【感想・ネタバレ】同潤会代官山アパートメント(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

喜びも悲しみも、分かち合っていけたら――。1927年、関東大震災で妹を亡くした八重は妹の婚約者竹井と結婚し、同潤会アパートへ。最新式の住宅にも、自分同様に無口な夫にも戸惑う八重だったが、ある日、妹が竹井に送った手紙を見つけ……。時代の激流に翻弄されながらも、心通わせる相手と出会い家族をつくり、支え合って生きた四世代、70年の歴史。あたたかな気持ちで満たされる家族小説。(解説・北上次郎)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

切なくて温かい、そんな読後感に浸っている。

大正14年から建設が始められ、平成8年に取り壊されるまで約70年にも渡って住まわれてきた同潤会代官山アパートメント。建築を専攻していた学生時代には、惜しくも取り壊されてしまった「近代集合住宅のレジェンド」として学んだ記憶がある。

本作を読んで、このアパートメントは多くの家族の物語を生んだ舞台あることが分かり、自分の中で血の通った温かい存在に変わった。

この小説の家族も4世代に渡って住み続けている設定だ。竣工と同時に入居した竹井と八重の夫婦から、取壊しを見届けた曾孫の千夏まで…それぞれの物語に常にこのアパートメントは寄り添っていた。

どの人物にフォーカスしても素敵だったが、一番印象的なのは、初代の竹井と八重の人柄。真面目で無愛想に見えて実は優しい竹井と、無口だけれど芯が強く行動力のある八重。
激動の時代の中、さまざまなトラブルが起きるけど、2人の人柄が最初から最後まで家族を優しく導いていている。後半の八重と進と千夏の東京タワーのシーンはすごく綺麗で泣きそうになった。
4世代に渡り、ちょっとずつこの2人の人柄や面影がのぞいてくるのも微笑ましい。

核家族化が進み、世代間や近所とのつながりが失われていく時代の流れの中、同潤会アパートメントもその生涯を一旦終えている。改めてなんだかとても切ないが、自分もこうしてどこかの住まいでこれから家族の物語を紡いでいくんだな、楽しみだなとも思えた。

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2022年02月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

関東大震災の浅草の塔倒壊で妹を亡くした八重は、その婚約者竹井と結婚して、代官山のアパートに住み始める。
もう地震や火事で愛する人を失いたくないと、竹井が当時はめずらしかった頑丈なコンクリート建物を選んだのだ。

やがて子どもが生まれ、アパ―トを増築し(!)、孫が生まれ、最後を迎え、アパートも取り壊される。
代官山を起点に一つの家族を描いていく中に、それぞれの時代の空気が浮かび上がり、懐かしいような寂しいような、しっとりした気持ちになる。

コンクリートの高いところに住んでいた反動で木造の戸建てを選んだ息子夫婦は、阪神大震災で家が壊れたり、
火事に強い家だけど、火事を起こしてしまったりと
いろんなこともあるが、それもまた振り返ると人生の絵巻物の一つにしか過ぎない。

夕方に紅茶を飲みながら静かに読みたい。そんな本です。

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2022年05月07日

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