あらすじ
痛ましい幼女誘拐事件の続発。難航する捜査。その責めを負って冷徹な捜査一課長も窮地に立たされた。若手キャリアの課長をめぐる警察内部の不協和音,マスコミによる私生活追及。この緊迫した状況下で,新しい展開は始まった! サイドストーリイに,黒魔術を狂信する新興宗教の生態や現代の家族愛を鮮烈に描きつつ,人間内奥の悲痛な叫びを抽出したこの野心作は,北村薫氏をして,書き振りは《練達》,読み終えてみれば《仰天》,と驚嘆させた,巧緻この上ない本格推理。
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Posted by ブクログ
慟哭、という題名からだいたいの内容は予想できていた。連続幼女誘拐殺人事件を巡り、捜査本部パートと、犯人である『彼』のパートが交互に書かれる。
文章がとても重厚で漢字の使い方がとても上手い。作者の貫井さん渾身のデビュー作だけど、早稲田大学出身なのですね。さすがです。
物語が進むにつれて、「ひょっとしたらこうなんじゃないか?」という考えは頭を過ったが、「いやでも違うかー」と考えを消させてしまう文章の組み立ての旨さ。新興宗教の闇や、警察内部のキャリア対ノンキャリアなど複雑な背景もある、とても重厚な物語。
でてくる人物の心情はとても良くわかる。自分自身が父親を知らずに育ったという背景もあり、不器用で娘に正面から向き合えない父親。それでも、いやそれだからこそ、娘への愛情は本物だったんですよね。
ここはたぶん、世の中の父親が娘に対する想いってこうなんじゃないかな、と思う。
たぶん、自分には手の届かないほど崇高で天使のような存在じゃないのかしら
だからこそ最後の恵理子に対面する場面の『慟哭』の描写に
読みながら心が引き裂かれる気がしました。
伊津子さんの生き方にも心が惹かれた。自分は妻の座には座れないけれど心から佐伯さんを愛していたのだろうことも
普段は奥さんに負けた気はしなかっただろうけど、唯一自分が叶わないとショックを受ける場面も…
「あたしが気づいていないと思ってるなら、あなたは相当の間抜けだわ」というセリフ。これは男性にはわからない女心ですよねー!!
自分の身体のことで身を引く場面にも涙が出た… もう少し出逢うタイミングが変わっていたらきっとナイスパートナーだったのじゃないかしら
社会的立場やプライド、本当の気持ちに蓋をして生きていかなきゃいけない生きづらさ
松本さんが新興宗教に出逢うことなく生きていくことができていたら。
いや、人生なんて『たら』『れば』の繰り返しなのは良くわかっているのです
私も後悔のない選択をしていかなきゃな、と改めて感じました。
「人は自分が信じたいことだけを信じるのです」 人間って弱いよね…
それでも、人間の強さも信じてみたいのです…
Posted by ブクログ
2025/07/14予約10
キャリア捜査一課長の佐伯が幼女誘拐事件に苦戦する様子と、生きがいを無くした彼の様子が交互に描かれる。彼が宗教にハマり、子を亡くしていることは途中でわかる。
ということを理解するまで何を読んでいるのかわからず…時系列がバラバラ、時間は解決しないまま終わる、ってこと?彼が誰なのかはわかったが3人目までの事件の犯人は、私にはわからず。
これがデビュー作とはさすが!
