あらすじ
三十代半ばの高橋泉は、別居を続ける夫との行き詰った関係に苦しんでいた。仕事帰りのある日、泉は駅のホームで女子高生の島原千代子と出会う。千代子は自由な生き方を認めない両親との関係に悩み、命を絶とうとしていた。心の痛みを分かち合ううち、ふたりは恋に落ちる。お互いをかけがえのない存在だと気づいたふたりは、泉の一人息子を連れて、星がきれいな山里「マチュピチュ村」へと駆け落ち。やがて千代子は、泉と出会う前に関係を持った男性との間の子どもを出産。長女が加わり一家は四人に。ゲストハウス開業、念願の結婚式とハネムーンツアー、千代子の闘病、そして……。喜びと悲しみに彩られた十六年間の軌跡を辿る、新たな家族小説の誕生。
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Posted by ブクログ
好きな人と共に歳を重ねること、家族が平和に暮らすこと。ありきたりだけど、それ以上の贅沢があるだろうか。
性別なんて関係なくて、好きな人と大切な時間を刻めることが幸せなのだと思った。自分がもっている花の色は変えることはできないから、その花を最大限に素敵に魅せる為に沢山水と栄養と幸せを与えてあげたい。自分のこころを癒してくれる一冊だった。
Posted by ブクログ
駆け落ち
高橋泉
草介のお誕生日会の準備の帰りの駅で千代子を目撃する。仕事帰りの駅で千代子に話しかける。千代子を好きになる。離婚の慰謝料で車を買い、三人で街を出る。
草介
泉の息子。
島原千代子
女子高生。駅で自殺しようとしていた時に、泉に話しかけられる。泉が通っていた近所の島原医院の娘。家族にレズビアンと告白したが、受け入れられなかった。
千代子の父
島原医院の先生。
千代子の母
宝
千代子が産んだ赤ちゃん。草介が命名。
ゲストハウス虹、誕生
宝
生後半年を過ぎた頃から、赤い色に並々ならぬ執着を持つようになる。
泉
カカ。
千代子
ママ。
草介
ボス
集落をまとめるリーダー的な存在。村で生まれ育ち、大阪に集団就職し、関西出身の男性と結婚。妊娠を機に、故郷に戻ってきた。
桜子
千代子の従姉。
スズキ
ゲストハウスの宿泊者。
ハネムーンと夜の虹
草介
コールセンターに就職。
泉
千代子
宝
エピローグ、じゃなくて、これから
宝
草介
千代子
泉
Posted by ブクログ
この本を読んで、恥ずかしながら「虹」の意味することを初めて知った。個人的には、「LGBTのみならず、誰でも受け入れる」という広い意味で捉えている。各章の語り部からすると、主人公は4人ということになるのだろうか。当初は世間から奇異の目もあっただろうが、とても長い時間をかけて社会に溶け込み、周囲の理解を得ていく過程が描かれている。これは数か月、数年間ではなく、本当に長い年月である。愛する家族との絆があってこそ、4人が「自分の大切なことに素直である」という芯を強く持って「家族」を続けたのだろう。
強さの証として、度々登場する「うちのニーニーは、世界優しさ選手権で上位に入る」という言葉が印象的であった。ニーニーの「その後」は描かれずに小説は終わってしまうのだが、どうか、ニーニーが幸せな人生を送って欲しいと願っている。
Posted by ブクログ
血の繋がりはないけれど、そこには強い絆でしっかり結ばれた家族の新しいカタチがそこにある。
同性同士のパートナーの物語と思いきや、世間に中々認められない現実に直面しながらも、自分たちだけでなく辛い気持ちを持つ人たちを食や心地良さ他人を思いやる気持ちで丁寧に癒していく事を実現していく生き方に感動を覚えた。
草介の心の優しさ、それ故に言いたい事を心にしまって誰も傷つけず堪える姿。最後に千代子のことが好きだったなんて絶対に口には出来ない想いを抱え、衰え亡くなっていく千代子の姿をどんな気持ちで見ていたんだろう。考えると涙が溢れた。
家族が住み慣れた家から一人ずつ欠けていく空虚感は誰もが経験する事だけど、本当に辛く寂しく心の穴は中々埋まらない。
小川糸さんの作品は2冊目だけど、明暗が激しく読み進める手が止まらず流石!だと思う。
Posted by ブクログ
久しぶりの読書。あっという間に読み終えた1冊。
読んでいる最初のうちは千代子と泉の出会ってからのあまりにも早い駆け落ちに面食らってしまって読みながら恐らく眉間に皺が寄っていたと思う。でもだんだんと彼女らのやり方に、ペースに慣れていって自然とページを捲っている自分がいた。マチュピチュ村の住人のような距離感で彼女らを見守っていたように思う。
以前小川糸さんの「ライオンのおやつ」を読んだときも、死という題材を扱っているにもかかわらず温かい気持ちになったのを思い出した。今回の「にじいろガーデン」はよりしんどくなる場面が多くて終始温かい気持ちになるというわけにもいかなかったけれど、小春日和のようなじんわり温かい描写もやはりたくさんあった。
千代子さんの最期があまりに美しくて羨ましくすらなったなあ…
血の繋がらない家族が一生懸命家族を強固なものにしていく様子に、自分の家族は血が繋がっているけれどその努力を怠ってはいけないなと思った。せっかくのオハナを大切にしないと、ね。