【感想・ネタバレ】中国史とつなげて学ぶ 日本全史のレビュー

あらすじ

気候変動、人口動態、経済ネットワーク……アジア史の視点から俯瞰的に捉えた意欲作
気鋭の東洋史家による、教科書で語られない「真実の日本史」。

日本史の見方が大きく変わる!
漢語資料上の日本/「コピー国家」からの脱却/元寇後も続いた〝政冷経熱?/日本を豊かにした「倭寇的状況」/意図せざる幕府の「鎖国」政策/享保の改革は「中国離れ」/江戸中期に固まった「日本人」の定義/帝国「日本」の誕生/中国の近代をつくった梁啓超の慧眼/「一体化」日本と「多元共存」中国の相剋 etc.

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Posted by ブクログ

ネタバレ

コンパクトにまとめたが故に、見えてきたものが興味深い。日本列島という地理的条件下にある日本人たちの学習の軌跡とも言える。

中国や朝鮮と対比すると明確なのは、支配が隅々まで行き届いたまとまった社会であり続けた。特に戦国時代以降その傾向が強まった。
一方中国は清の時代に下層の人口が膨れ上がった。社会の上層はそれほど増加し無かった。長い目でみると秦の時代に確立した支配論を清の時代まで変えずに来てしまった。だから、支配階層と庶民層の分離が著しい。
勝手な感想だと、宋の時代まで中国は世界の中でも最先端を行っていた。次の元は、世界史上の画期だった。ユーラシア大陸規模の大商業圏の誕生は凄いことだった。
で、明・清と、世界史上のでみると、停滞したのかな?と思える。株式会社という仕組みの発明の差かも知れない。

二つ目は日本人たちは政治において、権威と権力を分けることを好んで来た。
摂関政治。朝廷と幕府。
これは世界史的に珍しい。権力は一元化するのが世界の常識なのに、日本人たちは二元化した方が安定する。
そう思って院政の時期を考えると、日本人たちにとって政治権力の一本化は戦乱を招くというのは言えそう。
権力者の側近の重用となり、公正さを欠くとなる。
その意味では、曖昧さの代償として平和を得たとも言えるかも。

三つ目は舶来上等の精神。唐物(中国由来の品)や近代以降の西洋珍重など、素晴らしいモノ/コトは外からやってくる。

そして、それを自分たち好みにデフォルメする。元の文脈は考えない。2次創作する。

古事記で言うえびす様のような存在を感じて来たのかな?

四つ目は近世の江戸時代に本格化した「職人」って気風。絶えざる工夫を凝らし、究極まで高めようとする。
戦後のアメリカからやってきた標準化の考え方とは真逆。
工夫を常にし続ける。
科学のように原理から乗り越えるのではなく、今ある中での工夫。いわゆる神業って域まで高める。

こうしてみると、日本人たちの社会は、中国や朝鮮とはまるで違う。大陸での政治の難点は、全く違う文化圏を如何にして統合するか?
歴史をみても、日本人たちと大陸とが接触すると、争いになる。
唐・新義vs百済・倭、元寇、豊臣秀吉の朝鮮侵攻、韓国併合。

司馬遼太郎が「鬼胎の時代」と呼んだ昭和の前半。まさに大陸とどう関わっていくか?「帝国日本」の時代だった。結局、多様な文化圏を統べることが出来ず、皇国として同化しようとして失敗した。「帝国」って日本の政治には合わないシステム。

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2022年02月12日

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