あらすじ
成城署の捜査主任真名部警部は、とある縁である少年と知り合うことになった。岩井信一、年齢からいうと高校受験期ぐらいの少年である。彼は重度の脳性マヒだった。だが、親しくなるにつれて、この少年の予想外の聡明さに驚嘆するようになる。ある時、約束していた映画鑑賞を突発事件のためすっぽかしてしまったお詫びにと、その事件の経緯を話して聞かせたところ……!~ 安楽椅子探偵の歴史に新たな一ページを書き加えた連作推理短編の傑作であり、不可能犯罪や奇抜なアリバイ・トリック等を満載した、著者の本格推理分野での代表作と言えよう。
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Posted by ブクログ
「ミステリ十二か月」より。表紙が違うけど。これが1976年という、私が生まれる前に書かれたというのが、すごいよな。脳性まひの少年が探偵役。身障者が外出できない、というのがこんなにもか、というほど如実。36年の進歩は大きい。テレビのリモコンすらなかったんだから。でも今でも身障者の外出はやっぱり大変なんだろうな。推理だけでなく、そういうとこも考えさせられるお話。5編の連作短編集。最後の「完全な不在」が一番面白かった。ここまで手の込んだ犯罪、現実に起こっても見破れる人はいないんじゃないか。つーか、他人が成り変わるなんて成り立たないか。この人のやつ、他にも読んでみよう。
Posted by ブクログ
いろいろと考えさせられる本だった。
仁木悦子氏の本の登場人物が主人公っていうのも不思議。
時代はウルトラマンタロウのころかな。
大きな団地での事件があったり、ゴミゴミした下町?での事件があったり。
真名部警部が下心ありありで通う岩井家。お母さんが美人で素敵、居心地もよさそう。
重度の脳性マヒでほとんど体の自由がきかない、言葉も慣れない人には聞き取れない。そんな少年、信一くんに最初は気晴らしに外の世界の話を始めたけれど、聡明な彼はどんどん事件を解き明かしていく。
どの事件も、そんなに難問でもないから、割とすんなり犯人はわかってしまうんだけど。
じわりじわりとこの時代にハンディキャップを持ってるということの悲しさ辛さが伝わってくる。
まだまだなんだろうけど、この頃に比べたら世の中もだいぶ良くなってるんだな。
二ヶ月外出してないとか、車椅子で乗れる車はまだ国内にはないとか。
四月病が切ない。
そして、最後の事件は後味悪いなあ。