Posted by ブクログ
連続幼女誘拐事件を巡って、犯人を追う捜査一課長と犯人視点の二つの話が、読み進めていくうちに交わるまでに至り、展開が読めなくて面白かった。
また、とにかく陰鬱な内容で終始、暗い雰囲気のまま、ラストは叙述トリックが施されており、衝撃と同時に胸を撃ち抜くようなやるせなさ…
「慟哭」本来の言葉の意味よりも重く感じられた。
Posted by ブクログ
自分はかなり鈍い方だったけど、序盤で結構予想がついてしまったのは私もまあまあ小説に慣れてきたからなのかなと思った。
犯人パートのなんとも言えない陰鬱な雰囲気と宗教の禍々しさがかなりクセになる。
かなり読みやすいのに重厚な小説を読んでる気になれる不思議な文体。
娘を失う苦しみを誰よりも知っているはずの彼が、自ら誰かの娘を手にかけてしまう。それほど窮地に追い込まれた人間は自分の信じたいものしか信じられなくなっちゃうんだろうな。
Posted by ブクログ
面白かったー
読みやすい文章なのも良かった
こういう映像化不可。小説ならではの読み応えのある作品好きです。
しかしどんでん返し系って知りながら構えて読んだのでそこまで大きな衝撃なく。
こういうのはやっぱり全くネタバレなし、叙述トリックですよというのも知らずに呼んだらもっと面白いと思う。
Posted by ブクログ
帯の文句に負けない内容だった。この本のタイトルはすばらしい!娘を殺された心の穴を埋める為に新興宗教に没頭しついには娘を復活させる為に殺人までも犯してしまう話。なんとなく最後が想像できてしまったけどやっぱり衝撃は走った!
Posted by ブクログ
2つの舞台の時系列が追いついたり追い越したりな感じ?と思いきや…な結末。The推理小説を読んだー!という読後感。
推理小説好きからすると、佐伯=松本説はなんとなく勘づくとは思うけど、
・松本の娘が殺されているという前提を、佐伯章でどう結びつけるのか
・警察官名簿流出のミスリード
・松本が1回目黒いゴミ袋に入れて山奥に埋めたのに、佐伯章ではなぜ見つかったのか
・娘を蘇らせることが目的だった松本が、なぜ急に警察官(の娘)を標的にしたのか
・松本はなぜみんなから見たことがある、と思われたのか
・松本章で司摩が言った「事件が起き始めた時期と合わないし」という発言
などなどの違和感を持たせつつ、ぎりぎりまで佐伯と松本は別の人物であると思わせられるかという点で綺麗な構成力だと思った。読み返しは必至。
最後犯人がわからんのがなんとも悔しい…でもその伏線になりそうなものは書かれてなかったから納得っちゃ納得。宗教団体、幼女連続誘拐殺人事件、警察内部のあれこれという、90年代を表すような話題を事細かに描写している部分からしても、現実感のある小説だからこそ、前半の犯人は見つからないという結末なのかなという形で自分を納得させました。
個人的に、松本(佐伯)を丘本が追いかけていたのはすんごい当てはまった。
いつこさんの身の引き方は潔いというか早急な気もするけど…一見子どもに頓着がないように見えた佐伯に、黒魔術で子どもを蘇らせようとさせるまでの執着心があることを裏付けるために、必要な描写だったんだろう。
あと、久しぶりに舞台が少し昔(1990年代)の推理物を読んだから、今とは違う常識や世相、流行りを感じられて、その点でも面白かった。宗教ビジネスについて詳しく知らなかったから普通に勉強になった。
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▶なぜか印象に残った言葉
「佐伯の周りには、誤解と偏見が満ちている。それなのに、佐伯自身はそれを解消しようとはしない。丘本は佐伯の勁さを哀れにすら感じた」
Posted by ブクログ
佐伯英男
警視。捜査一課長。押川英良の隠し子。
石上恒也
警視。警察庁警務局監察官。
北村沙貴
幸せを祈る女性。白光の宇宙教団。
丘本重雄
警部補。警視庁刑事部捜査第一課。
斉藤奈緒美
昨年十二月十日から行方がわからなくなっていたが、遺体で発見される。多摩市在住。六歳。
香川雪穂
昨年十月十五日から消息が途絶えている。東久留米市在住。
甲斐健造
警視庁刑事部長。
三浦
健康と幸せを祈る男。福音の聖教教会。
北岡
巡査部長。東日野署。三十前。
佐伯の妻。警察庁長官のひとり娘。
