あらすじ
演出家、劇作家、俳優、映画監督、小説家とマルチに活躍する松尾スズキ、三年ぶり待望の新作小説。
放送作家見習いの「俺」は、十年間師匠と仰いでいた人物が自殺した日、映画館で偶然出会った女・スミレにいきなり結婚を申し込む。スミレは離婚したばかりだった。
することのない俺とスミレは、酒浸りの日々を送るようになる。
そんな中、俺を捉えて離さないのは、師匠が手首に入れていた矢印形の刺青のことだった――。
次々と地獄の扉が開いていくような男女の転落物語でありながら、どこかに人間存在を見つめる苦い笑いがにじむ松尾ワールドの真骨頂。
(本文より)
今、自分に必要なのは、人生をなめている女だ。
酔っぱらってくれ、俺のそばで。
あと一時間でもいい。一五分でもいい。
いや、今わかった。
俺には俺より酔っ払ってくれている人間が、隣に、必要なのだ。
もう、ずっとそうだったし、きっと今日からもずっと。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
意味深なタイトル。酒に溺れた師匠、スミレ、山城、俺…彼等は狂気に満たされながら破滅の道に突き進んでゆく。不快感を抱きつつも、矢印の行方を求めズルズルと物語に惹き込まれていった。
Posted by ブクログ
目が離せない中毒性。酒に壊れていく人間模様。こういうの、嫌いじゃない。むしろ実感としても近くに感じる面もあり、怖い物見たさだったり共感だったり。歪みは修復されないまま、全てが歪みの中で進んでいく。矢印が示すのは元に戻れない事もまた。
Posted by ブクログ
面白すぎて時間経つのも忘れてお風呂で一気に読んじゃった、、読み切る頃にはすっかり冷えていたお湯。
松尾スズキさんやっぱいいなー。もっとじゃんじゃんぶっ放してほしい。うわーとかないわーとか思いながらもどこかわかるーってなるのがね。ぶっ壊れていることに気づかない人へ
Posted by ブクログ
ほぼ主人公のひとりがたり。
しかし読まされるものがある。
めくるめくというか流れるように堕ちるように沈むように溶けるように崩れて曖昧になっていく日々と記憶。
ないまぜのごちゃまぜ。
回想が主人公の視点から語られるが、後半すべての記憶の中で語られていなかったことが明かされていく。
酒を飲まなければ生きていけない人たちが、酒を飲みつづけ自身を少しずつ殺していく。
それでも何かがないと今日を明日を生き延びることはできない。
依存することの怖さと心地よさがある。
私は物質には依存していないが、依存していることはある。
これさえあれば生きていけるものがある。
そのために生きているし、それがあるから生きていける。
だからそのために自分が死んだとしてもそれはそれでいい。
今日を明日を生きるためにしていることが、未来の自分を殺したって良い。
この本で嫌いな部分は、人を罵倒する時、豚という言葉やクソを使うこと。
豚は人間より下の存在ではないし、侮辱していい命ではない。
クソも同様。
糞が世界をまわしている。(人間の糞は除く)