あらすじ
喜びも悲しみも、分かち合っていけたら――。1927年、関東大震災で妹を亡くした八重は妹の婚約者竹井と結婚し、同潤会アパートへ。最新式の住宅にも、自分同様に無口な夫にも戸惑う八重だったが、ある日、妹が竹井に送った手紙を見つけ……。時代の激流に翻弄されながらも、心通わせる相手と出会い家族をつくり、支え合って生きた四世代、70年の歴史。あたたかな気持ちで満たされる家族小説。(解説・北上次郎)
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無口な竹井さんの家族への愛情表現は同潤会アパートメントだったんだ。1977年は涙でうるうるしながら読みました。
竹井さんの思いが詰まった同潤会アパートは、家族が増え、様々な社会的な歴史とともに、それぞれの思いが積み重なり、かけがえのないものとなっていく、その過程がとても良かった。
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自分の不見識であったら申し訳ないですが。
この作品、それほど話題にはなっていないような気がするのですが、めちゃくちゃ良いお話でした。
4世代に渡る家族と家に関するお話。
4世代に渡るということは、必ずそこには生と死があるわけで。自分が生きている間は、そこで最も時間を死ぬ時を費やす「家」
そこで共に過ごして暮らす家族、というものに対して深く考える機会を与えられた作品。
未読な方には是非お勧めしたいです。
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代官山に実在したアパートと、そこに住まう4代にわたる家族の歴史を巧みに絡ませた、70年に及ぶ物語。
と言っても、大河ドラマのような壮大さとはまるで無縁です。歴史に名を残す偉業や、めくるめく大恋愛や、驚天動地のトリックがそこに記されているわけではありません。ときに時代の波に流されながらも、懸命に生きる日々。そのなかでのちょっとしたトピックが章ごとに視点を変え淡々と語られるのみです。
でもこの淡々としたカラーこそが、本作の魅力でしょうね。一族のなかでどちらかと言えば陰キャ(ごめんなさい)な人が語り部役を継いでいきますが、だからこそ胸の内に宿る炎が時折垣間見えて、物語を前に動かしていきます。
乗り気では無かった近代的なアパートへの入居理由と、クライマックスの重ね合わせはお見事。ある意味ベタですが嫌らしさは全く感じませんでした。ここからの話の畳み方は本作らしい静けさ。読み終えてからプロローグをもう一度開きじんわりしました。
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静謐。
およそ70年にわたる家族の物語。人が人を思いやり、縁を大切にしながら時代の波を超えていく。それも全て、このアパートがあればこそ。"帰るべき場所"があり、"大切にしたい人"と"思いやりの心"さえ持ち続けていれば、人は誰でも幸せになれる。そんな優しい気持ちになれる物語でした。
「ビブリア古書堂の事件手帖」もそうですが、この作者は、基本的に"誠実な人間"が好きなのでしょうね。特にこの作品では、それを感じました。読後感がとても爽やかです。
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ビブリアの作者だからという理由で読んでみた。
物語に大きな起伏はないがそれでも情景や感情がよく表現されているなと感じた。特に登場人物の一人である進には感情移入する人が多そうだ。
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1927年、唯一の家族だった妹の愛子を地震で亡くした八重は、愛子の婚約者だった竹井と結婚した。
無口なもどかしい二人であったが、妹を失ったくやしさを竹井と分かち合うことができると感じたからである。
関東大震災直後に建てられた、当時としてモダンな鉄筋コンクリートの建物は、木造よりもずっと地震や火事に強い。
もう二度と同じことを繰り返したくないという竹井の切な願いに従う八重。
とても静かな、優しさに満ちた物語だった。
約10年ごとに、このアパートでの家族の暮らしが、連作短編のように語られていく。
親から子へ、子から孫へと受け継がれて四世代、70年の家族の歴史。
それらのひとつひとつは、ほんのささやかなエピソードだけれど、長い年月の間には、喜びも悲しみも何もかもが詰まっていて、感動で胸がいっぱいになる。
目頭が熱くなるような光景ばかりが思い浮かぶようだった。
エピローグで、このアパートに入居したての頃、竹井が八重に「なにか必要なものや、ほしいものはありますか」と尋ねる場面があった。
その答えこそが、家族が支え合って生きていくことの意味なのだと思う。
