あらすじ
おびやかされる、沖縄での美しく優しい生活。幼い娘を抱えながら、理不尽な暴力に直面してなおその目の光を失わない著者の姿は、連載中から大きな反響を呼んだ。ベストセラー『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』から3年、身体に残った言葉を聞きとるようにして書かれた初めてのエッセイ集。
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Posted by ブクログ
沖縄の怒りに癒され、自分の生活圏を見返すことなく言葉を発すること自体が、日本と沖縄な関係を表していると私は彼に言うべきだった。
上間陽子さんのこの文章、私も忘れません。
静かな部屋で、読みました。何度も。
Posted by ブクログ
ノンフィクション大賞受賞作品だったのですね。でも本書はエッセイですよね。ノンフィクションといえば確かに内容的にもそう言えますがエッセイ要素のほうが大きい。
たくさんのレビューがすでにあるので気後れしますがみなさんとはちょっとズレたところで少し感想を。
本書通読でまず思ったのは、食べられることが生きる力であるということ。それは私自身がいつも思っていることでもありますが本書を読んで改めて痛感。
まず最初の章は著者自身がご飯が食べられなくなった話から始まります。
そしてその後の章では娘さんや調査で関わった人たちや母、祖母などの話が出てきますが、著書が娘さんの食欲に気持ちを支えられていると感じられる箇所が随所に出てきます。
本書の中でもおばあちゃんのことを書かれた「空に駆ける」が一番好きでしたが、その中でも手術したあとのおばあちゃんがご飯を食べなくなり眠れなくなってぼんやりするようになった話が出てきます。その後対策を講じた著者の母が介護計画を立て一緒にご飯を食べるようにしたらたくさん食べられるようになり眠れるようにもなったとのこと。
きちんと食べられること、人と関わることの大切さをつくづく感じます。
娘さんのキャラクターが本書の力強さ、清涼剤にもなっていて読んでいるこちらも力をもらえます。それにしても「おせんべいがもらえるから誘拐される」には大笑いしてしまいました。いや、親御さんにしたら笑い事には済まされないとはわかるのですが、子供ってすごいなと素直に思わされるエピソードでした。
沖縄に住まない人間にとって沖縄の真実についての無知さ加減には埋めがたい断絶があるのだなと理解しました。
「富士五湖」や「湘南の海」に土砂を入れられるといえば吐き気を催すような気持ちは伝わるだろうか?という著者の言葉には怒りはもちろん感じるけれど伝わらなさをもどかしく感じる悲しみのようなものも感じました。
生活の日々の中で感じている、そこに住む人にとって黙らざるを得ない真実というものは、他所に住む人間にこうして伝えられても血肉として体感するようにはやはり理解はできないことだと思います。こういうと冷たく感じられるかもしれないけど冷たいかそうでないかではなくそれは現実だと思います。
けれどそういう中から「本当には理解はできないと思うけれど知らないことにはしない、知ろうとする努力はしていく」こと、「今は黙るしかなくても上げられる声は上げていかなくてはいけない」ということを、他所に住む人間として頭に置いてこれからはしていかなくてはならないだろうと思いました。
そう思ったのはこれを読んだ私たちは著者から「海をもらった」からでしょう。