あらすじ
若くして死んだ母そっくりの継母。主人公は継母へのあこがれと生母への思慕から、二人の存在を意識のなかでしだいに混乱させてゆく。谷崎文学における母恋物語の白眉。ほかに晩年のエッセイ四篇を収載。初文庫化。
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Posted by ブクログ
読書会の課題本。前半の実母への恋慕や関わりは、自分の子どもの幼いころを思い出して共感しつつ読んだが、後半の継母との関わり、父子二代に渡っての想いの共有、妻澤子を迎えるくだり、「母に仕えることを唯一の生き甲斐にして、外に何の幸福も要らぬ」「お母さんを仕合わせにするためには、お前が嫁をもらう必要がある」あたりは、やはり前回読んだ谷崎本同様、若干ひいてしまう。
一緒に収録されているエッセイの方が私にはむしろ面白く読めた。元々、エッセイが好きということもあるが、家族への想い、自分への評価などがつづられた「親不孝の思い出」、自身の病状とそれに対する心もちをつづった「高血圧症の思い出」、関わりのあった秋声、鏡花、芥川ら多くの文豪との交わりを書いた「文壇昔ばなし」など、どれも非常に面白かった。