あらすじ
おとなになりたいと背伸びしている小6の朱理。転校生の理緒が抱える痛みを、暗闇を、知った朱理が、大切な友だちを守るためにできることとは? オオカミとのたたかいかたを描く問題作。
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Posted by ブクログ
背が小さく、家族からもクラスメイトからも相手にしてもらえない“あかずきんちゃん“こと朱理と、親に精神的虐待を受けている“りぼんちゃん“こと理緒の、救済の物語に胸が打たれた。
朱理はみんなから相手にされず、そのなかで転校生の理緒だけは真っ直ぐ朱理と向き合ってくれた。そして朱理は理緒が父親から怒鳴られたり、バトミントンをすることを強要されたり、父の顔色を伺いながら生活していることを聞き、理緒を何とかして救えないかと孤軍奮闘する。
そのなかで朱理は、彼女の唯一の味方で今は亡きおばあちゃんが言っていた言葉と向き合っていくことにもなる。
『この世界には、オオカミがたくさんいるのよ』
『目に見えないオオカミはね、姿かたちを持たないの。(中略)するどいつめときばで胸を引きさいて、人間の心を食べてしまおうとする』
『あなたもだれかをオオカミから守るために、たたかわないといけなくなる日が、必ず来るのよ』
その言葉を胸に朱理は理緒を救うべく考えるものの、理緒の親の結婚記念日に事件は起こる。その日の夜に朱理のもとに、理緒からの切羽詰まった電話が届く。それはすすり泣き、今にも消えてしまいそうな理緒の声だった…
果たして朱理は理緒を救えるのかー。
そして朱理がオオカミと戦うために、どんな方法を考え抜いたのかー。
これらの真相にたどり着たとき、鳥肌が止まらない。
こんなにも子どもの偉大さ、そして虐待について考えたことはなかった。いち大人として、子どもを侮りすぎていたのかもしれず、とても恥ずかしい。
だから今からでも私は、朱理の声を聞き取れる大人になりたいし、理緒の辛さを少しでも拭ってあげられる大人でありたい。ありたいというより、ならなくちゃいけないと強く思う。
そんな人が1人でも多い社会になるように、本作をより多くの人に読んでもらいたいなぁ。
村上先生の贈る『祈りの物語』は、
私の胸にグサッと刺さって、
私の胸に一生抜けない道標を作ってくれた。
本当に偉大な作家さんだ
p.97.98 言葉(2.魔法使いとしての第一歩)
「言葉?」
「自分にしかとらえられない心を、目に見える〈文字〉や、耳に聞こえる〈声〉にして、相手に伝える力。そうやって、相手の心をふるわせ、ゆさぶり、動かす力。」
「言の葉の力だ」
p.143 勇気の歌(3.夜の森の奥で)
「♪なぐさめなんて言えない
「がんばれ」なんて言えない
走り続けるきみに
よりそえる言葉なんてない
思いやりとかいたわりとか
なんの役にも立ちはしない
傷つけ続けて生きるきみに
共感なんて侮辱とおなじ
ただ 祈るようにうたう
生きぬくための勇気の歌」
Posted by ブクログ
軽い話かと思っていたら・・・
見事に裏切られた。
でも、児童書だけあって全く児童虐待など縁のない子が読んでもショックを受けすぎない、で、解決するところがほっとする、
実際にはそんなハッピーな解決は少ないし、大人向けだと悲しい結末も多いのだけれど・・・
お話を書いている、そんな設定がいい。
オオカミにはちょっと申し訳ないけど、オオカミと表現される様々な悪いこと、わざわいや不幸、苦しみ、
子どもは「助けて!」って声を上げていいんだよ、大人は子どもの心を大事にできる大人でなくちゃ!
Posted by ブクログ
中村理緒ちゃんが、お父さんに、心理的虐待をされていて、それを、助けてあげる朱莉は、ものすごく勇気があるなと思いました。もしも、友達がされてたら、絶対に見てみぬふりをしないで助けたいと思います。
Posted by ブクログ
題名からは意外なほど、根が深い問題が書かれている。
理緒ちゃんのように、身体への暴力とは違うかたちで虐待されている場合のほか、実際に体罰を受けて命を落とした子供の報道も後を絶たない。
助けて、と声を上げられない子。
悪いのは自分だと思い込んでしまう子。
そしてその場にいるはずの、被害者でもあり加害者でもある別の大人の声が届けられる方法はないのだろうか。
朱理にとってのおばあちゃん、理緒にとっての朱理みたいな存在が、当たり前にあればいいのに。
VDやストーカーが、相手やその家族を殺してしまう事件を見るにつけ、人間の心の弱さや難しさを実感する。
暴力が虐待の連鎖であるなら、個人の問題ではなく、社会の問題として考えることが基本かもしれない。
Posted by ブクログ
可愛らしい表紙からは想像がつかない、
「わざわい」という「自分ではどうしようもできない悪いもの」をオオカミになぞらえて語られる物語。
終盤の怒涛の展開には涙が止まりませんでした。
いや、、すごかった。
すごくて言葉にならん。
前半の赤ちゃん扱いされる主人公のくだりが、
いやというほど効いてくるんですよ、、後半。
いやほんと、ものすごいです。
大人の不在が気になるお話が多いなか、
最終的にはきちんとまわりの大人が機能します。
はあ、安心。ほっとした。
現実もこうでありますように、
公的機関で公的な支援がうけられますように、
まわりの大人が、困っている誰かをきちんと助けてあげられますように、
という、作者の願いというか、強い思いをかんじました。