帯にあるように、まるで朝ドラを見ているような、素敵な終わり方だった。
しばらくこの余韻に浸れそうです。
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4世代70年に渡る家族の物語。
淡い色合いで描かれた絵のような、しっとりしたお話でした。おじいちゃんやおばあちゃんのことを思い出したりしながら読みました。
今はなかなか会えない家族や親戚もいるけど、大事にしていかなきゃなと思いました。
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切なくて温かい、そんな読後感に浸っている。
大正14年から建設が始められ、平成8年に取り壊されるまで約70年にも渡って住まわれてきた同潤会代官山アパートメント。建築を専攻していた学生時代には、惜しくも取り壊されてしまった「近代集合住宅のレジェンド」として学んだ記憶がある。
本作を読んで、このアパートメントは多くの家族の物語を生んだ舞台あることが分かり、自分の中で血の通った温かい存在に変わった。
この小説の家族も4世代に渡って住み続けている設定だ。竣工と同時に入居した竹井と八重の夫婦から、取壊しを見届けた曾孫の千夏まで…それぞれの物語に常にこのアパートメントは寄り添っていた。
どの人物にフォーカスしても素敵だったが、一番印象的なのは、初代の竹井と八重の人柄。真面目で無愛想に見えて実は優しい竹井と、無口だけれど芯が強く行動力のある八重。
激動の時代の中、さまざまなトラブルが起きるけど、2人の人柄が最初から最後まで家族を優しく導いていている。後半の八重と進と千夏の東京タワーのシーンはすごく綺麗で泣きそうになった。
4世代に渡り、ちょっとずつこの2人の人柄や面影がのぞいてくるのも微笑ましい。
核家族化が進み、世代間や近所とのつながりが失われていく時代の流れの中、同潤会アパートメントもその生涯を一旦終えている。改めてなんだかとても切ないが、自分もこうしてどこかの住まいでこれから家族の物語を紡いでいくんだな、楽しみだなとも思えた。
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タイトル見て借りましたが、『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズの作家さんだとは気付かず…。
同潤会アパートというと表参道だと思っていたので代官山だったっけ?と思って調べたら15カ所もあったんですね。
関東大震災の後、日本初の鉄筋コンクリート造りの集合住宅として建築された同潤会アパート。代官山にある同潤会アパートメントで暮らした四世代70年の家族の歴史が描かれています。
年代を追うごとに中心人物が子供から孫、そして曾孫の代に変化して行きますが、それと共に建物も歴史を積み重ね、あんなに近代的だと言われていた建物も老朽化が進み、取り壊わされてしまいますが、そこに暮らした家族の思いの強さにジーンときました。特に竹井光生がどんな思いでこのアパートを新居に決めたのかがわかった時はうるっと来ました。
関東大震災に始まり阪神大震災まで登場するこのお話。日本は本当に大きな地震が起こる国であるという事を改めて思い知らされる事となりました。
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文庫本、発売当初に購入したままになっていた作品です。
やっと手に取りました。
1927年から1997年までの70年間の家族四世代の話でした。
作品の中には、関東大震災、第二次世界大戦、阪神淡路大震災のこともあります。
でも、物語は代官山アパートメントを舞台の家族の話なので、それらの事はそれほど重く深刻には描かれてはいませんでした。
とても読みやすくて、話が進むと月日の経過もあって、登場人物の成長や変化が感じられるのが楽しかったです。
本の帯に
読み終わると大河ドラマか朝の連続テレビ小説の最終回を見終わった時のような感慨に包まれる。
と、ありました。
読み終わって、その事がわかるように思います。
その時代の家族の日常が描かれているのですが、温かくて、静かな物語でした。
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じんわりと温かい家族の物語。
同潤会アパートを舞台に、視点を変えながら四世代にわたる歴史が描かれています。
長くはないお話ですが、どの章も噛み締めるように読みました。
帰るべき場所、帰りたい場所、そんな家族を築き上げた竹井と八重。
二人の関係性が最後まで素敵でした。
There is a long history of the family.
They established the shape to help each other with the warm members.
