あらすじ
埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した! 東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は? その逃避行の日々とは? 映像化で話題沸騰の注目作!
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Posted by ブクログ
今、読み終わって言葉もなく…心が放心状態になっている。
一家3人を、それも幼い2歳の子どもまでをも惨殺した犯人として、現行犯逮捕された、犯人鏑木慶一。
その後刑が確定し、死刑囚となった彼は、拘置所から脱獄し、逃亡を続ける。
顔を変え、名前を変えて
その様々な場所での彼の行動は、どれも立派で他人に親切で、心優しい、人の痛みのわかる好青年。読んでいるうちにどんどん彼が好きになっていく。「この人は犯人じゃない」と思えてくる。逃げ続けて!と応援したくなってくる。
そして、彼が逃亡を続ける理由と、事の真相が彼の口から明らかにされた直後、唐突に終わる結末。あとがきで作者が触れているように、あの結末は悲しすぎる。それでも、あの結末であるからこそ、この物語が輝いている。
人が人を裁くことの難しさ。
それでも、たとえ一度判決が出たあとでも
もしもそれが冤罪だと、間違っていたかもしれないと気がついたなら
絶対に揉み消すことだけはしてはいけない。司法や警察の威信やプライドなんてクソ喰らえだ!
だって人一人の命がかかっているんだから。
この物語を読むと死刑制度について考えたくなる。
もちろん、死刑の必要性もわかる。
悪いことをしたら、最悪死ぬことになるんだよ、という抑制。そして遺族の気持ちを考えれば。
目には目を、死には死を
だけど、それは国が正義という刀を振り翳して行う「殺人」なのだ、と思ってしまう。まさに犯人と同じことをしていることになるのだ。
それぞれの場面で鏑木慶一に助けられた人々が、最後に一つに纏まって彼の無実をはらしていく。
彼にはこんなに味方がいたのだと…
こんなにわかってくれている人がいたのだ、と。
本当に、彼はどんなときでも諦めていなかった。そしてどんな時でも、自分よりも他人を尊重していた。
最後の判決は、彼のもとに届いただろうか。
それでもやはり、彼には生きていて欲しかった。彼のような人が死んでしまう物語には出会いたくなかった。
一晩経って思うのは…
この物語では、鏑木慶一からの目線で書かれている部分はほとんどない。
逃走劇を繰り広げている間、彼が何を見て何を感じていたのか、何を思っていたのかは書かれていない。すべて周りの目線からの情報で、読者が考察するしかない。
一体どれほどの絶望が彼を包んでいたのだろう。彼が他人にかけた優しさは全て彼がかけて欲しかった優しさなのではないか。
山形や我孫子で彼がどこに住んでいたのか、どう暮らしていたのか
顔を変えていくことにどんな方法を使っていたのか。身体の痛みと心の痛み
それでも、前を向いて…
考えると眠れなくなる
忽然と姿を消すときの彼の胸中を思うと…
もし、自分が鏑木慶一と出会っていたら、そして彼の正体に気がついてしまったら
私はどう思い、どう行動しただろうか?
3人の殺人者であり死刑囚
世間が流すその圧倒的な情報と
目の前の人物として鏑木と共に行動し感じている自分の気持ちと
どちらを信じられるだろうか
Posted by ブクログ
あっという間に読めた。
鏑木が出逢う人たちの目線で物語が進んでいくが、どのキャラクターもすごく魅力的で、感情移入しやすかった。自分だったらどう動くだろうか、というところまで想像してしまった。
Posted by ブクログ
面白すぎて★6をつけたいくらい。
1章を途中まで読んだあたりでこの本にとてつもない面白さを感じ、p615という長さながら、そのまま夢中で暇な時間に読み、3日ほどで読み終えた。
章ごとに舞台となる職場と人間が様変わりし、ブラックな土木での共生関係、男運のなかったビジネスウーマンとの共同生活、スキー場旅館での一期一会な仲間、パン工場や新興宗教での中高年女性達のリアルな話と井尾由子との繋がり、グループホームでの井尾由子との接触と完結。
鏑木慶一という知的で気配りができ、しかし事件絡みで繕うのが難しいところはおや?と思うところもある、でもこんな優しい人が本当に人を殺したのだろうか?という、良心的なキャラクターが魅力的だった。
最後に各章の人物が集結して話し合っているところは特に胸熱だった。当の本人は呆気なく亡くなってしまったのが本当に残念でならず、ラストに無罪となり喜びの咆哮をあげているのもとても嬉しかったし、読後も満足感は強いのだが、鏑木慶一は不在という点で、やるせない気持ちも残る。
この声が、きみに届いているだろうかーー。
映画やドラマは未視聴なのだが、ちょうど家族がドラマ版を最近視聴していたのでざっくり内容合わせをした。尚、映画版もドラマ版も本人は生き残ったらしい。
ドラマ版は全部で4話なのもあって余計に省略されている。スキー場は登場すらなく、弁護士は橋から落ちようとしていた。パン工場も登場せず、新興宗教のみ。主人公が現場に入ったきっかけは、度々その家の前を通っており、以前からピアノの音が聞こえ、亡くなった母だか父だかを思い出す音だったから。また、例の模倣犯へ弁護士と女性ライターが訪問し、主人公の事件もお前がやったんじゃないか?というような内容を引き出す場面もあり。ラストは裁判で本人もおり、裁判官が冤罪で申し訳なかった旨を述べ、終わりらしい。
