あらすじ
私たちが労働の対価として受けとる給料。では、その額は、あなたの市場価値の反映なのだろうか? 私たちはみずからの生産性と職種によって、給料の額は客観的に決まると考えがちだ。だが、果たしてそれは本当だろうか? ならば、弁護士のほうが教師より価値ある仕事なのか? 警官や大学教授、記者の仕事を公平な基準で正しく評価できるのだろうか? じつは、多くの人が「誰がいくらをなぜもらうのか」を知らないまま、神話にとらわれていると著者は述べる。本書は、アメリカの社会学者がさまざまな企業・業界の実態調査に基づき、常識への反論を試みる書である。給料を決定する4つの要因(「権力」「慣性」「模倣」「公平性」)を手がかりに広く信じられている誤解を解き、給料を上げるための方策と真に公平な賃金制度への道筋を示す。コロナ危機を踏まえた「エピローグ」を収録。
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Posted by ブクログ
給料の額はどのようにして決まっているのか。
大きな要素として、権力(上司や力のあるものが給料を決める)・慣性(この仕事だとこの金額だろうと金額が固定化される)・模倣(業界内の相場で賃金を払う)・公平性(自社内もしくは業界内で公平な金額か)としている。
また、多くの人は給与が個人の成果が給与に反映されている・反映するべきだと思っているが、果たして成果は給与に反映されているのか。
人事評価制度の導入が昨今では盛んに行われているが、成果を正確に測定するのは不可能だと理解した上で、それでも最低限の指針が必要だから導入していると使用者側も労働者側も考えるべきである。
邦題では「給与はあなたの価値なのか」と疑問形になっているが、本書では答えはノーである。
上記に挙げた4要素や、グローバル化・労働組合の減少・株主資本主義の台頭などにより時代によって給与額は変化している。
日本では賃金が上がっていないと大きく問題になっているが、比較対象となっている諸外国でも一般的な労働者の賃金は必ずしも上がっていない。上位1%のエリートの報酬額が異様に跳ね上がっている背景がある。
とはいえ、日本では賃金は必ず上げていかなくてはならないし、そのためにどうすればいいか、最低賃金の上昇は妙案ではないがやはり取り組むべき施策であると再認識できる内容であった。
Posted by ブクログ
歩合給の設計によっては、顧客に不利な商品を売り込む傾向ができる。
ウォールマートの賃金は最低賃金の象徴だった。
労働組合の減少が賃金の上昇を妨げている。テスラの工場にはGMのような労働組合はない。
トラックの運転には技能がいるが、賃金は大きく下がった。生産性は落ちていない。
格差は、平均的な労働者の賃金が停滞している、エリート層の賃金がけた外れになっている、同じ技能同じ職種間で格差が拡大している、の3点ある。
事前分配とマーケットデザイン。最低賃金を上げる。最低賃金が雇用を減らすという考え方は古い。
低所得者のための勤労所得税額控除。これによって低所得者の賃金がさらに下がった。前提が間違っている。最低賃金と組み合わせる必要がある。
世間一般では、人の市場価値によって給料が決まる。実際は権力、模倣、慣性、公平性によって決まる。
労働組合、最低賃金、天井を下げる、マーケットデザインによって改善する。