【感想・ネタバレ】魚にも自分がわかる ──動物認知研究の最先端のレビュー

あらすじ

「魚が鏡を見て、自分の体についた寄生虫を取り除こうとする」。そんな研究が世界を驚かせた。それまで、鏡に映る像が自分であると理解する能力は、ヒトを含む類人猿、イルカ、ゾウ、カササギでしか確認されていなかった。それが、脊椎動物のなかでもっとも「アホ」だと思われてきた魚類にも可能だというのだ。実は、脳研究の分野でも、魚の脳はヒトの脳と同じ構造をしていることが明らかになってきている。「魚の自己意識」に取り組む世界で唯一の研究室が、動物の賢さをめぐる常識をひっくり返す!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

衝撃的な本である。人類「特有」とされていた脳の構造が実際には一億年前の魚類のもの(=機能)と全く同一である、すなわち脊椎動物全体に共通する資質である、という最新の研究成果が冒頭で明らかにされることが最初の衝撃である。古代の魚類から両生類、陸生類へと進化していく過程で脳の構造も変化し、やがて大脳新皮質が形成されて巨大化することで人類は賢くなり文明が進歩したとする「科学的常識」が根底から崩れる、というのが次なる衝撃である。著者の研究室(院生たちの功績をいちいち記述する誠実さ!)のユニークな実験で証明された魚が「鏡を見て自己を認識」できることが意味するのは、他者(敵味方)を判別できる顔認識の能力でそれまで「見たことがない」自分の外見を認める、イコール自身の存在なるものを意識する(“Eureka“ と叫ぶ瞬間)という第三の衝撃である。「こころ」が魚にあるとするならば…
著者による実験は今後も続くのだが、「賢い」ことが分かってきた頭足類のタコによる新たな研究が始まり、無脊椎動物について「真相」がやがて明らかになるというのが次なる衝撃となるはずである。

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2021年12月31日

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