あらすじ
それは、仕掛けられた出会いだったのか。
11歳の下野蓮司はある日、病院で目覚めると大人の姿になっていた。
20年の歳月が流れ、そこに恋人と名乗る西園小春が姿を現す。「子ども時代と大人時代の一日が交換されたの 」
一方、31歳の蓮司は11歳の自分の体に送り込まれ、ある目的のために、20年前の世界で小春の家へと急いでいた――。
※この作品は単行本版『ダンデライオン』として配信されていた作品の文庫本版です。
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「ダンデライオン」とは、たんぽぽのことですが、たんぽぽと聞くと黄色い花を想像してしまいます。この本でのダンデライオンは白い綿毛のイメージです。子供の頃、よく息を強く吹きかけて飛ばした綿毛です。風にのればどこまでも飛んでいきそうな感じでしたね。
本のストーリーは、過去に戻って見知らぬ少女を助けるというものですが、構想がしっかりしていて楽しく読めました。
もし、過去に戻れるとしたら人は何をするのでしょうか?不慮の事故や病気で亡くなった大事な人を何とか救いたいと考えるでしょうし、地震や台風とかの自然災害の被害を小さくしようとするかもしれません。そして自分自身の人生をやり直すためにちゃんと勉強するという人も少なくないかもしれませんね。
でも現実は過去には戻れないので、なんとか今を精一杯生きたいと思います。(そんなことはすぐに忘れて時に流されていってしまうのですが...)
人間も綿毛と同じように、その時に吹いた風の強さや方向によって人生が変わってしまうのかもしれません。それでも着地したところに根を張って、もがきながら生きていくしかないですね。
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何だか少し前に読んだ『フーガはユーガ』と重なるところがあるんだけど、本作では11歳/31歳の主人公同士の精神が入れ替わる、一般的に言うところのタイムスリップ(タイムワープ)を扱っている。
個人的にタイムスリップ作品は大好きなのと、中田永一名義なので当然切なさ要素も入ってくるはず、というわけで期待して読み始めた。
本作ではタイムスリップでは必ず発生する諸問題、例えば「過去に戻って歴史を変えたら今の自分はどうなるの?」あたりはあまり深く突っ込まれることはない。そういったSF事象の理屈付けに終始するような展開ではなく、とりあえずタイムスリップすることを前提条件に据えて、謎解きミステリの要素を前面に出し、主人公が関わる事件のプロットを相当細かく作り込んでいる点が面白かった。
20年間のインターバルがあるわけだから、長くしようとすればいくらでも長くできたと思うけど、本筋とは関係ない部分を極力削ぎ落とした構成も好印象。それがかえってライトすぎるとか、深みがないとか見られてしまっている向きもあるみたいだけど、個人的にはこれくらいのシンプルさが好みだ。
そしてタイムスリップ後の、誰も知ることのない「未来」は自分自身で切り開くんだという、ありがちっていえばありがちなメッセージを陳腐にならず読者の前に提示しているあたりも素晴らしい。
著者らしさが溢れる、期待通りいや期待以上の作品で大満足だ。
本屋大賞のトップ10にも入らなかったのが不思議なくらいで、個人的にはこれまで読んだ中田永一名義本の中でも最高作に近いんじゃないかと思う。
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タイムリープもの。ミステリー、恋愛からみ。
中田永一さん最高でした。
著者独特のドキドキ感からちゃんと終わってて安心したし良かった。
解説が大森望さんなのでSFなんでしょう。解説に紹介されている本は読んでみよう。
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11歳の少年が目を覚ますと31歳の大人の自分になっていた。
少年は20年後の未来に戸惑い、恋人と名乗る人物の出現に戸惑い、まるで自分の未来が勝手に決まっているような理不尽さを覚えていた。
一方31歳の自分は少年時代の身体となっていた。そこである目的を達成するために奔走する。
レールが敷かれたような観測されている未来と、それが途切れた先の未知数の未来。素敵なタイムリープの物語だった。
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さすが乙一!!面白かった〜。
伊坂幸太郎みたいな「ありえそうでありえないこと」+乙一の青春と恋愛の切なさがあるSFミステリー。(最後はめちゃくちゃ乙一感のあるバトルだった)
あと読みやすい。するする読める文章を書く人だなと改めて。
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タイムリープとしてはわかりやすく初心者でも読みやすいと思う。ただストーリーの起伏は少なくもっと深い内容があっても良かったなと感じる。
シナリオに沿って物事を進める、このシナリオは誰が考えたのだろう。未来を知っていてもそれが全く変わらず進んでいく。多少の変化があってもおもしろいだろうが、タイムリープの話は難しい。