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1927年から、と裏表紙にあり、戦争モノかな?と思いましたが、新築の同潤会アパートに住む4世代に渡る物語でした。
親から子へ、また下へ、視点が変わりつつ、最初は真新しいアパートが最後は・・・
同潤会と言えば表参道ヒルズですが、あの建物ももう20年近く経つのですね、本書と同じく、時代が巡るのは早いです。
Posted by ブクログ
1927年から1997年まで、同潤会代官山アパートに暮らす一家四代に渡る家族の物語。
関東大震災や世界大戦、そして阪神大震災でのそれぞれの悲しみを乗り越えたり、辛い時には支え合い助けあっていく家族の姿に、同じように関東大震災でつらい経験をした私の祖父、阪神大震災で被災した私の祖父母と両親が重なり、涙でした。
家族の形も家もどんどん変わっていかざるを得ず、寂しくなることもあるけれど‥
「人は入れ替わり、家も変わっていく。
きっとこの先も色々なことが起こるだろう、
嬉しいことも、悲しいことも、家族で分かち合って生きていけたらいい。」
この言葉を胸に、新しい家族の形ができていくことを喜びに変えていきたいなと思いました。
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特別大きな事件が起きるわけではない。ごく普通の家族の物語。
こういう話が、私は好きなんだなぁと、つくづく思った。
しかもきっと、三上さんの文章も好きなんだなぁきっと。
友達から回ってきた本なので、最初は作家さんの名前を見てもぴんとこなかったけれど、著者略歴を見たら、あら、『ビブリア古書堂の事件手帖』書いた方だ、とうれしくなった。
しみじみと、滋味深い作品。
Posted by ブクログ
名前と人物がたくさん出てきたので、少し混乱してしまったけど、そして少し前に読んだ本なので、だいぶ忘れてしまったけど、スッキリとした内容だったかと思う。
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良い人と出会い家族になる。
家族に恵まれた一家の物語。
家族の中でいざこざが無いのが良い。
ただ、各章で必ずトラブルというか困難があるのがしんどかった。
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大正から三世代にわたって同じアパートで生活する一家の物語。タイトルとなっている同潤会代官山アパートができたときからなくなるまで過ごした家族のストーリー。アパートと共に人の一生もそれが一つの線となって繋がっており、当時の時代を思い浮かべながらたどる、読み応えのある小説でした。
と同時に同潤会というと表参道しか知らなかったがいろいろなところにあったと知り、いろいろ調べたくなりました。
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関東大震災の浅草の塔倒壊で妹を亡くした八重は、その婚約者竹井と結婚して、代官山のアパートに住み始める。
もう地震や火事で愛する人を失いたくないと、竹井が当時はめずらしかった頑丈なコンクリート建物を選んだのだ。
やがて子どもが生まれ、アパ―トを増築し(!)、孫が生まれ、最後を迎え、アパートも取り壊される。
代官山を起点に一つの家族を描いていく中に、それぞれの時代の空気が浮かび上がり、懐かしいような寂しいような、しっとりした気持ちになる。
コンクリートの高いところに住んでいた反動で木造の戸建てを選んだ息子夫婦は、阪神大震災で家が壊れたり、
火事に強い家だけど、火事を起こしてしまったりと
いろんなこともあるが、それもまた振り返ると人生の絵巻物の一つにしか過ぎない。
夕方に紅茶を飲みながら静かに読みたい。そんな本です。
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1927年から1997年まで、1つの家族の4世代にわたる物語を、同潤会代官山アパートを中心に描いています。たったの70年なんだけど、関東大震災に始まり戦争を経て平成へと移り変わり、街の風景も文化も考え方もこんなにも変わっているんだということを再認識させられました。
読みごたえはあるけど決して難しい文章じゃない。これは幅広い世代に読んでほしいなぁ。
Posted by ブクログ
同潤会アパートを舞台にした家族の物語。
1927年から1997年まで、約10年ごとに物語を紡いでいく。
ビブリア古書堂シリーズとは異なり、ミステリではないが、前の章に後の章に繋がるものが隠されていたり、ミステリ的な要素も入っている。
Posted by ブクログ
八重という1人の人生の中に、
新しい家族ができて、
その一人一人がまた人と出会い、
新しい家族ができていって、
思い出が、記憶が増えていく
人がいつか必ず老いていくことも、
別れがあることも、
哀しさ、寂しさ、侘しさを感じるけど、
大切な人と、支え合って、暮らしを紡いでいく、
家族が世代を超えて繋がっていくのは素敵だなと思った
Posted by ブクログ
関東大震災で妹の愛子を亡くす
愛子の婚約者の竹井と八重は数年後結婚
同潤会アパートに住む
そこから年月を経て生きる4世代の家族の物語
激動のなかを支えあって生きていく
ドラマチックに描くのではなく
静かに淡々と描く
少しずつじんわり確実に心が温かくなる小説
Posted by ブクログ
関東大震災からはじまる4世代の物語。
これは映像化してくれたら嬉しいなぁ。
『ALWAYS』じゃないけれど
家族の物語の背景に、時代の移り変わりと
あの代官山アパートメントの姿があれば
きっと私も彼らと一緒に生きてきたかのように
その中に入っていけるかもしれない。
最初の主人公である八重と竹井の静かな人生も
その娘・恵子の戦争をはさんだ人生も
ふたりの孫たちの経済成長期の人生も
八重によく似た、ひ孫の新世紀の人生も。
二度と震災で大切な人を亡くしたくないと
竹井が選んだ鉄骨造の最新アパートは
そのすべての人生を包み込んで
穏やかに朽ちていったのでしょう。
ちなみに私、この同潤会アパートが好きで
ギリ現存しているうちに「青山」を見学しました。
少し斜めに向かい合った2住居の玄関扉とか
印象深く覚えています。
また写真集とかも見たくなっちゃったわ〜。