あらすじ
日本という異国に住まいながら、日本人と外国人の間をさまよう人々を巧みな心理描写と独特の文体で描いた短篇2本。
「鴨川ランナー」第二回京都文学賞受賞作。選考委員の満場一致で選出された。日本から京都に仕事に来た西洋人の日常や周囲の扱い方に対する違和感を、「君」という二人称を用いた独特の文章で内省的に描く。
「異音」・・・福井の英会話教室を突如やめる羽目になった外国人の主人公は同僚の紹介で結婚式の神父役のバイトを始める。
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Posted by ブクログ
『異国で外国語を習う人、教える人のためのバイブル』
日本語を練習したいのに、英語で話しかけられる。
自分では決して使うことのない英語の言い回しを教えさせられる。
そんな外国語学習者、教育者の葛藤を、アメリカ出身の作者が、日本語で鮮やかに描ききった作品。
Posted by ブクログ
『鴨川ランナー』
日本で暮らし仕事をしても、いつまでも周囲からは異質な存在、記号として扱われる「きみ」。日本語を話しても、外国人の話すニホンゴだと受け止められる。苛立ちながら、それでも縁を頼りに日本で生き続け、谷崎を研究し15年。もちろん十分に日本語を操れるようになっている。が、未だ外国人の枠を取り払うことはできず、記号でなく個として生きられているのかという虚しさ。
日本人の私も同じように、集団で生きる限り、集団に応じて記号を付けかえて生きている。記号だろうがなんだろうが、人生はただ目の前の道を一歩一歩、足を出して進み続ける以外にない。と、鴨川ランナーでもある「きみ」の姿に教えられるし勇気づけられもする。
『異言(タングズ)』
英会話学校が倒産し、職と住まいを無くしたアメリカ南部生まれの男性が、生徒であった女性の家で同棲を始める。結婚式の雇われ牧師となった彼は、周囲に求められるまま、カタコトの日本語を話す外国人として仕事をする…
英会話教師をやめ、つなぎで行っていた在宅翻訳業の仕事の最中、自身の言葉を生み出せないもどかしさが身体の不調となってあらわれる。この箇所に、心がざわざわして仕方なかった。自分のものでない言葉を話さざるをえないって辛いなと。
Posted by ブクログ
Audibleで聴いた。
日本に住んでいる外国人(アメリカ人)が日々感じる違和感などが書かれていて面白かった。
なんとなく、そう感じるだろうなとわかるようなこともあった。例えば、異文化交流会?に参加すると、外国人というだけで特別扱いされるけれど、それは自分個人に興味を持ってくれているわけではなくて、英語を話す外国人として興味を持たれているだけ。というところなど。
外資系の会社で働いている時、飲み会の席で、少数の外国人の社員は、日本人達に囲まれて、そんな感じだったな〜と思った。
そういうようなことが、日本に住んでいる外国人の視点で書かれているのが面白い。