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さすがは乙一としか言いようのない、面白すぎる展開であっという間に読み切ってしまった。
「観測済み」かどうかが未来を確定させるというのも現実の量子力学チックで、タイムトラベルものの難しい矛盾点をうまく回避してて違和感なく読めた。
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時空を超えてなお すべてが一本の糸でつながれていた。
過去への干渉が何度となく行われていたが それはすべて本人たちの意志で行われ それはあるべき未来にちゃんと繋がっていた。
タイムリープが人生を変えている。しかも本人の手で。
なんとなく感じた。
自分の人生だ。それを変えるのは自分の権利だ。
「運命に負けるな」
この言葉を実践した人たちに初めて会った。
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31歳の主人公が我が身に起きる時間跳躍現象を利用して11歳の自分に入り込み、20年前の世界である目的のために現在の恋人の家へと向かって…というお話。
過去は変わらないという設定のようだか、それでも“観測”通りに事が運ぶのか、何かアクシデントがあって歴史が変わることがないか、ちょっとドキドキ。
この時間跳躍現象の設定、図にした説明があって、ちゃんと辻褄あっているのか、あっていると思うのだけど、何故Dが分かっているのか、ちょっとモヤモヤ。
裏表紙に『ミリ単位でひかれた』とあり、確かにその設計図は精緻で凄いと思うけど、何かその構成がピタリと嵌ることのほうに気が向いちゃって、お話としての情緒的なものへの共感が薄くなったように思えた。
★は3.5くらい。ちょっと甘め。
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乙一名義作品「サマーゴースト」と一緒に購入。
緻密に設計されたSFミステリー。
大人の主人公と子供の主人公、それぞれの「精神」だけ1日入れ替わる現象を利用して殺人犯の正体をつきとめよう、という物語。
「時をかける少女」的な世界観が好きな人にはおすすめできるかも。
時系列を理解するのが少したいへんだけど、それも含めて面白い。
伏線のちりばめかたも上手。
「そこがあの部分につながってくるのか!」という驚きの連発で、あっという間に読むことができた。
ただ、設定はおもしろかったけど登場人物たちにらあまり魅力を感じなかったので☆4つ!笑
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さくさく読めたけど物語の起伏はなく、少ない登場人物でご都合主義の役割を回してる印象。
学生時代から乙一が好きで読み漁ってその度に感動したりドキドキしてたけど今回は全く。
僕が大人になってしまったのかなぁ。
自分の感性の変化に寂しさを感じてしまった。
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11才の野球少年・下野蓮司が頭にボールを受けて目覚めると大人になっており20年後なのだと言う。恋人だと名乗る女性・小春に、11才と31才の蓮司の中身が1日入れ替わっているのだと聞かされる。20年前に戻った大人の蓮司はある目的のために動き始める…。
勢いよく読めてあっという間に読み終わってしまった。中身だけが特定の日にちにタイムスリップするという設定も面白く、犯人は予想外だった。
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割とシンプルでわかりやすい物ですが、少し出来過ぎかなと思ってしまう点がありました。
でも終わり方は意外にもさっぱり綺麗で、そこそこ心地の良い後味でした。
物語の起伏はあまり激しくないかも?
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『危機的な状況で結ばれた男女は長続きしない…』
似たような台詞が某映画のラストであったなぁと唐突に思い出してしまった。
この物語もそんな感じだなぁ…と思ったけど、ラストを見るとそれを乗り越えるんじゃないかと期待させたかな。
タイムリープものではあるが、ごく小さな世界線の中で起きた出来事に焦点を当てたもので、ライト過ぎるかなとも感じたけど、あまりあっちもこっちもにならなかったのが良かった。
登場人物が少ないせいか、犯人になりうる人物がかなり絞られる展開で進むから、ソノヒトが出てきた時に「ん?」となった。
まさか、そんな理由で?…という感じもしたが、主人公の人生(出来事)に大きく関わる事象も起こしていたという意外性、復讐も兼ねた見えない未来の結末…。
ラストの展開としては、もっと粘っても良かったように思うけど、彼女との未来の為の布石って所か。
だから、物足りなさもある…呆気ない…もう少し引っ張っても…。
末巻の解説に映画用の脚本だったと書いてあったが、難しかったのも分かる気がする。
全体的に弱い印象だからじゃない?
本当にあっさりと読みたいなら、オススメします!
