あらすじ
劉邦にかげのように寄り添った男女たち
怠け者で口八丁の男が天下の覇者に――漢の始祖・劉邦の勃興から崩御後までを、敵、臣下、息子、学者など同時代人の目で描く連作集。
※この電子書籍は1999年4月に文藝春秋より刊行された文庫の新装版を底本としています。
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Posted by ブクログ
前漢の創始者・劉邦と関わりを持つ人物を主役に据えた5つの連作短編集。
劉邦の長子・劉肥を描いた『風の消長』や、漢王室の儒者の宗家・叔孫通を描いた『満天の星』などは特に読み応えがあった。
とりわけ『風の消長』に関しては、本作で現れる劉邦像が、同作者の長編『劉邦』で描かれたものよりも、もっと茫漠としてあやしく、しかし不思議な大きさと暖かさがあるものとして映し出されており、劉邦像として面白く感じられた。
捉えどころのない劉邦を考えるには、本人や臣下や2代皇帝の目線よりも、愛憎の入り混じるべき劉肥の目線が必要だったということなのかもしれない。
劉肥と駟鈞との関係性も、短い文章ながら魅力的に描かれていて、幕引きの文も美しい短編だった。