なお、現実的には悲鳴が聞こえたとしても、いくらお人好しにしたって、知らない家の中へ侵入するだろうか?運が悪ければ自分も刺されていたかもしれない。医者や看護師でもなく身内でもないのに、血溜まりの中でまだ息があるとしても、こんな状況下で主人公のような行動をとる人物はどのくらいいるだろうか、などという突っ込みどころはある。
指名手配犯が定期的に転職し、色んな仕事をこなしながら有能さを発揮し、このまま居てくれたらこの職場も安泰だね〜な雰囲気が出てきたら次の新天地へ消えるという話でシリーズ化して欲しい笑
Posted by ブクログ
おもしろすぎて一気読み。
誰も本当の正体に気が付けなかったのが
何度言えない。
悲しいとか
やるせないとか
そんな言葉では言い表せない感じ。
鏑木の無実だからこその生への執着と
絶望を追っているような読書体験だった。
弁護士、浩子
それぞれが少しでも相手や自分を信じていたら違った結果になっていたのではないかとも思うど
浩子に至ってはそうせざるおえない精神状態ちったのだろう。
判決が言い渡されたときに鏑木はいなかったから
救いのある結末とは言い難いけど
無罪が認められて
鏑木認められてよと言いたくなるよいなラストだった。
Posted by ブクログ
切なく、胸に重く残る物語だった。
読み進めるほどに「どうにかして救うことはできなかったのか」と考えずにはいられず、登場人物の苦しみに強く感情移入してしまった。冤罪事件というテーマは決してフィクションの中だけの話ではなく、いつ自分や身近な人に降りかかってもおかしくない現実なのだと突きつけられる。
作中では、警察や司法の判断の脆さ、そして人間の思い込みや都合が生む残酷さが浮き彫りになる。結局のところ、人が人を裁く以上、完全な正義など存在しないのかもしれない。だからこそ、この物語はただ悲しいだけで終わらず、読者に問いを投げかけてくる。
文字で追ったからこそ感じた痛みや違和感を、映像ではどう描くのか――
この物語を、今度は映画でも確かめてみたいと思った。
Posted by ブクログ
600ページ位の長編なのに面白すぎて1日で読んでしまった。
鏑木を何で死なせちゃったの?って思ったし後書きで作者も謝ってて笑ってしまった。でもこういうことは現実でもあるんだろうなとやるせなくなった。
ハッピーエンドではないけど鏑木が殺人犯ではないのを見抜いていた人たちがいたのが救い。ネットのニュースで会ったこともない人を糾弾するのは良くないことだなと改めて思った。
一番好きなのは渡辺さんが冤罪を主張して鏑木も泣くシーン。ラストを読んだ後に読み返すと感慨深くなる。人を疑ってかかるのはやめようと思える小説だった。
Posted by ブクログ
文章が読みやすく展開もテンポが早いので一気読みできる
読んでいる最中、読後、色々な意味でアンニュイになる
何が真相か最後の最後まで揺さぶられる
その果ての絶望というか、虚しさというか、もうなんかやるせない感覚が身体を蝕んでいく(褒め言葉)
Posted by ブクログ
ラストが切ない…。それぞれの章もしっかりとした設定で、丁寧に書けていたと思います。ただ、求心会の所は、鏑木がなぜ求心会の闇を暴いたのか分かりません。そこだけがちょっと引っかかりました。
Posted by ブクログ
読めば読むほど本を閉じることが不可能!!
他のコメントにあったように、ずっと読みながらねえちょっとって突っ込みたくなりました。
そんな良い人してないでただ息だけしてなよって。
ただもうそれが答えなのがやられてます…
Posted by ブクログ
無罪を信じられる関係を築くには何が必要なのだろう。作中で鏑木を信じてくれた人たちはけして長い年月を共に過ごしたわけではない。嘘の身分で接しながらも、出会う人々に誠実に向き合う人柄か。本来の彼はそういう真っ当に生きてきた人なのに、結論ありきで一人の人生が歪められてしまう冤罪の罪深さ、怖さ、暴力性に思いを馳せた。
Posted by ブクログ
それぞれのエピソード部分は、サラサラっと読み進めたけど、ラストの章はやはり読み応えがあり止まらなかった。
真実が語られて無実が認められて鏑木が救われる…みたいなのがベストなのかもしれないけど、
そうじゃなかったのが、返って心に響いた。
更に、ホントは救えたのかも知れなかったのに…って言う井尾由子の告白が何とも切なかった…
でも、舞が四茂田に鏑木の正体を話したのに、
2人で談笑してたって所で、舞に「もう遅いよ」って言ったのは、アレなんだったんだ?そこはわからんかった。
どっか読み落としたのかな?
Posted by ブクログ
脱獄した死刑囚の逃避行。警察とドンパチしたりというわけではなく、社会に密かに溶け込んでいく。序盤から中盤までがお仕事体験ツアーみたいな感じで特に面白かった。ただ、終盤はあまり納得いかない。強引に真犯人を登場させなかったのは素晴らしいが、裁判の過程まで丁寧に描写して、彼の悲痛な叫びが報われるまで見届けたかった。冤罪というテーマと向き合い、鏑木慶一という人間の心の奥底まで全てを余すことなく曝け出して欲しかった。だが、あとがきで本作はあくまでエンターテイメントだと言っているので、それなら仕方ないかとも思う。