あらすじ
三十年間、毎日酒を飲み続けた作家は、突如、酒をやめようと思い立つ。絶望に暮れた最初の三か月、最大の難関お正月、気が緩む旅先での誘惑を乗り越え獲得したのは、よく眠れる痩せた身体、明晰な脳髄、そして寂しさへの自覚だ。そもそも人生は楽しくない。そう気づくと酒なしで人生は面白くなる。饒舌な思考、苦悩と葛藤が炸裂する断酒の記録。
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Posted by ブクログ
以前から気になっていた断酒エッセイ。購入して読んでみた。
今まで読んできた断酒本と違うのは、酒飲みの正気は酒を呑みたいという自然な欲求に従っているのだから、断酒は狂気故というところから始まること。故にまずは正気パートとして前半は酒飲みのグダグダのようなことばかり描かれている。
中盤、「幸福にはなる権利などない」というあたりから流れが変わってくる。「幸福でなければならない」と考えるから安易に多幸感を得られる酒を選び、幸福感を続けたいから酒浸りになる。
「人生楽しまないといけない」と考えれば楽しいことなど訪れない、何故なら義務感を持つ以上そこに楽しさが無くなるから。義務の辛さを忘れるために酒を呑み楽しいような感じを味わう。
自分を普通以下のアホと思え。と言っても自分を卑下するのではなく、普通のハードルを上げる。自分が偉いと思うから腹が立つストレスも感じる。自分がアホやと思えば、学びも得られる成長もできる。
かといって卑下しすぎない、普通の基準を作る時他人と比較しない。他人基準で無ければ卑屈になることもなく、他人を卑下することもない。
中盤のこのあたり、断酒を行う時の心構えとして非常に大切なことで、他の断酒本では細かく書かれていない項目なので目が鱗だった。
後半の断酒による効果効能の部分もよく読むこととはいえ、やはり励みになるし良かった。町田康節もさく裂し面白く読めるだけでなく、切り口の独特さで何度か読み返したくなる名著。購入して良かった。