あらすじ
1921(大正10)年――、雑誌『改造』の求めで連載を起こすも、関東大震災下の「甘粕事件」により、未完で遺された傑作。「陛下に弓をひいた謀叛人」西郷南洲に肩入れしながら、未来の陸軍元帥を志す一人の腕白少年が、日清・日露の戦役にはさまれた「坂の上の雲」の時代を舞台に、自由を思い、権威に逆らい、生を拡充してゆく。 日本自伝文学の三指に数えられる、ビルドゥングスロマンの色濃い青春勉強の記。
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Posted by ブクログ
大杉栄、20歳過ぎまでの前半生。どこかルソーの『告白』を思わせる。
幼い時から喧嘩好きと女好き、早熟な性体験、権威に対する反抗、猫殺し、陸軍幼年学校での騒動や男色とドロップアウト、中学編入の替え玉受験、東京外語での勉学、などなど、いろいろなものが詰まっている。これを読んでゆくと、彼のアナーキーさはその性格由来なような気がしてくる。
新潟の新発田で4歳から14歳までを過ごした。その町の様子が詳しく出てくる。新発田は城下町の風情を残しながら、陸軍連隊がおかれた軍人の町(栄の父も職業軍人だった)。当時は相当に雪深かった。ほかの土地にあって、彼はつねにこの「新発田の自由な空」――いわば彼の原風景――を思うのだ。
最後に、おまけのように、葉山の日蔭茶屋事件――その発端となった妻の保子、愛人の伊藤野枝、神近市子との三角(or四角)関係――の真相も明かされている。これもかなり露悪趣味。