。と言う。制度を作っている男性が、女性が活躍できないように(意識的にせよ無意識的にせよ)しているのだから、奴隷船の甲板の下で無償労働(オールをこぐこと)をさせられている女性が、甲板の上に上がるべきだ。男女雇用機会均等法などで、女性が活躍できる世の中に変わりつつあるが、まだ今は、女性が甲板の下で無償労働をこなしながら、ときどき甲板の上に上がって男性と対等に働くことが許された段階に過ぎない。女性は男性の何倍も頑張らないといけない状況だ。
↑この比喩は、私にはとてもよく分かる。
私自身は、母が望む通り、男女平等の仕事に就いて長く頑張ってきた。しかし、甲板の下でも一生懸命にオールをこいできたし、今も漕いでいる。そしてオールを漕げなくなったとき、なぜか罪悪感を感じなければならない。家庭の中で、妻であり母である女性が、家事も育児も完璧にこなすことが当たり前だという社会の風潮はなくなってはいないからだ。
しかし、社会が変わってきた恩恵はずいぶんと受けた。育児休業もたっぷりと取らせてもらったし、休業中の保障も十分だったと思う。(育児休業を延長した場合の社会保険料を自己負担せずにすんだのが大きかった)。短時間勤務も利用したし、保育料も途中から無料になった。かつて、先輩たちは仕事を手放さない代わりに、働いた給料のほとんどを保育料に持って行かれていたらしい。
田嶋陽子さんのような女性が、結婚も出産もしない人生を選び、闘って社会を変えてきたからこそ、私は結婚も出産も仕事も…と欲張って生きることができた。

しかし社会はまだまだ変わる余地があると思う。私は職場では女性だから損をすると感じることはあまりないが、子育てをしているとオカシイと思うことが多々ある。小学校のPTAを支えるのは99%お母さん。授業参観やイベントにはお父さんがたくさん来るようになったのに、彼らは下働きはしない。今はお母さんたちもほとんどの人が働いているだろうから、学童保育に入れないのではないか?と心配したらそんなことはなく、小学校1、2年生のお母さんの多くは、小学校が終わる3時前には家にいるような仕事を選び、子育てを優先させている。子どもが自立したあと仕事を再開しようとしたときは、非正規雇用がほとんどだ。そして彼女たちはそれを損したと思っていない。母親なのだから当たり前だ、と考えたり、仕事を続けられなかった自分を責めたりする。
この社会構造を、今の若い人たちが甘んじて受け入れないでほしい。ちょっと、最近のアイドルやアニメの文化が、多様性が浸透してきた一方で、女性はやっぱり胸が大きくて目が大きくて髪が長くてさらさらで、可愛いのが一番!みたいになっているから、なんか逆行しているようで嫌だ。それがラクだからと、女性性を武器にして生き延びようとしないでほしい。

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2025年08月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

昨今のフェミニズムの流れで復刻版が出た田嶋陽子の著書。
特に母と娘の関係性の方が父と娘よりもフェミニズムで説明できることが多い、というのも昨今の流れ。
すごいのは、その主張を30年前に上梓してたということ。
今読んでも、全く古さを感じない。

一方で、彼女がよくテレビに出ていた時代から考えると女性の状況はあまり変わらないけど、男性の、特に若い男性たちの意識は少しずつ変わっている気がする。
ジェンダーギャップ指数は相変わらず低いけど、それでも前には進んでいる、多分。

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2021年07月25日

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