押川英良
元法務大臣。
佐伯潤一郎
警察庁長官。佐伯美絵の父。
斉藤奈緒美の母
福音の聖教教会の教祖
福音の聖教教会の合宿に参加している銀縁眼鏡の男。
丘本の妻
隆
丘本の息子。
菜美子
丘本の娘。
胡泉翔叡
白光の宇宙教団の教祖。
谷尾
丘本の高校時代の後輩。東都新聞の事件記者。
川上基治
白光の宇宙教団。フィロソファス。後に脱会。
松本
街で幸せを祈られたり、新興宗教を見学する。松本の幸せを祈った沙貴が在籍しており、白光の宇宙教団に入会する。
篠伊津子
佐伯が捜査一課長に就任した直後からの付き合い。フリーランスのルポライター。日本ノンフィクションライター賞を受賞。
田中
白光の宇宙教団。
司摩
白光の宇宙教団に入会してから長い。
荒井
白光の宇宙教団。
香川雪穂の母
池袋のスナックで働きながら、女手ひとつで雪穂を育てていた。
山名和弘
東邦医科大学の犯罪心理学の権威。
佐伯美絵
佐伯の妻。
佐伯恵理子
佐伯の娘。
宅配ピザでバイトをしている学生。不審な車の目撃者。
刑事部補佐官
多田粧子
四歳。行方不明になった女の子。
三沢
西尾久署。
須藤
新興宗教の記事を書いた。週刊春秋の記者。佐伯の大学時代の知り合い。同じ法学部で席を並べた仲。
滝本慎一
刑事。連続幼女誘拐殺人事件を追う。冷静沈着で論理的。
大木
滝本の上司にあたる刑事。捜査方針で滝本と意見が分かれることも。
堀川
滝本の同僚刑事。チームの中で実務を支えるタイプ。
清水
鑑識や捜査資料を担当する警察関係者(作中に登場する脇役)。
宗教団体関係者
物語の鍵となる新興宗教団体。
教祖(名前なし/名無し)
新興宗教団体の中心人物。信者を強大に支配する存在。
教団の幹部・信者(複数)
物語に複数登場。個別名が出ないケースが多い。
事件関係者(被害者・周辺人物)
誘拐事件の被害者となった少女たち
美緒以外にも複数の被害少女が登場(個別名は明示されないケースが多い)。
被害者家族
事件報道の中で登場する家族や取材対応者(多くは固有名なし)。
佐伯の職場の同僚・上司
建設会社の人物たち(固有名少ない)。
マスコミ関係者
事件報道の中で登場する記者など(固有名なし)。
Posted by ブクログ
オチが綺麗すぎて、微妙だった。「時系列がずれている、主人公が犯人」というのは、なんとなく予想がついてしまったし、現実離れしすぎていてミステリーとしては無理があると思ってしまった。同列の時系列に見せるためのミスリードが荒く感じてしまった。「娘を殺された元警視課長が現警視課長の娘を狙う」というのが特にしんどすぎるなと。しかも単純に話に展開があまりなく、終始冗長に感じてしまった。謎が最初から最後まで、「犯人は誰か」のみだったため、物語に推進力がなかったのだと思う。自分の地元がこき下ろされていたのは面白かった。愛人の負けん気の強さと繊細さが魅力的だった。
Posted by ブクログ
どうして父親はあそこまで娘に執着できたのだろうという疑問が残る。生きている内に大した愛情表現もしていなかったのに。
これまでの人生が思い通りにいかないことばかりで、娘が戻ってくることを渇望する父親という像を手に入れるために、娘を復活させることが新たな生きる名目になっただけなのかなと思ってしまった。
Posted by ブクログ
まさか別方向で進んでいるストーリーが、同じ人物でさらに時系列がズレているとは、、
ラストに関心しましたが、そこに至るまでやや疲れましたね。
Posted by ブクログ
連続幼女殺人事件の犯人を追う警察と、宗教にのめり込んでいく男の2視点からストーリーが展開していくお話。
なかなか双方の話の繋がりを感じられず、時系列が違うんだろうなというのは何となくわかった。
ラストに関しても、驚愕の結末と謳われていたので、根拠もなしに展開を考えてしまい、その想像をあまり超えてこなかった。 どんでん返し系の本とのことで、構えすぎました。
もちろん的外れなことも考えましたけどね、、。
どちらにせよ、ただの思いつきでしかないので、実は2つの事件が絡み合っていたとは思わず、その点は驚いた。
思えば、読んでいて生じた違和感のほとんどが、仮説を裏付けできる根拠だったな。
ラストは慟哭というタイトルの意味を理解して、なんとも言えぬ空虚感だけが残った。
一刻も早く事件が解決することを願います。