あらすじ
世界100万部の超ロングセラー。
資産運用の常識を変えた伝説の一冊!
「市場と投資の本質」を伝える投資哲学の名著として、世界中で読み継がれてきたベストセラーを、最新データに基づき全面リニューアル。
変動するマーケットに一喜一憂する。じっくり考えて決めた投資計画を無視して、高値で買い安値で売ってしまう。そんな経験をしたことがある方は少なくないでしょう。では、市場動向に左右されることなく、大切な資産を守り、実り豊かな人生を実現するには、どうすればいいのでしょうか? 本書ではその現実的な対応を教えます。
著者のエリス氏は、投資の成功は、値上がり株を見つけることでも、ベンチマーク以上の成績を上げることでもなく、「自ら取り得るリスクの限界の範囲内で、長期的な投資計画や資産配分方針を入念に策定し、市場の動向に左右されず、徹底的にその方針を守り抜く」ことだと言います。
そのための方法として詳しく紹介するのが、「インデックス・ファンド」への投資です。本書では、個人投資家が押さえるべき運用基本方針のポイント、成功する投資信託や確定拠出年金の選び方、投資の基本原則などについても広く解説。プロ・アマ問わず投資に関わる全ての人に広く役に立つ内容になっています。
■改訂のポイント
今回の改訂では最新データに基づき全面リニューアル。新たに6章を加え、2020年の新型コロナウイルスの蔓延がもたらした大暴落と急回復期など、最新の市場動向もふまえて内容をアップデートしています。
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Posted by ブクログ
投資の世界は「敗者のゲーム」なのか?
チャールズ・エリスの名著『敗者のゲーム(Winning the Loser’s Game)』は、個人投資家が長期的に資産を築くために読むべき基本書として高く評価されている。エリスはこの本の中で、株式市場を「敗者のゲーム」と定義し、多くの投資家が市場に勝とうとすることで、逆に敗者となってしまうという皮肉な構図を提示する。
敗者のゲームとは、本来の「勝つこと」が目的ではなく、「いかにして負けないか」が鍵となるゲームである。テニスの例を引き合いに出し、プロの試合(勝者のゲーム)は積極的にポイントを取りに行くことが勝敗を分ける一方、アマチュアの試合(敗者のゲーム)では相手のミスを待つことが勝利のカギであるとする。このアナロジーを投資の世界に適用し、「市場を出し抜く」ことよりも、「市場全体に幅広く投資し続ける」ことの方が合理的であるというメッセージを伝えている。
インデックス投資という合理的な戦略
本書の中で特に強調されているのが、インデックス投資の有効性である。エリスは、プロのファンドマネージャーですら長期的には市場平均に勝つことが難しい現実をデータを用いて説明し、個人投資家が高額な手数料を支払ってアクティブファンドに投資することの非合理性を説いている。
インデックスファンドは、市場全体に分散投資することでリスクを低減し、かつ運用コストも極めて低いため、個人投資家にとって最も効率的な運用方法の一つであるとされる。
日本でも人気の高い「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」のような低コストのインデックスファンドは、エリスの主張を体現する優れた投資商品である。
長期投資と複利の力
エリスが繰り返し述べているのは、「投資で成功するためには、時間を味方につけることが必要である」という点である。短期的な市場の上げ下げに一喜一憂するのではなく、長期的な視点で投資を継続することにより、複利の効果が最大限に発揮される。
複利とは、「利益が利益を生む」仕組みであり、時間が経てば経つほどその効果は指数関数的に増していく。エリスは、投資家が市場から離れず、むしろ暴落時にも市場に居続ける勇気を持つべきだと説く。実際、過去のデータからも、市場が大きく反発するのは暴落直後であることが多く、そこで市場に居ないことがリターンの機会を失う大きな要因となる。
『投資家は、「稲妻が輝く瞬間」に市場に居合わせなければならないということだ。』という言葉が印象的だ。
感情に流されない「行動」の重要性
『敗者のゲーム』の中では、投資において「感情がいかに敵であるか」が繰り返し述べられている。市場が急落した際には、多くの投資家が恐怖に駆られて売却してしまい、逆に高騰時には欲に駆られて追随買いしてしまう。こうした感情的な行動は、長期的なリターンを著しく損なう。
エリスは、成功する投資家とは「知識がある人」ではなく、「適切な行動を取れる人」であると明言する。つまり、いかにマーケットの知識が豊富でも、それを生かした合理的な判断と行動が取れなければ意味がないのである。
投資における最大のリスクは市場ではなく、自分自身の行動であるという言葉は、多くの読者にとって深く刺さるだろう。
タイミングではなく、タイム
もう一つ、エリスが繰り返すのが「マーケットタイミングの無意味さ」である。多くの投資家が「安く買って高く売る」ことを理想とするが、実際にはそれを正確に実行することは不可能に近い。
むしろ、エリスは「時間を味方にする投資(タイム・イン・マーケット)」を重視し、市場に長く居続けることの方が、タイミングを図ることよりも遥かにリターンに貢献するとする。
ドルコスト平均法のような定期的な積立投資は、この戦略と非常に相性が良く、感情に流されることなく投資を継続するための有効な手段である。
投資における「コスト」の見えにくい罠
エリスは投資における「コスト」についても非常に鋭い指摘をしている。アクティブファンドの信託報酬や売買手数料、さらには乗り換え時の課税など、表面的には目立たないコストが長期的には大きな負担となる。
特に複利の効果を活かすには、運用コストを可能な限り抑えることが重要である。これにより、リターンが確実に積み上がっていく。近年では、ネット証券を中心に極めて低コストの投資信託が登場しており、エリスの哲学は時代を超えて実践可能なものとなっている。
まとめ
『敗者のゲーム』は、単なる投資理論の紹介にとどまらず、「いかにして自分の行動をコントロールし、賢明な投資家として市場に居続けるか」を教えてくれる一冊である。市場に勝とうとするのではなく、市場とともに歩み、ミスを減らすことに注力する──その姿勢こそが、長期的な資産形成を成功に導く鍵である。
エリスの主張は、インデックス投資や長期投資、低コスト運用といった基本的な投資戦略を改めて正当化してくれるものであり、FIRE(Financial Independence, Retire Early)を目指す人々にとっても非常に有用な教訓となる。市場の喧騒に惑わされることなく、冷静に、そして一貫して行動する──それこそが、真の「勝者」への道なのである。
もっと早く読んでおけば
もっと早く読んでおけば、くだらない回り道をしないで済みました。
でも、今からでも遅くないと考えています。
インデックス投資は王道ですね。
35歳の甥っ子にも読むように勧めました。