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安定の乙一作品
過去の殺人事件に関わる事になるタイムリープもの
11才の野球少年が20年後にタイムリープして未来の自分を知り、そこに至るまでの人生が決まっている虚しさを考えると、安心と恐怖も感じます
タイムリープの謎
犯人の謎
確定事項から外れた事故の謎
ハラハラしながら楽しく読みました
Posted by ブクログ
読みやすいし、結構面白かったが、乙一の作品としては普通だと思ってしまった。
中田永一名義の小説は、さわやか系のストーリーが多いが、やはり乙一には不気味さやねじくれたストーリーを期待してしまう。
最初に映画の脚本として構想した作品だと聞いて、なんか納得してしまった。
Posted by ブクログ
私が作家“乙一”を強く意識したのは、「殺人鬼の放課後」(角川文庫)に収録された「SEVEN ROOMS」という作品だった。
本来、自分はホラー系は苦手で、わざわざ怖い話を読みたがる人間ではない。上記の文庫を買ったのも恩田陸の「水晶の夜、翡翠の朝」が収録されていたからであり、萩尾望都の初期作品を思わせる全寮制学校を舞台にした物語のミステリアスな雰囲気を味わいたかったからにすぎない。
ちょうど、体調を崩してしまい一週間ばかり横になったままの生活を送っていたときに、これを読んでしまったのがいけなかった。
ベッドの上で目的だった恩田陸の短編は心地よく読んだのだが、ついでに読み始めたはずの「SEVEN ROOMS」に圧倒されてしまった。
ただただ恐ろしいスプラッターと言って良いくらいの内容であるにもかかわらず、なおかつこれほどに哀しく愛おしさに満ちた物語が、その短い頁数に収められていることが信じられない思いだった。
自身の体調不良もあいまって、その恐ろしくも美しい物語がぐるぐると頭の中を回り続けて離れない一週間を過ごすこととなってしまい、自分の中で“乙一”は、読み込むべき作家となった。
“中田永一”が“乙一”の別ペンネームであると知ったのは、それからしばらくのちの事だったと思う。
もともと乙一名義でも怖くない系の作品もあったのだが、中田永一名義では恋愛ものを中心にしていたこともあって、こちらのほうが安心して読めるという判断基準が定着してしまった。
前置きが長くなってしまったが、本作は精神的タイムリープをあつかったミステリーだ。
読みながら高畑京一郎氏の「タイム・リープ あしたはきのう」を思い浮かべてしまったが、大森望氏の解説でも中田氏が同書を念頭に置いて本作を執筆したことが紹介されており、やっぱりそうなんだと納得してしまった。
構成の緊密さにおいては「タイム・リープ……」に一歩譲ることになるかもしれないが、どの時点で何を知り何を知らないのか、タイムラインの図解を書かないと混乱しそうになってしまった。
惜しむらくは、ミステリーであるがために少々筋が読めてしまうことだが、これはもうしょうがない。そのうえで充分楽しめる内容だったと思う。
Posted by ブクログ
小学生の蓮司は、野球の練習試合にボールに当たって気絶した。目覚めてみると、そこは20年後の世界だった。戸惑いを隠せなかったが、所持していたICレコーダーから今の状況を説明する謎の男の音声に導かれるまま、突然現れた見知らぬ女性と共に行動する。
一方、小学生の蓮司には、反対に20年後の蓮司の魂が入っていた。しかし、こちらは待ち受けたかのように目的の場所へ行動する。
いったい、何が起きているのか?
後で気付いたのですが、中田永一さんは乙一さんの別名義だったことに驚きでした。
さて、内容ですが、序盤から何やら計画されたのように殴られ、タイムスリップし実行するという流れに、こちら側は訳がわからないまま読み進んでいました。
過去と現在を交互に進行し、徐々に全体がわかっていくのですが、同時にスピード感ある展開なので、スイスイ読めました。彼女のために奔走する31歳の魂が入った11歳の蓮司。
目的のところに行き、その中へ忍び込む描写は、読んでいてハラハラしました。果たして犯人は誰なのか?
犯人だけでなく、20年の間に起きた色んな出来事が後に伏線となって回収していくので、最後はスッキリ感があり楽しめました。
一つ気になったのは、そもそも、何故蓮司は、彼女のために奔走するのか?が気になりました。作品では、11歳と31歳の魂が交換されるということで、その後は永遠にループし続けますが、その最初がどうなったのか。エピソード0的な事が描かれていないのが気になりました。
二度読み必至と紹介されていますが、そんなに必至というわけではありませんが、緻密に計算された構成は、よく練られているなと思いました。