【感想・ネタバレ】魚にも自分がわかる ──動物認知研究の最先端のレビュー

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Posted by ブクログ

「魚にも自分がわかる」。今まで原始的とされてきた魚類は、他を区別でき、自己認識もあるという驚くべき研究成果を示した一冊。とにかくタイトルに惹かれ読み始めたが、ページを捲る手が止まらない。読み始めた読者は「魚なんて馬鹿だ」という認識から始まるのが大半であろうから。万が一、魚だって…と少し斟酌して読み始めたとしてもそれ以上の、期待以上の結果が待っているのでただただ、素晴らしいとしか言いようがない。
筆者は論じていく際の構成がとてもお上手で、特段笑わせにくる研究者のタイプでもなさそうだがこの論説をずっと読んでいたい、と思った。ギャロップ教授の難癖レベルの大反論を喰らってしまったところは思わず笑ってしまったが。
筆者が基本として教科書は絶対に押さえるが、教科書どおりかどうかより自己の目で見たものを信じろ、としている。皮肉にもギャロップ説が教科書どおりだとしたら、今までの研究者はその域を出なかったことになる。そこを徹底的に持論を遵守し大いなる発見をされたこと、難癖(?)をことごとく論破されたことに対して敬意を表したい。
人間だけが決して優秀な生きものではないこと。
少しでもその「選ばれし高度な生物」という表現に違和感を覚える方に、この本をおすすめしたい。更に研究が進んで、すべての生きものとは人間と対等であることを証明できるように。

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2023年09月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

衝撃的な本である。人類「特有」とされていた脳の構造が実際には一億年前の魚類のもの(=機能)と全く同一である、すなわち脊椎動物全体に共通する資質である、という最新の研究成果が冒頭で明らかにされることが最初の衝撃である。古代の魚類から両生類、陸生類へと進化していく過程で脳の構造も変化し、やがて大脳新皮質が形成されて巨大化することで人類は賢くなり文明が進歩したとする「科学的常識」が根底から崩れる、というのが次なる衝撃である。著者の研究室(院生たちの功績をいちいち記述する誠実さ!)のユニークな実験で証明された魚が「鏡を見て自己を認識」できることが意味するのは、他者(敵味方)を判別できる顔認識の能力でそれまで「見たことがない」自分の外見を認める、イコール自身の存在なるものを意識する(“Eureka“ と叫ぶ瞬間)という第三の衝撃である。「こころ」が魚にあるとするならば…
著者による実験は今後も続くのだが、「賢い」ことが分かってきた頭足類のタコによる新たな研究が始まり、無脊椎動物について「真相」がやがて明らかになるというのが次なる衝撃となるはずである。

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2021年12月31日

Posted by ブクログ

「魚にも自分がわかる」と言うタイトルを見て、東スポの見出しか、エイプリルフールのネタかと思ってしまう。




しかし、研究結果から導き出されたものだった。魚の脳はヒトと同じ構造だったことが明らかになっている。




魚の「自己認識」に取り組む著者の研究は、今までの常識をぶっ壊す。魚がバカなんて人間の思い込みに過ぎなかったのだろうか。






魚からすれば、分かりもしないのに勝手に知能を判断されて迷惑だったのかもしれない。その気持ちは魚に聞いてみないと分からないが。






魚が顔で他の魚を認識するなんて思いもしなかったので、ビックリした。それこそ人間の上から目線の発想だな。穴があったら入りたいなあ。






著者は面白い研究をするための三原則として以下の点を挙げている。



1.自分の専門の教科書はきちんと勉強しておけということである。



2.自分が見たことと教科書の記述が違う場合、もう一度観察や実験をする。



3.自分が不思議だと思うことや気になることは、いつまでも考え続けることだ。




簡単なようで、続けるのは難しいなあ。





研究は時間が経てば、新しいことがいろいろ出てくる。昔、学校で習ったことで満足していると社会から取り残されそうだ。

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2022年03月04日

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